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バーチャルユーチューバー「HimeHina Channel」

2018.09.12 Wed

【HimeHina Channel 前編】バーチャルYouTuber「田中ヒメ」はどうやって生まれたのか

取材・文:石神仁紀

バーチャルYouTuber、略してVTuber。YouTubeなどの動画サイト上でタレント活動するCGキャラクターが多数のフォロワーを集め、VTuberチャンネルが急激な増加をみせている。ユーザーローカルの調査によればVTuberは2017年12月頃から急増し、2018年2月に500人、7月10日には4000人を突破した。

VTuberの一人である「田中ヒメ」が世に出たのは2018年3月18日。彼女のパートナーである、同じくVTuberの「鈴木ヒナ」が加わったのは5月29日。バーチャルYouTuberとしてはどちらかと言うと後発だが、ハイテンションなトークと自然なCGアニメーションでファンを増やし、9月12日現在、彼女たちを擁する「HimeHina Channel」は12万人を超えるフォロワーを持つ人気チャンネルへと成長した。ユーザーローカルのVTuberランキングでは17位と早くもトップ集団入りしている。

そんな彼女たちを支えている組織が田中工務店だ。名前からすると会社組織がビジネスとしてやっているようだが実は違う。様々な地域に住み、職種も異なる人たちが協力しながら「田中ヒメ」と「鈴木ヒナ」が必要とするものを作り出しているのだ。

今回はバーチャル組織である田中工務店から、「万能雑務役」の中島さん、モデリング進行を担当する「店長」566さん、「3Dデザイン兼アニメーター」kemoさんの3人に話を伺った。まずはYouTube公式チャンネルである「HimeHina Channel」の公開に到るまでの経緯から。

「田中ヒメ」は生まれたがっていた

「ヒメちゃんは世の中に出たい出たいと既に産気づいてる状態だった」と中島さん。世の中にVTuberが出始めているのを見て、中の人が生まれたがっていた。では助産師を集めよう、仲のいい人たちで生み出そうという動きが出てきたのが2017年11月頃。プロジェクトがスタートしたきっかけはそのようなものだったという。中島さんが出産を急がなくては不味いという事で、3D関連の技術者にネットワークを持つ店長566さんに声をかけ、工務店に有志メンバーが集まってきた。

「田中ヒメ」を生み出した人達は、実は関東・関西・九州と全国に散らばっている。勤務先もIT会社、映像制作会社、CG制作会社、夜間配送関連、教育関連など様々だ。準備段階からCGモデリング、アニメーション、モーションキャプチャ、ビデオ編集など多岐にわたる作業が発生しているが、これらはすべてネットワーク上に分散された状態で、各自稼働できる時間帯を使って行われている。

昼間に作業を進める人もいれば、「夜勤」の人たちもいる。それぞれが自分たちのスピード感で動いていて、自分たちが可能な時間にチャットでリプライする。その作業スタイルは、チャンネル開設から半年近く経った現在も続いているそうだ。

オープン前夜、それでもやっぱり大変だった!

多人数で取り組んでいるとはいえ、CGアニメーションを中心としたコンテンツづくりは並大抵のことでは出来ない。「田中ヒメ」も、最初から今のような姿だったわけではなく、キャラデザを担当した絵師や企画側メンバーからの要望は厳しいものも多かった。詳しくは「[HimeHina Channel 後編]バーチャルYoutuber 田中ヒメ・鈴木ヒナを支える3D技術」に譲るが、例えば上衣の袖の形一つとっても2Dでイメージしていたものを3D動画で破綻なく動かすためには様々なノウハウと試行錯誤が必要になる。3DCGがある程度形になった後も、優に一ヵ月は収録と調整の繰り返しだったという。

結局、2月の予定だったスタートは主務を務める中島さんがスノボで調子に乗ってビッグジャンプをし見事骨折したことにより遅延し(ツイッターでその旨を発表、中島ァ!と叱咤激励を受ける事となる)、完治を待つ間3Dモデルの調整を最終段階まで追い込むという波乱のスタートだったようだ。「始まってこのかた、まともな週末は過ごしていない」という関係者一同。客観的にみればブラック状態だが、「田中工務店はホワイトだね。これはライフワーク、趣味は別腹だよ。」と声をそろえて笑う。

