第3回 サイトの評価を考える | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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サイトプロデュース


Webプロデューサーはつねに結果を意識しなくてはならない。企業のサイト構築に「つくりっぱなし」はなく、運営・管理・コストを意識した提案こそがユーザーとクライアントを満足させる結果を導く。


文=村田アツシ
文=村田アツシ
(株)セットアップにて、企業サイト構築及び、業務系システム構築においてコンサルティングを手がける
url. www.setitup.jp/




Clip No.3
サイトの評価を考える


自社サイトを評価する

最近、「自社サイトの評価をしたい」企業が増えているようだ。

ログから見る一般的な評価指標
●集客はできているか?
●印象はよいのか?
●使い勝手はよいのか?
●業績に貢献しているか?
●他社と比べてどうか?


企業の欲しがる情報は、顧客が見た企業の「評価」がわかる数値であり、指標でもある。そしてこの「評価」を最近では、業績への貢献度としてとらえている企業も多いようだ。そのため、サイトの担当者は、「顧客」のニーズと「企業」の思惑の間で日々頭を悩ませている。

最近では、ログ解析のソフトも安価となり、企業内の経営企画室やシステム部などが定期的に経営陣に向けたリポートを報告している企業も増えてきている【1】。Webはあっという間にセールスツールとしての地位も確立したようだ。

Google Analytics
【1】無料で簡単に導入できるウェブ解析ツール「Google Analytics」(www.google.com/analytics/ja-JP/

大きなサイトを持つ企業では、定期的にビーコン型のログ解析サービスを持つ調査会社にログリポートを依頼するケースも増えている。

ログ分析のメリットと限界

ある会に出席する機会があった。サイト分析を請け負った大手調査会社と、企業側の担当数名で、2カ月にわたる調査結果を2時間程度かけて報告をする会だった。

企業担当者は、さまざまな数値データの意味や、W3CやJIS規格【1】など、今までほとんど意識したことのない規格や推奨ルール、HTMLやJavaScriptのバージョンについて認識を深めたようだ。サイトを数値で分析されることで、自分たちの認識と顧客のニーズが異なる部分も発見できたようだ。

日本工業標準調査会
【2】日本工業標準調査会のサイト(www.jisc.go.jp/)。「ウェブコンテンツJIS」はX部門にまとめられている

しかし、このような報告会でいつも思うのだが、担当者がある程度のWebに関する知識を持ち合わせていたとしても、ユニークユーザーや、ユニークブラウザ、セッション数、コンバージョンレート、離脱率などの専門用語が随所で使われているために、リポートを聞いている方の頭が整理できない場合がある。

「人気ページを測定するのになぜセッション数を基準にするのか?」「そもそもJIS規格は一般的なのか?」……と言った質問が報告会でも聞かれた。

当然、調査会社はログを「正」として報告するのだが、アクセスに影響する外的要因は無数にあるために、そのまま鵜呑みにすると思わぬ結果が出るケースもある。ログはサイトの正しい評価指標となるが、結果が正しいか否かの状況判断は難しいのだ。

たとえば、下記のようなケースはどうだろう。


CASE1
滞在時間、アクセス数、リピート率ともに高い数値。商品への問い合わせ件数は増えていないが、その後一定期間サイト全体のアクセス数を底上げしているコンテンツ。

▼調査会社の評価
滞在時間とリピート数から、コンテンツのつくりが良い。

▼背景
実は、集客に使われたバナーに、有名キャラクターが掲載されており、集客効果はそのキャラクター目当ての顧客。アクセス数はかせげても、購買層とずれる客層なので、ビジネスに結びつく商品問い合わせなどの効果はない。

▼企業の評価
集客キャンペーンが数値に結びつかないうえに問合せだけ多くて工数がかかる。



CASE2
サイトに対する顧客の平均閲覧ページ数が6ページにも満たない。

▼調査会社の評価
情報量が不足しているので、顧客は問題解決できないまま離脱している。

▼背景
もともと3クリックで見られるように設計しており、情報が足りない部分は問い合わせに誘導する設計方針。

▼企業の評価
平均閲覧ページ数は妥当。


ログでは判断できない外的要因や不可抗力は意外と多くあるものだ。「数値から分析できるメリットと限界」は必ずあることを理解する必要がある。


ログデータをサイト改善に結びつけるには?

唐突だが、「ログ」は、あくまでも過去の事実だ。しかし、上手に活用することで、ある程度の予測に使える数値となる。

私はよく、「ログ分析」を流通業で利用している「POS」システムのようなものにたとえて伝えている。POSシステムとは、「どんな商品が」「いつ」「どこの売り場で」「どんな取引で」「どのように処理」されたか……というデータを活用することで、売れ筋商品の情報、販売、商品管理情報を読み取り、お店の効率化と戦略に役立てるものだ。

「どのページが」「いつ」「どこのディレクトリが」「どのような経路で」「どのようにアクセスされたか」と置き換えると、わかりやすいかもしれない。

ログデータは、サイト内のどのコンテンツが人気があり、どのページが不人気か? 目的のページに行かせる導線のどこが悪いのか? などが検証できるので、顧客のニーズに合わせたリニューアルにたいへん参考になる。

しかし、冒頭でも述べたように、あくまでも「過去」の事実を現す「数値」なので、将来のニーズを導く手段を考えなければ、単なる過去のデータである。そのためには、インターネットだけの要因ではなく、さまざまな外敵要因を収集し、複合的に検討する必要がある。

通常、お店では規模の大小はあるにしろ、POSデータをもとに集客方法を検討する。チラシ配布のエリアや見せ方、目玉商品。昨年のPOSの売上実績を参考にした商品構成や、ディスプレイ方法、棚割り、導線の改善等々、業績を上げるためにPOSデータと向き合い試行錯誤している。

つまり、「仮定と検証」を繰り返す日々なのだ。売り上げが上がらなければ、お客に支持されていないので、原因を調べ改善しなければならない。

サイト運営も、ログデータのみにフォーカスするのではなく、アクセスしてくれた顧客の意見をアンケートなどで聞くことで「仮定と検証」のループをつくることが重要だ。

デザインやイメージが悪いという個人の感性で異なる評価は、ログからではつかめないうえに、数値で評価・検証するのは難しい。

「仮定と検証」で日々改善

戦略的なサイトづくりを実現するには、ログデータを有効活用する必要がある。そのためには、できるだけ短期間の周期でログを分析し、仮説を立て、実験、検証する流れをつくらなければいけない。そして、さらにログでは見えない「顧客の生の声」を収集することが必要だ。

サイト全体のことでも、各コンテンツごとでもよいので、定期的にリクエストや意見をアンケートで収集し、それをログデータとぶつけてみる。

また、キャンペーンやイベントがある場合は、バナーの出稿先やアフェリエート先、出稿メディアなどの情報が集まるような情報のルートを確保することも重要だ。

リアルな顧客のニーズ + アクセスログデータ

このふたつの要素を必ずワンセットとして考えることが重要。業績に貢献するサイトづくりには、ログや顧客ニーズを収集できる手段を利用して得た情報を、サイトに小まめに反映させ、「仮説と検証」を繰り返すことなのだ。

次回は、「サイトの評価指標をつくる」というテーマでお送りする。


本記事は2006年 5-6月号 vol.3からの転載です
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