第4回 購入者数を増やす ~既存・休眠購入者編~ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBマーケティング戦略のススメ


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロ ジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/


第4回
購入者数を増やす ~既存・休眠購入者編~


売り上げを伸ばす方法のひとつとして、前回より購入者をいかに増やすかを解説してきた。今回は、すでに購入をしてくれている顧客に対し、いかに繰り返し購入をしてもらうかについて、解説していきたいと思う。


既存・休眠顧客とは?

これまでのおさらいになるが、既存・休眠顧客の定義を解説しておこう。まず、初めて取引を行う「新規顧客」。次に、過去に取引はあるが、1年間まったく購入していない「休眠顧客」。そして、この1年以内に取引があり、今後も取引を行ってくれる確立のもっとも高いであろう「既存顧客」である。

実は、この1年という単位は業種や販売している商品によって異なってくる。たとえば、なくなればまた購入するような化粧品と、一度買うとしばらく買わなくてもよい電化製品では、購買のサイクルが違うことは理解していただけると思う。今回は仮に1年という単位で、この既存・休眠顧客について説明したいと思う。

新規顧客と既存・休眠顧客の違いは何か?
「既存・休眠顧客」の定義は“過去に一度でも購入をしたことのある顧客”である。これに対して「新規顧客」は“まだ一度も取引をしたことがない顧客”である。この差は大きい。「新規顧客」に対しては、まず会社や商品を知ってもらうという行為をしなければならないが、既存・休眠顧客に対しては、その行為を行わなくてもよい。しかも、過去に一度以上の取引経験がある、ということは顧客の情報を持っているため、さまざまな分析材料になり得るのである。

既存顧客と休眠顧客の違いは何か?
それでは、すでに取引のある顧客の中でも、「既存顧客」と「休眠顧客」の違いはどこにあるのだろうか?

単純に説明すると、ここ最近購入している顧客と、昔は購入していたが、ここしばらくは購入していない顧客、ということになる。既存顧客には、取引を継続してもらうという観点でのマーケティングとなる。また、休眠顧客に対しては、“なぜ、買わなくなったのか?”を追求する必要がある。休眠顧客にもう一度購入をしてもらうという行為は、実は、新規顧客を獲得するよりも難しい場合がある。何かしらの嫌な経験をして、購入しなくなった可能性もあるからだ。休眠顧客についてアプローチするにはさらなる分析が必要だ。

分析の手法としては、ユーザーインタビューや顧客からの苦情メールなどを用いるのがよいだろう。実際、嫌な思いをした顧客に対して、もう一度購入してもらうパワーは並大抵ではないだろう。やはり、新しい顧客を呼んでくるほうが労力的には楽かもしれない。しかし、多くの場合は、連絡が来なくなったなどの単純な原因が実情ではないだろうか。

ここで、ひとつ提案したい。割り切って休眠顧客の中の「過去に嫌な思いをした人」に対しては無理に追わない。「会社や商品の案内が来なくなったから買わなくなった人」に対して施策を打つほうがはるかに効率がよいからである。前者のような顧客に対しては、そのようなことにならないような予防策を打つほうが健全であろう。


既存・休眠顧客を増やすための具体施策

ここで少しややこしいのが、休眠顧客を増やすという点だ。これまで説明してきた休眠顧客を増やすということではない。正確には休眠“復活”顧客になる。既存顧客には、いかに取引を継続してもらうか。休眠顧客については、なんとなく購入しなくなった人をいかに知るか、と説明してきた。それぞれにどのような施策を行えばよいのだろうか。実際はやるべきことはあまり変わらないのである。

メールマーケティング
驚かれる方もいるかもしれないが、インターネットマーケティングにおいて、顧客へ直接アプローチできる武器は、実はメールしかないのである。レコメンドエンジン、アフィリエイト広告など、インターネットで有効だといわれるマーケティングツールは、どれも受け身のツールなのである。RSSFeedも一部あるが、まだ実用化までは程遠い。この唯一能動的ツールであるメールは、使い方によっては甚大なパワーを発揮する。また、既存顧客、休眠顧客、共に利用が可能だ。もちろん、使い分けは必要であるが。

