第10回 事業計画書とWeb構築 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
ケッカ!を出す
サイトプロデュース


Webプロデューサーはつねに結果を意識しなくてはならない。企業のサイト構築に「つくりっぱなし」はなく、運営・管理・コストを意識した提案こそがユーザーとクライアントを満足させる結果を導く。


文=村田アツシ
文=村田アツシ
(株)セットアップにて、企業サイト構築及び、業務系システム構築においてコンサルティングを手がける
url. www.setitup.jp/




Clip No.10
事業計画書とWeb構築


Webプロデュース=ビジネスプロデュース

事業計画書はビジネスの源泉

Webプロデューサーであれば、新規ビジネスの立ち上げや、ビジネスの改善時に事業計画書と向き合うこともあるだろう。

事業計画書は、その名のとおりビジネスのプランニングを「方向・定義」づけしたドキュメントであり、その企業の骨格となるポリシーを明示したものである。金融機関、コンサルティング会社、ベンチャーキャピタル、もしくは発起人や投資家などから声がかかり、事業計画の段階から立ち会えることはプロデューサーの特権でもある。

さて、そんな千載一遇の場において、Webをべースにいかにビジネスを構築するかを考えることはとても楽しい時間である。

受注とするか、投資とするか?

すでに予算計画まで落とされている事業計画書でも、新たな切り口でWebビジネスを盛り込むことが可能だ。「新規ビジネスを行うにあたり、一緒に参加してほしい」という現場に呼ばれること自体が重要なプロデューサーの価値であり、起業チームの一員という理解もできる。

起業家や投資家、オーナーは、事業を成功させるために時間・労力・資金をつぎ込む。事業の内容を単なるWeb制作の受注案件にするか、ビジネスパートナーとなって一緒にリスクを負うかの判断は非常に難しい。特に後者の場合、リスクを負った分のリターンをもらうためにも事業計画書の内容をよく見抜く必要がある。

全体的な予算や事業展開については、ある程度専門的なスタッフでプランニングされている場合が多いが、システムやWebに関して深く掘り下げられた計画書は、IT系サービス業以外ではあまり見受けられない。多くは資本金額を元に売り上げや費用の予測数字を当てはめるので、すべてに潤沢な予算が配分されることは期待できず、IT系サービス業以外でシステムに投じられる予算は全体の数パーセント程度だろう。Webはそんなシステムの予算から捻出されるため、さらに配分が少なくなるのが通常だ。設立当初1,000万円の資本金の会社で、会社紹介のWebに100万円もかける余裕はそれほどないのだ。

しかし、どのような事業でもWebベースのシステムで効率を上げることはできる。Webそのものだけに限るのではなく、ビジネスをプロデュースするという観点で、立ち上げ当初の事業を支えることができれば、単なる受注案件を天井知らずの投資案件にすることが可能だ。

共に成功するシナリオ

いまや、「Webプロデュース=ビジネスプロデュース」ともいえる時代になってきているのではないだろうか?

事業計画書を読んだうえで、事業の将来性やマーケット規模の拡大など、成功のにおいを感じたのであれば、その企業とともにビジネスを構築できるスケルトンを考えるべきだ。資本をより有効に活用し、ビジネスの成功をサポートするためにWebやシステムでできることを提案するのだ。

昨今、パソコンが安価になったとはいえ、システムはハードやソフトなどの設備投資がいまだに高い費用負担となる。そのうえ、別途開発費やメンテナンス費などが発生するので、投資家やオーナーにとってはやっかいな分野という認識が強い。企業にとって「ネットワーク環境などの設備、Webベースの業務サポートシステムは、重要なビジネスの支援ツールであるが、できれば経費をかけたくない」というのが本音である。

しかし、そうであればこそWebプロデューサーとしてはビジネスを構築しやすいのである。たとえば、システムとWebサービスの開発に2,000万円かかる場合、ソフトやハードをリースするケースが一般的(起業して間もない会社ではリースが組めないケースもある)。5年償却とする場合は、月額33.3万円。しかし、リースには毎月のメンテナンスなどは含まれていない。立ち上げ当初のサービスはシステムやサービスの内容変更も多く、その都度改変をするために金食い虫となる。

そこで、このWebを含むシステムや環境の部分を、できる範囲でサービス構築し、起業する会社に利用してもらうとどうだろうか。月々のリース代も初期投資も0円。営業トークにすると「Webとシステムは弊社がすべてご用意いたします」ということである。起業する側の経費削減の提案と、自社の新規ビジネスのふたつが実現できる。

回収プランとしては、データ処理や利用時間をカウントする企業向けVANサービスのようなもスタイルと、売り上げに対するパーセンテージや出来高で同意できれば、安定的な収益源になる。あとはプロデューサーとして、いかに「握れる」関係を構築できるかだ。当然、サービス提供する側のリスクも大きい。しかし、将来性のある事業をサポートすることで、数年後に「大きな夢」が訪れるケースもある。


事業計画書を読み解き、先見性を見つけ出す

事業計画書の読み解き方


このサンプル【1】は事業計画書としてはまだ未完成のものであるが、この内容だけでもさまざまなことが読み取れるので注意したいポイントを示しておこう。

【1】事業計画書のサンプル
【1】事業計画書のサンプル

事業概要で説明されている内容と、売り上げや売り上げ計画の数字を対比させることで、事業の内容に踏み込むことができる。

Check1 ネットの卸販売が3年後には同じようになっている
→本来の業態はBtoBかBtoCか?
Check2 広告宣伝費は適切か
→ネットをメインとするのであれば一瞬の料金では?
Check3 人件費が年間1,300万円→人員構成のイメージはあるのか?
Check4 Web制作費は適切か→システムや環境のコストはどうするのか?
Check5 3期連続で仕入れと売り上げが上がっている
→売り上げを優先するのか、 粗利を優先するのか?


上記のサンプルは、ネットを利用した卸の会社を起業するために書かれた事業計画書の3カ年の売り上げプランである。事業計画書は、事業概要やサービス概要などを含めた、ある程度の量で構成されたレポートなので、しっかり読み込むには労力が必要だ。また、企業に優位な表現や演出がされているケースが多いので、その点を考慮することも必要だ。

筆者の場合、事業ドメインが理解できれば、あとはページをすっ飛ばして収支計画を見ながらプランの精度と事業の将来性をうかがうことにしている。「数字」はうそをつかないからである。

あいまいなところをうかがいながら、その先見性を見つけ出せれば、ビジネスをともに展開できる。実際、コンピュータの得意とする販売システム、倉庫管理、売り上げ業務など、つくって提供できるサービスはここだけでも山ほどある。事業規模、将来性、経費、運用オペレーションなど、さまざまな観点と、社会的な背景を照らし合わせることで、ビジネスが見えてくるのだ。


おわりに

本連載をお読みいただきありがとうございました。Webプロデューサーは今やビジネスプロデュースの領域まで拡大されています。システムやネットワーク、Web制作の垣根もあいまいとなり、ユーザーは、デバイスも場所も時間も隔たりのない社会へとなりました。プロデューサーとして今後の社会に向けて何を創造できるのか? それが私たちに課せられた使命だと思います。


本記事は『Web STRATEGY』2007年7-8 vol.10からの転載です
twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在