第8回 米国SEM最新事情 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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集客のための検索連動型広告活用術


(株)ルグラン 代表取締役  泉 浩人(株)ルグラン 代表取締役
泉 浩人


2002年オーバーチュアの日本進出に参画、同社の経営全般に携わったのち、2006年4月、検索連動型広告ユーザーへのサポートを目的に(株)ルグラン を設立。結果を出すことにこだわりながら、コンサルテーションを中心に、検索連動型広告に関連するサービスを幅広く提供している
url. www.LeGrand.jp/



第8回
米国SEM最新事情
~SES San Jose 2008視察報告~


本連載では「SEM世界紀行」というコラムの中で、各国のSEM事情についても紹介をしてきた。今回は、その拡大版として、8月に米国で開催されたSEMイベント「SES」に関するの視察報告を行いつつ、米国におけるSEMの最新事情についても触れてみたい。


■Search Engine Strategies(SES)というカンファレンス

SESとは「検索エンジンをマーケティングに活用するための戦略」について、業界関係者が集まって議論をすることを目的とするカンファレンスである。SEMをテーマにしたものとしては、おそらく世界でも最大規模のイベントで、モーターショーのように、世界の主要都市で開催されている。なかでも、シリコンバレーの中心地であるサンノゼで、毎年8月に開催されるSESは、期間も4日間と長く、SESの中でも最大規模のイベントであることから筆者も毎年参加している。

カンファレンスという名のとおり、一部の基調講演を除くすべてのセッションは、一方通行のプレゼンではなく、複数のパネラーによるディスカッションを中心に進められていく。このため、検索エンジンや広告主、広告主をサポートする立場にある代理店やコンサルタント、あるいはツールベンダーなど、SEMの現場で実務に携わり、最新の情報や経験に基づいて話ができる「パネラー」を集められるかどうかが、イベントの成否にも大きく影響する。

各セッションのテーマを設定し、それにふさわしいパネラーの人選を行いながら、SESの全体的な方向性を決めていくという重要な役割を担うのは、カンファレンスの「議長」である。昨年までは、米国の検索業界の開祖ともいわれるダニー・サリバン氏がこの議長を務めてきたが、SES開催10年目にあたる今年からは、ケビン・ライアン氏がその重責を担うこととなった。


■参加費20万円でも人が集まる理由

サンノゼでのSES開催を前に、筆者もライアン氏と意見交換をする機会をもったが、その際、同氏が強調していたのは「SEMに携わる人々の教育や啓蒙に資するカンファレンス」にすることを最大の目的とし、パネラーの人選や、セッションの内容についても徹底的な見直しを行っていく、ということであった。

実際、今回のSESでは、随所に昨年までとの違いを見てとることができた。そのひとつが、昨年まではスポンサー企業の担当者が次々に登壇して、営業目的のプレゼンをして終わるセッションも散見されていたのが、今年は、スポンサー主催のセッションを別途設けることで、通常セッションにおいては、スポンサー色を排除した活発な議論が行われたことだ。

たとえば、GoogleはSESの最高位のスポンサーではあるが、SEOスパムについて議論するセッションでは、Googleに対して批判的な議論もオープンに行われていた。一方、そこに聴衆のひとりとして参加していたGoogleのマット・カッツ氏が、パネラーに対して質問をぶつけるといった場面もあり、そうした議論の応酬の中から、参加者は、Googleが何をスパムと見なそうとしているのか、一方、SEO業者はそれを踏まえて、どうやって掲載順位を上げようとしているのか、といったことをより深く理解することができたはずだ【1】。

【1】3日目のセッション「Black Hat, White Hat: Playing Dirty With SEO」ではGoogleへの批判的な意見に対し、Googleのマット・カッツ氏がパネラーに質問をぶつける場面もあった
【1】3日目のセッション「Black Hat, White Hat: Playing Dirty With SEO」ではGoogleへの批判的な意見に対し、Googleのマット・カッツ氏がパネラーに質問をぶつける場面もあった


ちなみにこのSESに4日間通して参加する場合、日本円で20万円強の費用がかかる。このため、参加者もみな真剣そのもので、各セッションに設けられた質疑応答のコーナーでは、各セッションのテーマについて、深い知識と経験がなければ答えられないような質問が次々に寄せられる。

日本では、昨今「無料セミナー」という名の営業イベントが多いが、無料にもかかわらず集客に苦労しているケースも多いと聞く。実際、こうしたセミナーに行ってみると、大手企業の幹部やマーケティング本部長といった立場の人間が、あらかじめ用意された原稿を読み上げて終わりというケースも多い。これに対し、SESでは「だれが話すか」よりも「何を話せるか」が厳しく問われるので、生半可な知識や経験でパネラーになっても大恥をかくことになりかねない。


