第7回 PDCAの重要性 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
現場力をアップしよう!
WEBマーケティング戦略のススメ


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロ ジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/


第7回
PDCAの重要性


これまでは、数回にわたって稼働顧客や単価、リピート回数をいかに伸ばしていくかについてスポットを当てて解説してきた。しかし、そういったノウハウもつねにチャレンジできる体制があってこそ、初めて機能するものである。今回は、PDCAの大切さと、それを円滑に進める企業におけるWebの組織がどうあるべきか、といったことを中心に解説したい。


PDCAの重要性

PDCAとは「Plan・Do・Check・Action」の略である。訳すと、「仮説・実行・検証・改善」といったところだろうか【1】。Webマーケティングにおいて、このPDCAを繰り返すことは必須である。

PDCAサイクル
【1】PDCAサイクル


どんなことでも、初めてやることは仮説から始まる。それが失敗するか、成功するかはあまり重要ではない(プロジェクトの規模によるが…)。つねに仮説を持ちながら、検証を重ねて改善しながら、実行していく仕組みづくりが必要である。また、そのチャレンジができるチャネルがWebなのである。それでは、Webマーケティングの中で、どのようにPDCAを繰り返せばいいのか、詳しく解説していこう。


ABテスト

Webマーケティングの中でPDCAを行う際に、絶対にやらなければならないことは、ABテストである。つねに2パターン以上の状況をつくり、ひとつを基準(これをコントロール層という)にもうひとつを仮説のうえに作成する。理想的には、時間軸も合わせたほうがいいだろう。

何を見るのか?
PDCAとひと口に言っても、何を検証するのかをよく考えなければならない。それは3つあると考えられる。

1. 顧客層別
同じ商品やデザインを違う顧客層に見せたときにどのように売り上げに影響するか?

2. 時間別
同じ商品やデザインを同じ顧客層に違うタイミングで見せたときにどのように売り上げに影響するか?

3. 空間別
同じ顧客層に同じタイミングで違う商品やデザインを見せた場合にどのように売り上げに影響するか?

何を検証したいのかを明確にし、顧客層を探りたいのであれば1.を、タイミングを探りたいのであれば2.を、デザインなどの見せるものを探りたいのであれば3.をそれぞれ選べばいいのである。

ここで重要なのは、顧客層とデザイン両方を探るということはできないということだ。仮にデザインの異なるものを違う顧客層に見せた場合、その違いが顧客層によるところなのか、デザインによるところなのかが判断できない。明確な検証にならないのである。必ずひとつずつ検証することが重要である【2】。


Webマーケティングで検証する項目例
【2】Webマーケティングで検証する項目例


繰り返すことの重要性
Webの場合、PDCAの1サイクルを回すのに要する時間はあまり必要ない。サイトの規模にもよるが極端な話、1サイクル回すのに1週間もあれば実現可能である。

重要なのは、つねにABテストを繰り返し、仮説を繰り返し実行し、検証しながら、徐々に良くしていく行為が重要である。


PDCAをスムーズに行うための環境づくり

昨今、Webビジネスの存在が大きくなるにつれて、Web部門が設置されている企業が多い。Web部門がネットビジネスを率先して活用し、特にPDCAをつねに回す環境づくりが重要となってくる。しかし現実は、Web部門のやるべきことが多いためか、企業全体組織の中で苦しい思いをしているWeb担当者は多いのではないだろうか。要因を考えてみると、Webが持つ特有の事情があるように思う。

メディアとしてのWeb
機能的にはWebは告知する機能がある。実質的に告知機能があるかどうかは、議論の余地があるが、Webサイトを立ち上げて公開してしまえば、機能的には全世界へ配信されているのは事実である。ただし、人が来なければ意味がない。そのところがなかなか理解されない。簡単にWebサイトを立ち上げることができるため、立ち上げてしまえば何とかなるという風潮が、未だにあるためだろうか。

しかし、簡単にWebサイトが立ち上げられるというのは、すべての人に言えることである。それだけ参入障壁が低くなり、それなりに敵も増えるということである。膨大な敵の中で勝ち残っていくのは非常に難しく、実質的にWebがメディアとなっている企業は限られたごく一部のサイトだけなのである。

チャネルとしてのWeb
翻って、電話やFAXといったチャネルとしてもWebを見ることができる。

たとえば、保険の申し込みや航空チケットの購入などだ。これらは、保険や航空券をあらかじめ検討したうえで、申し込みツールとしてWebが活用されている場合が多いのではないだろうか。最近はチャネルとしてのWebよりもメディアとしてのWebにスポットが当たっているために影が薄いが、運用という点から見れば、非常に重要な役割を担うことになる。

プロモーションと運用
メディアのチャネルというWebの位置づけは、見方を変えればプロモーションと運用ということもいえる。メディアとしての役割を強くするためにはプロモーションが欠かせないし、チャネルとしての役割を強くするには運用が欠かせない。

また、商品にひも付けることもできれば、プロモーションにひも付けることもできる。同様に、人事部にひも付けることもできれば、営業にひも付けることもできる。非常に多岐にわたって、Webは活用されているのである。

このようにさまざまな場面でWebが活用され、それぞれが重要な役割を担っていることが、Webに対する考えを難しくさせ、企業の中でのWeb部門をどのように組織づければいいのか、各社ともに頭を抱えているところだと考えられる。


Web部門として理想的な姿とは?

Web部門が企業のどこに位置づけられるのか、ということはあまり重要ではないだろう。重要なのは、どれだけ柔軟に多種多様な社内からの依頼に対応できるかということと、PDCAを回す環境を持てるか、といった部分であると考える。

柔軟さ
Web部門の仕事はこれと決めつけず、本質的な目的を定義したほうがよいだろう。物販サイトであれば、Webでモノを売れるようにする、というよりは、物販で売り上げ・利益を最大化する、といったように。

このように目的を定義することで、裁量が広がり、Webでさまざまなチャレンジができる環境ができると思う。

また、企業内においてWebに対する知識というのは思った以上に低いものである。Web担当者が、あれはできない、これはできないとなってしまうと、そこで話が終わってしまい、会社にとって損失が出る場合もある。このあたりは、柔軟に対応できる組織体制が理想的であろう。

環境づくり
PDCAが回せる環境づくりは、どのようにつくればいいのか。

これも、組織自体に柔軟さが求められる。筆者の経験で言うと、引くときもあっさりと引ける決断力のようなものも必要だと思われる。PDCAは多く回して改善のスピードを上げることが重要だ。PDCAの精度ばかりに気を取られ、ひとつの検証に大量の時間を費やすと、それは本末転倒である。

また、簡単な資料でもかまわないので、PDCAそれぞれの工程で行うことは紙にまとめておくべきである。これは、得られたノウハウをできるだけ組織の中で共有するために必要なことであるので、実践していただきたい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年11-12 vol.18からの転載です
twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在