iPadでもiPad Proでも使えるApple Pencil互換ペン「Crayon」は本家と何が違う?~ロジクール「Crayon」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
2019年春の新モデルの登場によって、ラインナップの全モデルがApple Pencilに対応したiPad。購入時点でペン入力にそれほど興味がなくても、あとから追加で投資しさえすれば、本体を買い替えることなくペン入力が利用できるのは、ユーザーからすると嬉しいところです。
ところで、Apple Pencilには、iPad Pro向けに新登場した第2世代モデルと、従来型の第1世代のモデルがありますが、その互換モデルにあたるのが、今回紹介するロジクールの「Crayon」です。
この製品、当初は第6世代iPad専用のペンとして販売されていましたが、新たにiPad Air(第3世代)やiPad mini(第5世代)にも対応したほか、さらにiPad Proへの追加対応も果たすなど、汎用性の高さがひとつの売りとなっています。またApple Pencilよりもリーズナブルな価格で入手できるのも魅力です。
もっとも存在自体はかなりマイナーで、使っている人をあまり見かけないこの製品、本家にあたるApple Pencilとはどこが違うのでしょうか。実際に購入して使い比べてみました。
ロジクール「Crayon」。オレンジ色のペン先およびキャップが特徴です
当初は第6世代iPad専用でしたが、現在は2018年以降の全iPadに対応します
本体の後部には、オレンジ色のシリコン製のカバーがかぶせられています。ここにはLightningポートが内蔵されており、Lightningケーブルを挿して充電を行います。第1世代のApple Pencilとは、いわばLightningのオスメスが逆ということになります。断面が平たく、Lightningポートを搭載できるだけの幅の余裕がある本製品ならではのギミックです。
幅広のボディが特徴。割り箸くらいの幅、といえばわかりやすいでしょうか
いっぽうで厚みはあまりなく、Apple Pencilとそれほどの差はありません
キャップを外すとLightningポートが露出します。Apple Pencilとはオスメスが逆です
Lightningケーブルを直接つないで充電できます。アダプタも必要ありません
ペアリングの方法としてはかなり珍しく、この種のデバイスの設定に慣れている人ほど逆に戸惑う可能性はありますが(ちなみに本製品はiPadのBluetoothデバイスの一覧にも表示されません)、慣れてくればこちらのほうが分かりやすいと感じる人も多いはずです。
操作性については、Apple Pencilよりも短いため手に収まりやすく、さらにボディが平たいことから持ちやすく感じられます。人によって好みが分かれるところでしょうが、手軽にラフを書くような場合は、本製品のほうが向いているように感じます。
ちなみにペン先はApple Pencilと同じものが使われており、交換してもそのまま使えます。そのため、画面に触れている際の感触は、Apple Pencilと大差ありません。オレンジ色のキャップが取り外しにくいことが、唯一のネックといったところでしょうか。
オレンジのキャップを外すとペン先が露出します。外しにくいので注意が必要です
第1世代(上)と第2世代(中)のApple Pencilとの比較。ペン先は同一のようです
一方、ラフなスケッチを行う用途だったり、あるいはビジネスユースでメモを取る用途が中心であれば、その持ちやすさも含めて、本製品のほうが手軽に使える印象です。ボディが短いことから胸ポケットへの収まりがよいのも、ビジネスユースではメリットでしょう。

iPadのメモ帳でのテスト描画。本製品(上段)はApple Pencil(下段)と異なり、筆圧感知に対応していないことがよく分かります
もちろん複数のiPadで同時利用はできず、利用のたびにペアリングが必要になるのですが、前述のようにボタンを長押しするだけで接続ができますので、複数のiPadを所有している人が1本で済ませたり、また所有しているApple Pencilが故障や紛失等で使えなくなった時の予備として用意しておくにはぴったりです。
注目したいのは、iPad Proと組み合わせて使う時、iPad Pro本体に吸着させなくても、単体で充電が行えることです。第2世代のApple Pencilは、iPad Proに磁力で吸着させてワイヤレスで充電できるのが売りですが、iPad Proが手元にない場合は充電できず、お手上げになってしまいます。
しかし本製品であれば、単体でLightningケーブルを使って充電できますので、手元にiPad Proがない場合はもちろん、iPad Proの充電中にバッテリーの回復を邪魔しないよう、単体で充電を行うことも可能です。通常のLightningケーブルで充電する際、第1世代のApple Pencilのようにアダプタを中継してオスメスを変換しなくてよいのも利点と言えます。
上から順に、第1世代Apple Pencil、第2世代Apple Pencil、本製品。長さの違いがよく分かります
一方で、前述のように筆圧検知に対応しないほか、Apple Pencilと違ってiPad側でバッテリー残量を確認できなかったり、また駆動時間がApple Pencilの12時間に対し7.5時間とやや短いなど、マイナスとなる要素もいくつかあります。とはいえこれらがあまり問題にならず、また予算的に1万円を超えていると購入にあたって承認が下りにくいような場合、こちらをチョイスするのは有り得る話でしょう。
個人的には、ビジネスでも使いやすいよう、オレンジ色のアクセントカラーはもう少し控えめにして欲しかったと感じますが、全長の短さゆえ胸ポケットに収まりやすい点などは、逆に評価できるポイントだといえます。iPadの全モデルが手書きに対応し、これまで以上にカジュアルな使い方が増えてくると考えられる今後、導入コストが安い本製品は、購入の候補に入れておいてよい製品と言えそうです。

山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn