現在最も注目されている新技術のChatGPTですが、興味はあるものの、まだ利用したことがないという人も多いのではないでしょうか。これだけ話題になってしまうと、今から試すのはレイトマジョリティのようで、少し気後れしてしまうかもしれません。とはいえ、ビジネスでは今後避けて通れないトピックなので、一度体験してみることが大切ですよね。そこで、本記事ではChatGPTの基本的な使い方、デザイン業界における可能性、使用における注意点などを解説します。
ChatGPTとは
ChatGPTとは、米国サンフランシスコにあるOpenAIという人工知能研究所が開発した対話特化型言語モデルのAIチャットサービスです。その特性から「文章作成AI」「対話型AI」といった説明をされることもあります。
OpenAIは、サム・アルトマン、イーロン・マスクらによって2015年末に設立された研究所で、資金調達でMicrosoftから100億ドルの投資を受けています。Microsoftはすでに、Microsoftが開発・提供している検索エンジン「Bing」とChatGPTが連携したサービスである「Bing AI」を提供をスタートしています。さらに、Microsoftは、2023年1月からは、ChatGPTも含めたOpenAIが開発する技術が組み込まれたクラウドコンピューティングプラットフォーム「Azure OpenAI Service」の一般提供も開始しています。
このように、ChatGPTに注目が集まる中で、Googleは「Google Bard」というAIチャットサービスの開発を前倒しで発表しました。ChatGPTをはじめとした文章作成AIは検索のライバルになる新技術であると考えられているので、検索が基幹事業となっているGoogleは危機感を感じており、さながら「Microsoft」VS.「Google」の様相も呈しているのです。
ChatGPTの基本的な使い方
ChatGPTを考察する前に、まずは使ってみることが一番の理解につながると思いますので、今回はChatGPTの始め方から解説します。
【ChatGPTのサインアップ方法と基本的な使い方】 |
1.ChatGPTの公式ページへアクセスしサインアップ |
2.メールアドレスを入力してアカウント作成 |
3.メールアドレスを確認し次の設定へ進む |
4.電話番号に送信されたコードを入力 |
5.注意事項を確認 |
6.サインアップ設定を完了して質問を入力 |
7.作成した質問を送信しAIによる回答を確認 |
1.ChatGPTの公式ページへアクセスしサインアップ
ChatGPTの公式ページへアクセスします。英語のWebサイトですが、ブラウザで言語設定を選択できる場合は日本語を選択しておくと、(翻訳ではありますが)日本語表示に切り替ります。英語のままだと不安のある人は日本語の設定にしておきましょう。TOPページにある「CHATGPTを試す」というボタンをクリックすると、「ログイン」と「サインアップ」を選択する画面に遷移します。初回の利用なので、ここでは「サインアップ」のボタンをクリックします。
2.メールアドレスを入力してアカウント作成
「サインアップ」をクリックすると、アカウント作成のページへ遷移します。アカウントの作成方法はメールアドレスで登録する方法と、GoogleアカウントやMicrosoftアカウントを利用して登録する方法があります。ここでは、メールアドレスを使ってアカウントを作成する手順を紹介します。
アカウント作成ページにある電子メールアドレス入力欄に、任意のメールアドレスを登録して、その下にある「続く」というボタンをクリックします。「続く」をクリックすると入力したメールアドレスに、アカウントの作成を確認するメールが送信されるので、受信したメールを確認します(ここではGメールを使用したためGメールを開くとなっていますが、メールクライアントソフトで受信メールを確認しても問題ありません)。
3.メールアドレスを確認し次の設定へ進む
OpenAIから受信したメールを確認します。メールの文面に「Verify email address(メールアドレスの確認)」というボタンがありますので、これをクリックします。メールアドレスの確認が完了すると上の画像のように、アカウント作成の続きの設定画面ページに遷移します。最初に、名(Last Name)と姓(First Name)を入力します。この姓名については、支払いが発生する場合に入力された情報を使うので、正確でかつ最新のものを入力することと説明されています。無料で利用する限りは本名でなくても問題はないと思いますが、基本的には本名を入力しておきましょう。
4.電話番号に送信されたコードを入力
