ケッカ!を出す
サイトプロデュース
Webプロデューサーはつねに結果を意識しなくてはならない。企業のサイト構築に「つくりっぱなし」はなく、運営・管理・コストを意識した提案こそがユーザーとクライアントを満足させる結果を導く。

文=村田アツシ
(株)セットアップにて、企業サイト構築及び、業務系システム構築においてコンサルティングを手がける
url. www.setitup.jp/
Clip No.7
Webサイトでショップに集客できるか?
■ショップから見たWebの役割
ショップにとってのWebの位置づけ
「売れないものはネットで売れ!」とはよく言ったもので、そうすれば売り上げも上がるし在庫も減る、「よしっ!これからはネットだ」と考えているショップ経営者は意外と多いのではないだろうか? アフィリエイトやドロップシッピングなど、eコマースの追い風ネタはよく耳にする。しかし、そんなに簡単にいかないのが現実だ。特に、在庫は在庫であって売れ筋商品ではないので、売るための工夫や演出がたいへんである。
そもそも、「お店」にとってクリックの世界である「Web」は、どのような位置づけなのだろうか?
消費者からすれば、日本中のお店はすべてeコマース対応で、買ったら明日には届いているというのが理想だろう。しかも、送料無料でポイントがっぽり!というのが、より理想的だ。しかし、こんなリクエストにこたえていたらショップ経営者は減るだろう。
リアルなショップをもつオーナーから仕事を依頼されるとき、最初に聞かれるのが「“楽天”に出せば儲かるんでしょ?」とか「インターネットショップは簡単に売れるんでしょ?」というリクエストだ。そんなときは、「だったら僕がやってますよー(笑)」と言って、お断りをさせていただくケースが多い。
経営者からすれば、「Webを利用することで、どのような営業メリットを出せるのか?」ということがポイントとなる。いくら在庫を処分できたとしても、人件費比率のアップや運用負荷など、今までトライしたことのないバーチャルな世界にいくら投資すればよいのかという心配ごとは絶えない。
そこで今回は、「既存のお店を中心にWebで集客ができるのか?」ということを現実的に考えていく。
■集客はチラシかWebか?
集客はチラシかWebか?
本来、チラシとWebを同レベルで比べること自体に無理があり、その手の専門家にはそっぽを向かれるだろうが、ショップ経営において集客は大きなポイントとなる。広告代理店やマーケティング会社を使えるほど予算のある企業は別として、中小や個人経営のショップはそのような余裕がないのが現実であろう。オーナーや店長が自らの経験や知識を生かして、「身体で覚えた店づくり」と「消費者動向に対する勘」プラス「POSデータの独自分析」で試行錯誤している。売れ筋商品の確保や、競合店分析、店内のプロモーションなど複合的な要素を研究し、店舗運営を行っている目的は「集客」による販売が目的なのだ。
チラシは「麻薬」?
チラシは定着した麻薬のようなメディアで、「打たなければ集客できない」が、結果は必ずしも伴わないことが知られている。筆者が関係している地方のインテリアショップも、オープンに伴いチラシを配布した。オープン時はチラシにもそれなりの効果があり、集客もできたが、その2カ月後に出したチラシは給料日を狙って打ったにもかかわらず、ほとんど効果が見られなかった。「本当にチラシを打ったの?」という疑問を抱くほど売り上げは横ばいで、B4サイズの両面カラー約8万部、90万円程度が販促費として水の泡と消えた。
チラシの価格はエリアによりだいぶ異なるが、この地域でさえ毎月打てば年間1,080万円。果たしてこれで元が取れるのだろうか? もちろん、紙面サイズ、配布日やエリアの選定、媒体選定、商品の選択、見せ方、デザインなど、消費者に見てもらうための編集や商品政策、イベントなどは重要であるが、集客できるセオリーなど存在しないのがチラシである。せっかく消費者の目にとまっても、雨や大雪で外に出られないとか、ほかにもっと安いネットショップがあったり、そもそも立地が悪くて行きたくないなど、購買意欲をそぎ落とす要因は多く存在するのである。
Webは「忍耐」?
Webの世界では、バイラルマーケティングやホリスティックコミュニケーション、フォルクソノミーなど、Web2.0現象で「クチコミ」を中心とした宣伝や集客効果を解いているが、ショップ経営における宣伝と集客の方法は、極端にいうとふたつのタイプが挙げられる。ゆっくりと時間をかけて知名度を上げながら規模を拡大していくタイプと、人通りの多い繁華街で一気に店舗展開をするタイプだ。
前者は、地道に努力して評価を得るもので、このタイプが「クチコミ」で集客できるようになると、ブランドに実績という信頼がつくので、あえて広告などを打たなくてもよくなるし、わざわざお店に通うことを苦としないファンをつくり出せる。ネットでたとえるとGoogleやAmazonなどがこれにあたる。また、郊外型店舗や、かつてはホームセンターなどもこのたぐいであった。
後者は、人通りの多い環境を利用し、消費者のニーズをうまくとらえるスタイルなので、短期間に多くの人に認知される。地代などの固定費や人件費といった経費は比較的高いが、売り上げを上げるのに向いたケースである。ドラッグストアやコンビニ、ネットであれば楽天に出店しているショップなどが例として挙げられるだろう。 これらは、Webを集客ツールと位置づけた場合、BlogやSNSなどのコミュニケーションツールを使って地道にファン形成をするのか、あるいは多額の広告費をかけるのか、といった違いに似ている。確かに、Blogなどを活用すれば、コスト的な負担は軽減できるかもしれないが、「クチコミ」で得られる顧客を形成するには継続性が必要であり、運営にかなりのセンスと知識、労力が必要となる。
チラシかWebか?
宣伝広告費を年間予算で全体の何%確保できるかは大きなポイントとなるが、小売りの場合は年商の1?5%程度だろう。年商1億円とすると、100万?500万円。大量にチラシやスポットCMを打つのは難しい。しかし、1,000億円規模であれば10億?50億円となり、そこそこ大仕掛けな販促や広告が打てる。この売り上げ規模の差にWebだけで勝つことができるだろうか。
アドワーズやオーバーチュアを使い、アクセス数を稼いだとしても、結果的に集客に貢献できたかを判断するのは難しいのが現実だ。検索連動型広告はキーワードメンテナンスなどのテクニックが必要となる。コンサルティング会社に任せられるほど予算がない限りは、3カ月から半年はアクセスの増加に労力を使い、集客とのギャップに悩むことだろう。
そもそも、ネット上に無数にあるショップの中から自分のショップにアクセスしてもらうことは、そう容易ではない。環境を維持するコストだけにフォーカスすればWebという告知メディアはチラシに比べれば安価だが、専門性や更新などに関連するスタッフ人件費や経費を考えると、一概にコストの比較はできない。
プロデューサーの視点
先述したように、ショップの集客に貢献できるサイトをつくるのは非常にハードルが高い。
eコマースサイトのテコ入れのほうが比較的改善結果がわかりやすいが、集客のためにWebサイトをどのように構築するかは、ショップ自体の魅力や全体のプロモーションプランとの連携が大きなポイントとなる。当然、予算という枠もあるので個別対応となるが、ある程度、名前が知られるまでは「楽天」のようなECポータルサイトのシステムを利用しながら、売り上げと知名度を上げるプロモーションを行うのもひとつの方法だろう。しかし実際は、楽天の中でも熾烈な競争があるので勝ち組になるのはひと握りだ。また、店長がひたすらショップサイトでBlogを更新し、トラックバックでアクセスを集めながらショップの布教活動を行うのも今のWeb2.0的だが、先が見えない部分も多くある。
プロデュースサイドとしては、ショップの実力をWebが補強できるプランをつくることが重要となり、そのためには、ショップの販売戦略との連動や顧客を巻き込んだコミュニティなどの仕掛けを含めたプランニングをするべきだろう。それ以外にできることは、告知媒体のアンケートなどによる「媒体評価」であったり、「企業サイト」としての役割だ。単にWebプロデュースだけではできない点が多く、この分野専門のプロデューサーが少ないことを考えるとビジネスチャンスがあるのではないだろうか。
本記事は『Web STRATEGY』2007年 1-2月号 vol.7からの転載です



