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「コールドプレイのスリーブデザインから見えること」

2008年6月20日

TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)



最近「以前よりCD買わなくなったよね」とか「昔みたいにジャケ買いをしなくなったなあ」という会話をしていたのがもう随分前のように感じてしまう。iPodやiTunesなどが普及して以来僕たちのミュージックライフが大きく変化したのは間違いない。自分の好きな曲を好きなだけダウンロードすることができる今、レコードショップに行って、数えきれないCDやレコードの中から目当ての一枚を必死になって探し出すような手間をかけなくてもいい。

でも、ふと思う。僕たちがミュージシャンに求めているのは、本当に音だけなのだろうか? もちろん音が重要なのは間違いないが、ミュージシャンの魅力はけっして演奏や唄だけではない。ファッションやライフスタイルなど、ミュージシャンを取り巻く不思議なグルーヴ感についつい惹き込まれてしまうのだ。CDのスリーブデザインやPVは、そんなグルーヴ感をわかりやすく僕たちに伝えてくれるメディアでもある。それがカッコよかったり、面白かったりしたら、ますます彼らのことが大好きになってしまうのは当然だ。

「レコジャケの衝動買い」ではないが、不思議なことに魅力あるミュージシャンはビジュアルにも力を入れていることが多い。レディオヘッド、ビョーク、ファットボーイ・スリム、ニュー・オーダーなど、スタイルを持った魅力あるミュージシャンたちの新しいアルバムやDVDが出るたびに、音楽関係者ばかりではなくデザイン関係者も注目する。

6月に新しいアルバム「Viva La Vida or Death and All His Friends」を出したばかりのコールドプレイも、映像やCDスリーブデザインなど、ビジュアルを追求するミュージシャンだ。

コールドプレイのアルバム
『左上:デビューアルバム「PARACHUTES」Design by Coldplay assisted by Mark Tappin at Blue Source
左下:「A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD」Art Direction by Blue Source and Coldplay
右上:「X&Y」Design and Art Direction: Tappin Gofton
右下:「Viva La Vida or Death and All His Friends」Design and Art Direction by Tappin Gofton Booklet art by Coldplay


ローガンのディレクションによるiPod+iTunesのCMも話題になっているけれど、スリーブデザインに関していえば、セカンドアルバム「A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD」の写真家ソルベ・スンツボによるアートワークは不思議な魅力を醸し出していたし、その後の「X&Y」では、5ビットの国際テレックスの標準文字コードで作られたフォントをそのままカバーデザインにするなどして話題になったのも記憶に新しい。また最新アルバムではルーブル美術館にあるドラクロアの『民衆を導く自由の女神』の絵に「VIVA LA VIDA」と白い手書き風の文字が描かれたデザインで、タイトルにピッタリのイメージをつくりあげている。コールドプレイ自らがデビューアルバムから最新アルバムまでアートディレクションあるいは、ペインティングなどで参加していることからも、彼らが単なる音だけの表現者ではないことがよくわかるだろう。

参考までに、「X&Y」以降コールドプレイの作品のアートディレクション&デザインを実質担当しているのは、マーク・タッフィンとサイモン・ゴフトンが2004年に設立した「タッフィン ゴフトン」というデザインチーム。この2人は以前、ブルーソース、トム・ヒングストンスタジオといったロンドンを代表するデザインスタジオでそれぞれ経験を積んできた、いわばデザイン界のエリートたちでもある。彼らは他にもケミカル・ブラザーズやモーニング・ランナーなどのデザインを手掛ける最注目のデザインチームだ。そんな優秀なアートディレクターとミュージシャンが一緒になってデザインしたジャケットには、Webや音だけでは表現しきれないミュージシャンの魅力が込められている。まるで光に集まる虫のように、僕たちはついついそこに引き寄せられてしまうのだ。

今年のサマーソニックにも出演するコールドプレイだけど、映像でもグラフィックでもない、ライブという表現のなかで、いったいどんなことをしてくれるのか、今からとても楽しみだ。

誰かチケット余っていたら、譲ってください!!



蜂賀氏近影

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/






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