第5回 サイトの評価指標をつくる その2 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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サイトプロデュース


Webプロデューサーはつねに結果を意識しなくてはならない。企業のサイト構築に「つくりっぱなし」はなく、運営・管理・コストを意識した提案こそがユーザーとクライアントを満足させる結果を導く。


文=村田アツシ
文=村田アツシ
(株)セットアップにて、企業サイト構築及び、業務系システム構築においてコンサルティングを手がける
url. www.setitup.jp/




Clip No.5
サイトの評価指標をつくる その2


コンテンツの貢献度を「見える化」する

アマゾンがロングテールという現象を発見し、一般的な小売りとネットのECでは販売方法が異なることに気づくのに、どの程度の時間を費やしたのであろう。すばらしく驚異的なレコメンドエンジンを持つ彼らも、当初は、この「ロングテール」という現象が想定外ではなかったのか。

顧客やユーザーの動向は、意外であり、予測できないもの。気の向くままに行動している方が多く、企業側の「予測」や「誘導」には素直に従ってくれない。

サイトの評価を考える場合も、まったく同じことが言える。誘導できた要因が、広告や口コミなど、何らかの条件であったにしても、サイト内でどのように態度変容をさせられたのか、がサイトを構成する要因の評価となる。

つまり、サイトを構成している多くのコンテンツや機能の中で、おもに結果に貢献しているのものは何かを「見える化」する指標づくりのアプローチである。

コンテンツパワーを重みづけすることで、顧客ニーズにあったサイトづくりと、根拠のないサイト構成を見直すことができる。

顧客の態度変容に起因したコンテンツはどれ?

サイトは、トップからコーナー別に整理されたディレクトリが存在し、評価目的となる到達ポイントでユーザーにアクションを起こさせなくては、評価結果が導けない。

お店にたとえると、入口からレジ通過までの間にどのような要因が顧客の態度変容を誘因し、商品を購入させたのかということになる。

つまり、商品陳列や、店内の導線、棚の構成や商品のPOPなどの多くの要因のうち、顧客を刺激したタッチポイントはおもにどれであったのかということだ。

インターネットが優れている点は、たとえば実際の店舗で顧客が商品を一度取り上げたにもかかわらず、何らかの原因でその商品を再び棚に戻したことすらも、ログとして取得可能なことだ。

サイトでは入店からレジ通過までを「コンバージョンレート」と称し、「率」を成果指標とする場合が多い。

どこのコーナーから、目的である「販売」「リクエスト」「予約」などの事業成果に結びつけられたのかは、お店でいう「強化商品」「プロモーション商品」を顧客に購入させる要因をどのような手段で訴求・伝達し、

「知らなかった」(認知)→「試してみたい」(興味・比較)→「購入しよう」(決定)
という態度変容を起こさせたかということだ。

サイトの場合には、それらのコンテンツがどれくらい貢献しているのか、必要なのか不要なのか、という検証にも役立つ。

注意して欲しいのだが、評価指標はアクセス人気ページランキングではなく、「ニュース」、「動画」、「検索機能」、「商品訴求」……というレベルで、コンテンツが必要な結果に対してどの程度の態度変容を起こせることができるのかを数値化するアプローチだ。

多くのサイトはアクセス数を稼ぐために、むやみにコンテンツを増殖させるケースが多いが、果たしてそこで使われている費用と効果は正しいのかをチェックできる。

デザインの良しあしやコンテンツの文章などの良しあしは、当然クオリティが高ければ良いが、その「良い」というものを、評価できる数値化にしない限り感覚的なものとなり、感情的な論議で終わってしまい、効果を評価できるモノが残らない。

評価指標をつくるフローの例

●前提
以前にも触れたが、前提として、どのような要因でサイトに集客できたかは、今回の効果測定には含まれない。

あくまでも、サイト内からコンタクトポイントであるアクションまでのコンバージョンレートを対象とする。

また、可能な限り、キャンペーンや懸賞の行われているタイミングとは別に行う必要がある。「定常調査」として、現在のコンテンツ貢献度を調べる必要があり、プレゼントや懸賞目当ての場合は、顧客ニーズがどこにあるのかをつかみきれない。

また、コンテンツの評価を調査するには、事前にサイトのログデータや、アンケート実施による顧客のプロセス調査なども行えると、より精度の高いものとなる。

●サイトの評価目的を決める
サイトの目的としている到達点を、販売、予約、会員化など、どこに置くかを設定する。

●評価指標用シートを作成
調査の表の縦軸と横軸は、基本的に縦軸は「コンテンツのメニュー」、横軸は「態度変容の項目」が一般的だろう。

●プロセスを設定する
態度変容の考え方は、基本的には「認知→興味→決定」という顧客の購買プロセスとする(事前調査などで、より細かいプロセスになる場合や、過程が異なるケースもある)。

●行動プロセスに対してコンテンツをマッピング
顧客ニーズに対して、コンテンツ構成を分解。ユーザーのプロセスを想定し、そのステイタスに対応するコンテンツをマッピングしてゆく。

つまり、「興味」というプロセスに対してはどのコンテンツが含まれるのかをマッピングするのだ。すべてのプロセスに対応できるコンテンツが多い場合は、サイトとして想定ユーザーが絞り切れていないことも考えられる。

●仕掛けと機能
サイト内にユニークユーザーのサイト内遷移のログがとれるような仕掛けを導入・設定する必要があり、アクセスしてきたユーザーのプロセスが「認知」「興味」「決定」のどこかを調べることが大切だ。

通常のアンケートフォーム以外でも、最近ではAjaxなどの技術でユーザー(特定のマシン)を特定できる。既存の会員システムなどとの連携も想定されるので、各社で得意な技術で構築すればよい。Web2.0でいう「タグ付け」という考え方である。

ここのところ、日米のサイトで見かけるフィードバックエンジンのようなものとの併用も効果的である【2】。

なフィードバックシステム
【2】このようなフィードバックシステムは、国内サイトでも見かけられるようになった
▼画像 kekka_5_2.gif


まとめ

このようにして、導き出された結果から、コンテンツの貢献ポイントを数値化し、プロセス毎に態度変容を行っているであろうコンテンツや機能、演出を探してゆけば、より効果の高いサイト構築のアプローチが可能となる【3】。

評価指標をつくるフローと評価指標を導く要因の例
【3】評価指標をつくるフローと評価指標を導く要因の例



コラム
2:8の論理とロングテール

商人の常識として、一般的なのが「2:8(にはち)」の論理。「売り上げは、2割の売れる商品が基盤をつくり8割は在庫となる」という概要だ。

ロングテールはこれとは逆に、売り上げの2割を8割の売れないであろう在庫がつくり出すという論理。実際の店舗では、限られた面積の中で商いを行うために、極力売れない在庫は負債を意味するので抱えたくないし、置けるスペースがない。一方、サイバーの世界では、在庫にスペース自体は問われない。しかし、しっかりした流通経路をもたない限り、リアルもネットも成功はできない。



本記事は2006年 9-10月号 vol.5からの転載です



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