「みんな本業とは別に、同人サークルのような感覚で参加しているから」とkemoさん。「メンバ―全員、面白いからこそやっているんだよ」と中島さんは力説するが……、結局一番楽しんでいるのは彼ら自身のようだ。

名前の由来は、お米とお味噌の発想で

人気VTuberを見てみると、そのほとんどは現実にはいそうもないキラキラした名前で活動している。それに対して田中ヒメ、鈴木ヒナ、はどちらもVTuberとは思えない平凡な苗字だ。これについては、本人たちも交えて議論をして、「3周まわって、お米とお味噌汁いいよね」という結論になったという。「鈴木」は東日本で一番多い苗字、「田中」は西日本トップだそうだ。

これには、ゲラ系と呼ばれる、ゲラゲラ笑ってぶっちゃけるキャラクターで「キラキラしたアイドルではない」という考えも背景にあり、実際にファンからも「田中ァ!」「鈴木ィ!」と呼び捨てにされて、これが独特の愛情表現になっているようだ。撮影現場でも「ヒメちゃん」「ヒナちゃん」だけでなく「田中さーん」「鈴木さーん」と呼ばれて、誰からも身近に親しまれる名前へと成長している。さすがお米とお味噌。

ヒメ・ヒナのこだわりを実現する、田中工務店

多様な人たちから構成される田中工務店だが、良いものを作り出すためのこだわりは全員が持っている。しかし、田中ヒメ・鈴木ヒナ本人の持つこだわりはまた格別だという。

ヒメ・ヒナにとって重要なのはファン(ヒメヒナ女児女児帝国の「ジョジ民」と呼ばれている)が楽しんでくれている状態か、不愉快な状態になっていないかということ。衣装、色味、目線、喋り方は本人たちが一番こだわっていて、本人たちがやりたいこと(女児女児活動)を田中工務店メンバー(工務員)がそれぞれのスキルを活かして実現していくという構図だ。

YouTube動画の配信以外にも、MMDモデルの配布や、MAD画像&動画グランプリの開催、サンドボックスゲーム「Minecraft」でファンとともに帝国建国を目指す「ヒメヒナ女児女児帝国建国Project!!」など、ファンとの交流に力を入れている。

Minecraft建国の様子
Minecraft建国の様子

そしてこの田中工務店、最近は国外にも広がっている。中国には工務店Chinaが存在するそうだ。中国のファンから「HimeHina Channel」を中国でも配信したいという希望が届き、自発的に中国でのライブ放送を支援してくれているという。中心となっているのは、日本の動画の字幕翻訳をしている人たちだ。

中国ではYouTube、ニコニコ動画の代わりにビリビリ動画という動画プラットフォームが人気で、HimeHina Channelのビリビリ動画生放送がサイマルキャスティングで実現している。ビリビリ動画はニコニコ動画と同様にボーカロイドや歌ってみたのコンテンツが浸透しており、文化的な共通点も多い。

日本全国どころではない広がりっぷりなのだ。田中工務店Japan、田中工務店Chinaあわせて総勢30人近くの「工務員」が二人のVTuberを支えているのである。

>[HimeHina Channel 後編]田中ヒメ・鈴木ヒナを支える3D技術 につづく

「HimeHina Channel」
バーチャルYouTuber田中ヒメ・鈴木ヒナが活躍するYouTubeチャンネル。チャンネル登録者数約12万7千人(2018年9月現在)。様々なお題を設けてのハイテンションなおしゃべりや、ゲーム対決、ゲーム実況、得意の歌の披露や、ヒメが得意とする他VTuber・アニメキャラの声真似などがメイン。毎週木曜の21時頃からライブストリームで生放送を行っている。

【田中ヒメ】
「HimeHina Channel」オープンと同時に登場した1人目のVtuber。元気すぎる動きと、大きすぎる声、常にハイテンションなキャラクターで人気を集めている。2018年9月現在、VTuberランキング17位。夢は「歌でアニメに出ること」で、2018年8月17日、初のMV(ミュージックビデオ)となる「歌ってみた」動画を公開したばかり。

【鈴木ヒナ】
田中ヒメ登場から2ヶ月ほどで「HimeHina Channel」に加わった二人目のVtuber。ヒメと比べると、おっとりした性格と落ち着いた話し方だが、極度の二次オタ、アニメ好きというキャラクターで独特のポジションを確立する。ヒメと一緒にアニメの世界への進出を夢見ており、MVにも共に出演している。

 

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