■Googleの次にくるもの

今年のSES全体に共通していたテーマを挙げるとすれば「Googleの次にくるものは何か」と「オフラインやディスプレイ広告の再評価」という2点に集約されるだろう。

周知のとおり、アメリカでは検索連動型広告がネット広告費の約41%と最大の割合を占める一方で、全検索の60%以上はGoogleから行われている。さらに、検索数について、約20%のシェアを持つYahoo!までもが、Googleから検索連動型広告の配信を受けると発表したことで、米国においては、ネット広告を出すことは、Googleに広告を出すこととほとんど「同義」になりつつある。このため、多くの広告主は、検索連動型広告の市場がGoogleに独占的に支配され、競争がなくなってしまうことに危うさを感じ始めている。先日、米国広告主協会が、GoogleとYahoo!の広告事業における提携について、異議を唱える文書を司法省に送った背景にも、こうした広告主側の懸念がある。

一方で、このままではビジネスの機会を失いかねない、という危機感を強く抱いているGoogle以外の検索エンジンや、ネット広告の事業者たちも加わって、「Google以外に頼れるもの」をめぐり議論を重ねたというのが、今年のSESにおいて非常に特徴的な点であったといえるだろう。たとえば、2日目に行われた「IT業界の巨人たち」と題された公開討論会では、昨年までSESの議長を務めたダニー・サリバン氏や、Googleのマット・カッツ氏ら、業界の「大物」たちが一堂に会し、今後、Googleに取って代わる企業やサービスは現れるのかというテーマで熱い議論が交わされた【2】。

【2】2日目の公開討論会「IT業界の巨人たち」では、テレビCMを担当するマーケティング部門には押しの強い人が多いので、議論になると、地味キャラのSEM担当者は分が悪い、といったおちゃめな意見も出て、会場の笑いを誘っていた
【2】2日目の公開討論会「IT業界の巨人たち」では、テレビCMを担当するマーケティング部門には押しの強い人が多いので、議論になると、地味キャラのSEM担当者は分が悪い、といったおちゃめな意見も出て、会場の笑いを誘っていた


・莫大な人的・経済的資源をもつマイクロソフトでさえ、いまだにネット広告ビジネスにおいて、Googleを超えることはできていないのだから、ほかの企業に、そのようなことが実現できる可能性は極めて低いだろう。

・そもそも、複数の有力企業による「競争状態」こそが資本主義の正しい姿だと言いながら、どうして検索業界のことになると、「Googleに勝てないなら、存在する価値がない」といった極端な議論になってしまうのか?

・中国や日本ではGoogleが覇権を握っているとはいえないが、その場合、中国最大の検索エンジンである百度(Baidu)は「Googleキラー」ということになるのだろうか?

などなど、議論が百出する中で、1時間の討論はあっという間に時間切れとなってしまった。

だが、裏を返せば、費用対効果やリーチの点で、Googleを超える優れた広告手段として、全員の意見が一致するような技術やサービスは、現時点では見当たらない、ということを端的に示していると解釈することもできるだろう。


■検索はそんなに偉いのか?

これは3日目に行われた公開討論会のテーマである。たとえば、テレビCMを打つと、関連する検索数が増えることからも明らかなとおり、検索がやっていることは、購入プロセスの最終段階で「注文取り」をしているにすぎず、検索連動型広告を広告と呼ぶこと自体がまちがいだ、といった意見まで出された。これは極端な見方としても、確かに、検索連動型広告は、効果の測定ができてしまうがゆえに、検索だけが成果を上げたように見えてしまうことも事実である。一方で、商品やサービスの認知を高めたり、需要を創造したりするのは、テレビなどのマス広告が得意とする分野である。

ところが、景気が減速する中、米国の企業では、株主の視線を意識するあまり、効果が測定できない広告媒体への支出を認めないといった動きが強まっている。こうした中、オフラインやディスプレイ広告に対しても、公正かつ客観的な評価を行うための仕組みを工夫すべき時期にきている、というメッセージが、SESから発信されたというのは、注目に値するだろう。


■ドメインのオークション

今年のSESでは、通常のセッション以外にも、斬新な企画がいくつか用意されていた。そのひとつがドメインオークションである。仕組みとしては、美術品のオークションなどとまったく同じで、「出品」されているさまざまなドメインを、会場の参加者が次々に競り落としていく【3】。

【3】オークションの参加者には、入札する際に使うプラカードと、オークションにかけられるドメインのリストが配られる
【3】オークションの参加者には、入札する際に使うプラカードと、オークションにかけられるドメインのリストが配られる


ちなみに、出品されているドメインには、それぞれオークションの「スタート価格レンジ」が設定されているが、一例を挙げると、「Pay.com」「Rebate.com」などには、100万ドル(約1億円強)と非常に高い価格がつけられていた。そのほか、「Ad.com」「YouSearch.com」といったドメインにも、2,500万~5,000万円相当の高値がついていた。

新たな一歩を踏み出したSESは、今年の10月には、東京でも2年ぶりの開催が予定されていたが、残念ながら主催者側の都合により、来年に延期されることとなった。だが、日本の広告主や業界関係者が、SEMに関する正しい知識や情報を共有することは、SEM業界の健全な発展のためには不可欠であり、こうした内容の濃いイベントが日本においても定期的に開催されることを期待したい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年11-12 vol.18からの転載です


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