第6回 リピート回数を上げる | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBマーケティング戦略のススメ


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロ ジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/


第6回
リピート回数を上げる


売り上げを伸ばす方法のひとつとして、これまでは購入者をいかに増やすか、また、その購入者たちの単価をいかに上げていくかについて解説してきた。今回は繰り返し買ってもらう方法について解説する。


リピート回数とは?

単価と同じようにひと口に言ってもさまざまな概念がある。単価の解説の際に一回の購入単価を説明してきたので、今回のリピート回数については年間のリピート回数としてみたいと思う。

読者の皆さんがWebに限らずお店で買い物をするとき、1年間に何回も買うお店もあれば、一度きりのお店もあるだろう。お店側からすれば、できれば1年に何回も足を運んでもらい、何度でも購入してもらいたいものである。残念ながら実店舗でそれを完全に把握しようとしても限界がある。しかし、Webの世界ではそれが可能になるのである。

昔、近所の文房具屋で買い物をするとスタンプカードにスタンプをくれたものである。古典的ではあるが、あれも十分に繰り返し買ってもらうための施策であり、実際にスタンプをためるために同じ文房具屋に通う人も出てくるのである。夏休みのラジオ体操でもらうスタンプやシールも同じ理屈かもしれない。

なぜ、繰り返し買いたくなるのか。本質的には商品だと筆者は考える。商品のデザイン、価格、品質、イメージ、新しさなど、商品とひと口に言ってもさまざまな要素がある。しかしながら、商品以外の部分でもリピート回数アップのために貢献できることも多くある。今回はそのあたりを説明していきたいと思う。


リピートしてもらうために

繰り返し購入してもらうためには、顧客の育成プランを描く必要がある。

「初回購入→2回目購入→定期的な来店→自ら進んで購入」といった具合に進めるのが良いだろう。育成プランがあってはじめてリピート顧客は増えていくのである【1】。

顧客育成プラン例
【1】顧客育成プラン例


1.初回購入~2回目購入
これまでも解説してきたように初回購入をしてもらうことがいちばんハードルが高い。初回にどのように購入してもらうかは、過去に解説したので割愛するが、逆に言うと初回購入してくれたお客さまは繰り返し買っていただけるチャンスがある顧客でもあるのである。

また、初回購入はたまたまであっても、2回目購入してくれるとリピーターの色は濃くなる。

2.定期的な来店~自ら進んで購入
定期的にお店に来てくれるようになり、こちらからアプローチをかけなくても購入をしてもらえるようになるとリピート回数はぐっと上がる。こうなるとお店に対するロイヤリティも高まり、自然と単価も高くなることが多いだろう。

あとは、引き続き購入してもらえるような商品やサービスを続けることを心がける必要がある。


リピート回数を上げるための具体施策

リピート回数を上げるためには本質的には商品周りであることはすでに解説した。しかしながら、文房具屋のスタンプカードのように商品以外でもできることはある。Webマーケティングにおけるリピート回数アップ施策としてどのようなものがあるのか解説してみよう。

ロイヤリティプログラム


顧客の購入単価、購入回数によって会員属性を階層化する手法である。「年間5回以上購入の方はプラチナ会員」といった具合である。プラチナ会員にはそれ相応の待遇が用意されており、特別扱いされるのである。

当然、プラチナ会員になった顧客は特別感とランクをもっと上げたい、あるいは落としたくない心境から繰り返しお店に足を運ぶようになり、購入の機会は増えるだろう。

ポイント


単価アップ施策でも有効な手段として紹介した、文房具屋のスタンプカードと同じである。Webを使ったポイント制度は、現代版スタンプカードとでも言っておこうか。

今やポイント社会といわれるほど、世の中にあふれている手法であるが、これだけ浸透するということは、それなりに効果があるのである。

たとえば、年間の購買額が一定以上になると次の年からポイント付与率がアップするようにすると年間の購買単価は比較的上げやすい。

単価の解説のときにも述べたが、ポイント方式を導入する際に気をつけなければならないのは、経費負担である。筆者はポイントは麻薬のようなものだと思っている。効果は表れるが、長い目で見た場合、その負担は絶大なものとなり、利益を圧迫しかねないからである。

ポイント方式を導入する際は、運用ルールをしっかりと決め、経費負担をつねに監視しながら運用していくことが非常に重要である。

キャンペーン


単純に言えば、ホップステップキャンペーンといったように、一定期間に決められた購入回数をクリアすると、ポイントやプレゼントなどインセンティブを付与するというたぐいのものである。これは永続的な効果は薄いが一瞬の効果を得るには有効な場合もある。

しかし、気をつけなくてはならないのは、キャンペーンでインセンティブが欲しいために1回ですむ買い物を複数回に分けて購入する顧客も出てくる。そうなれば、物流費などが余計にかさむために逆に経費増となる。こういった顧客を生まないキャンペーン設計が重要になってくる【2】。

キャンペーンの例
【2】キャンペーンの例


メール


筆者がおススメしたいのは、顧客に対してメールでアプローチすることである。単価アップ施策とリピート回数アップ施策の大きく異なる部分は、すでに買おうとしているお客さまへのアプローチと、まだ買おうとしていないお客さまへのアプローチである。

リピート回数アップ施策は、まだ買おうとしていないお客さまへのアプローチが重要になってくる。そうなるとWebマーケティング唯一の武器であるメールが活躍するのである。しかも、定期的にメールマガジンという形で送るのではなく、“何かしらの理由”を持ってメールを送信するほうがコンバージョン率は高いだろう。

たとえば、同じ一通を送るにしても、『夏のおススメ商品!!』と送るのではなく『お客様のポイント明細』と送るほうが読んでもらえるものである。お店からの押し付けメールでなく、お客さまに必要な情報として送ることが非常に重要である。『ポイント明細のお知らせ』『お買い上げありがとうございました』『商品がもうすぐなくなりそうです』といったイベント的なニュアンスで送る必要があるだろう。


まとめ

これまで解説してきたような、「購入者数×単価×リピート回数=売り上げ」といった図式はモノを販売するにあたって非常に重要な指標となる。

それぞれのための施策を説明してきたが、すべてをやってそれぞれの数字がうまく上がるかというとそんなに甘い世界ではない。単価を上げればリピート回数は減るし、購入者を増やせば単価は下がる。そういったバランスをとり、テストを繰り返しながら、確実に前に進むことができるのが、まさにEコマースにおけるWebマーケティングの世界なのである。


本記事は『Web STRATEGY』2008年9-10 vol.17からの転載です
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