第5回 単価を上げる | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBマーケティング戦略のススメ


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロ ジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/


第5回
単価を上げる


売り上げを伸ばす方法のひとつとして、前回までは購入者をいかに増やすかを解説してきた。今回からは、同じ購入者の数でも売り上げを伸ばす方法も解説したいと思う。ご想像のとおり、単価とリピート回数である。


単価とは?

単価とひと口にいってもさまざまな概念がある。1年当たりの顧客単価や、1回当たりの購入単価など。ここでは、のちほどリピート回数に関しても解説をしたいので、1回当たりの購入単価について説明したいと思う。

単価を上げると聞いて皆さんどういったものをイメージするだろうか。筆者は、ハンバーガーチェーン店などで見られる「ご一緒にポテトもいかがでしょうか?」である。これは説明するまでもなく、ハンバーガーと飲み物だけではなく、一緒にポテトを購入してもらうことで1回当たりの購入単価を引き上げようという作戦である。たとえば、ハンバーガーと飲み物で500円、ポテトが150円だとしよう。ポテトを購入してもらうだけで、単価が3割アップするのである。150円と軽視するものではない。これに購入者の半数が反応してくれるだけで莫大な収益となるのである【1】。

【1】購入単価を引き上げる手法の例
【1】購入単価を引き上げる手法の例


前回まで説明してきたように、新しい顧客を取り込むよりも、比較的容易に反応してもらえるのである。もちろん、注意しなければならないことはたくさんあるので、そのあたりを解説したい。


購入単価を決める要素

購入単価を決める要素は大きく分けるとふたつある【2】。

【2】単価の構成要素図
【2】単価の構成要素図


1.商品自体の単価を上げる(アップセル)
価値観の違いはあれど、人よりもいいものを買いたいという心理はだれにでもあるだろう。「どうせ買うのだったら、いいモノを買っておこうか」である。この心をくすぐることでより高い商品を購入してもらう方法であるが、この手法は、あまり購入頻度の高くない高単価商材に向いているだろう。たとえば、家・自動車・電化製品などである。

もちろん、購入頻度の高い低単価商材にも使える方法はある。話が少し飛躍するが、天丼を例に挙げてみよう。500円の並・700円の上がメニューにあった場合、上をより注文してもらうにはどうすればいいか? 900円で特上を設定すればいいのである。日常により近い低単価な商材とした場合は、いちばんいいランクは無理だけど、いちばん低いランクも嫌だ。という心理になるようである【3】。

当然、単価を無暗に上げると購入者を減らすことになるのは言うまでもない。

【3】中間が落ち着く心理をついた手法の例
【3】中間が落ち着く心理をついた手法の例


2.もうひとつ買ってもらう(クロスセル)
冒頭の「ご一緒にポテトもいかがでしょうか?」であるが、要はもうひとつ買ってもらうことで、1回の購入で商品の点数を増やし、単価を上げる方法である。これは、一緒に“何を”すすめるのかがポイントとなる。筆者の経験からいうと、適当にすすめるよりも、何かしらの根拠がないと効果がないだろう。

この商品を買っている人はこの商品も買っています

実際にAという商品と一緒に買われているベスト5ぐらいを抽出し、それをA商品と一緒に見せる方法である。

あなたにはこの商品をおススメします

マイページなどで“その人”向けの商品を表示する方法である。ただ、これはシステム的な対応が必要となり、投資対効果が課題となるだろう。


単価を上げるための具体施策

単価には1年当たりの顧客単価、1回当たりの購入単価など、さまざまな考え方があることや、単価を構成する要素は1、商品自体の単価を上げる(アップセル)2、もうひとつ買ってもらう(クロスセル)があることはすでに解説した。

では、実際にWebで販売する際にどのように活用できるかを解説したいと思う。

この商品を買った人はこの商品も…



amazonなどで見かけるアレである。実際のところ、どれぐらいの効果があるのか? 筆者の経験では、非常に効果が高い。しかも、比較的安価で導入することができる。

まず、全商品のリストを出し、それら商品と併売されているものをそれぞれ上から5つぐらい抽出する(商品の点数にもよるが、これらの作業は手作業でも十分できるだろう)。抽出された商品を各商品詳細ページへ掲載するのである。

ポイント



今やポイント社会といわれるほど、世の中にあふれている手法であるが、これだけ浸透するということは、それなりに効果があるのである。

たとえば、年間の購買額が一定以上になると次の年からポイント付与率がアップするようにすると年間の購買単価は比較的上げやすい。

しかし、ポイント方式を導入する際に気をつけなければならないのは、経費負担である。筆者はポイントは麻薬のようなものだと思っている。効果は表れるが、長い目で見た場合、その負担は絶大なものとなり、利益を圧迫しかねないからである。

ポイント方式を導入する際は、運用ルールをしっかりと決め、経費負担をつねに監視しながら運用していくことが非常に重要である。

送料



インターネットで販売する際に必ずかかるコストとして物流費がある。配送会社に支払う配送料は非常に大きい部分を占める。だいたいのEコマースサイトは顧客に別途請求する形をとり、一定額以上の購入で送料が無料になるという場合が多いだろう。

ここで申し上げておきたいのは、この送料無料になる額が顧客単価に多大な影響を与えるということである。この送料無料バーの設定と、商品の値決めは戦略的に行うべきであろう。


まとめ

本質的には、Webで根本的に単価を上げるのは非常に難しい。結局、顧客はその会社、ブランド、商品に対して信頼をして商品を買うために、小手先の手法では限界がある。やはり、Webであっても優れた商品やサービスを長期間実施し、顧客の信頼を勝ち取っていかなくてはならない。

また、単価ばかりに気をとられると購入者の数を減らすことになりかねないので、単価においては十分にテストを行ったうえで実施することが望ましいだろう。


本記事は『Web STRATEGY』2008年7-8 vol.16からの転載です
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