では、どのようにメールマーケティングを考えればいいのだろうか? 細かなテクニックは専門書が多数出ているので、そちらを参考にしていただくとして、ここでは考え方を伝えたいと思う。

Eメールというのは、コストがかからない非常に安価なツールであるがゆえに、だれもが簡単に使えるということも知っておかなければならない。そのことが、必要のないメールを増やすのである。それらは、直接ゴミ箱行きのフィルタをかけられるか、下手をすればスパムメール指定を受けてしまうかもしれない。そうなれば元も子もない。たくさんあるメールの中から、いかに情報を見てもらうか、これがメールマーケティングの重要なところである。

また、メールマーケティングは配信数を増やすことで短期的には必ず売り上げを伸ばすことができるツールだ。しかし、中長期的に見た場合、必ずレスポンスは落ち、やがて衰退していく。いかに中長期的にレスポンスを落とさずに運用していけるかが成功のカギとなる。

そのためには何をすればいいのか? 答えは意外と簡単だ。メールを送る相手にとって、有益な情報であり続けることである。お店側の論理で営業メールをバンバン送りつけないことである。

しかし、なかなかこれができない。短期的な成果を追いかけてしまい、中長期的にうまくいかない場合が多いのである。たとえば、メールマガジン。これは週に1回など、定期的にメールを登録者へ配信する方法である。もちろん、情報によっては有効な手段だが、定期であるがゆえに、ネタがなくても送らなくてはならない。そのぶんムダなメールが増える。それならば、商品を購入した2週間後などに「その後、商品はいかがですか? 問題ありませんか?」といった旨のメールを送れば、顧客は気持ちがよいし、お店側にとっても接点を持てることになる。最低でも半年は我慢して、このコンセプトの元にメールを配信してみるとよいだろう【1】。

【1】メールマーケティングコンセプト図






【1】メールマーケティングコンセプト図


チラシ・ハガキ

インターネットのみでお店を運営されている方は、たまには紙のメディアを利用してみるのもよいだろう。メールとは違ったツールを使用することにより、リアルなコミュニケーションが取れるために、レスポンスが上がる場合が多い。ただし、ハガキやチラシには、郵送料が1通当たり数十円かかってしまうために、本当に大切なお客様へのごあいさつといった形でスタートすることを勧めたい。


既存顧客を増やす際の注意点

そういった努力を重ねることによって、既存顧客は増え続け、全体の購入者数も増えるという理想的な流れをつくることが可能となる。しかし、気をつけなければならない注意点も解説しておこう。どれだけ既存顧客が増えたとしても、年間の購入回数と単価が下がってしまっては、全体の売り上げが落ちてしまうことにもなりかねない。どちらも下げずに既存顧客数を上げ続けることが非常に大切だ。そのためには、それぞれの顧客の動向を観察しておく必要がある。ここで簡単で有効な分析方法を紹介しておく。

RFM分析
R(recency:最新購買日)F(frequency:累計購買回数)M(monetary:累計購買金額)をそれぞれ知るものである【2】。

【2】RFM分析説明図






【2】RFM分析説明図


たとえば、横軸に時間軸(月や年)を並べ、縦軸に新規顧客、既存顧客、1年休眠、2年休眠、3年休眠顧客と並べ、それぞれの人数を記載する。さらに、それぞれの顧客層ごとに期間ごとの購入回数、1回当たりの購入単価を入れてやる。そうすることで、購入回数、単価が高い顧客がどの層に多いかが、一目瞭然となり、その後の分析にも役立つのである。このデータをできれば毎週、難しければ毎月更新し、それぞれの人数動向と購入回数、単価を見ることで、そのときの状況を把握し、次の施策に生かすことができる。

このRFM分析については、Webで検索すれば多くの参考資料を見ることができる。顧客動向を把握するためには非常に有効な手段であるので、ぜひ試してほしい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年5-6 vol.15からの転載です

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