姓名の入力が終わったら電話番号を入力します。この電話番号は、認証コードを送るための電話番号なので、スマートフォン等の携帯端末の番号を入力します。電話番号を入力するとSMS(ショートメール)に、OpenAIからコードが送信されます。コード送信後には、コードの入力画面ページに遷移していますので、コード入力欄に受信した6桁のコードを入力します。
5.注意事項を確認
コードを入力し認証されると、上の画像のような注意事項に関するモーダルウィンドウが開きます。それぞれの注意事項を確認したら「次へ」をクリックして次のステップへ進みます。注意事項から、あくまでも調査プレビューとして現在は無料利用できるということがわかります。
6.サインアップ設定を完了して質問を入力
すべての注意事項を確認して、最後のウィンドウにある「終わり」をクリックすると、アカウント作成が完了します。
アカウントが作成されると、ChatGPTのメイン画面に遷移します。ChatGPTのメイン画面で日本語設定にしておくと、今のところ動作が安定しないようなので、ここからは英語設定で操作していきましょう。英語設定でもチャットの日本語入力は問題なくできますので、日本語化する作業は特にありません。左下にライトモード・ダークモードに切替えるボタンや、FAQのボタン、ログアウトボタンなどが配置されてはいますが、特に難しい操作方法はありません。画面下部に、チャットを入力する欄がありますので、ここに質問などを入力します。
7.作成した質問を送信しAIによる回答を確認
チャット入力欄の右端に、紙飛行機のマークの送信アイコンがあります。質問を入力したら、この送信アイコンをクリックします。試しに「ChatGPTはどうやって使うのですか?」という質問を送信してみます。送信すると、AIが自動的に回答を作成していきます。基本的な操作方法は以上になります。アカウント作成をクリアしてしまえば、非常に簡単なのが分かると思います。
デザイン業界でChatGPTを活用していく可能性
使い方がわかったところで、ChatGPTがデザイン業界に与える影響について考えてみましょう。
【デザイン業界でChatGPTを活用していく可能性】 |
1.テキスト作成の自動化 |
2.今まで協業者に頼んでいた領域もカバーできる |
3.様々なツールと連携して使える |
4.UI・UXデザインの在り方を変える |
1.テキスト作成の自動化
「◯◯◯◯●◯◯◯◯◆」といったように記号などを用いたダミーテキストではフォントイメージなどは伝わりづらいので、適当な文章を作ってラフデザインを作成することも多いと思います。しかし、最終的には使わない文章なので、ChatGPTを使って自動にテキストを作成すると大変便利です。
上の画像はChatGPTにアパレル企業のキャッチコピーを考えてもらった結果です。ポートフォリオで架空の企業サイトを作る際にも、役立ちそうですね。架空のキャッチコピーを作成する、架空のリード文を作成するといった作業が自動化できるので、文章を考える時間が削減できます。
2.今まで協業者に頼んでいた領域もカバーできる
ライター、コピーライター、編集者といったテキストに関わる協業者に依頼していた作業をChatGPTに任せることもできるかもしれません。もちろん、高度な専門性を要求されるライティングに関しては、プロの専門家の協力を仰ぐ必要がありますが、簡単なテキスト入力であればChatGPTを用いて解決できることも多くあるように思います。また、プログラマーなどのSNSの反応から、コーディングなどもChatGPTで一部自動化する、既存のコードのエラー等を発見するといったことも期待できるようなので、簡単なものであればプログラマーやコーダーを介さずにコードを作成・修正するといった対応も可能になるかもしれません。
3.様々なツールと連携して使える
ChatGPTと連携したサービスがすでに数多く提供されています。今後、画像・動画編集やイラスト作成といったクリエイティブ系のツールと、ChatGPTが連携することも十分に考えられます。
また、Microsoftとの関係性が強いChatGPTですが、ChatGPTと連携したGoogle Chromeの拡張機能が複数提供されています。Googleの最新検索結果を反映して回答を作成してくれるようになる「WebChatGPT」、YouTube動画を文章で要約してくれる「YouTube Summary」、Twitterの自動投稿・返信が可能になる「TweetGPT」など、便利な機能拡張が利用できます。このように他のツールとの連携もChatGPTの可能性を感じる要素です。
4.UI・UXデザインの在り方を変える
ChatGPTは、AIチャットボットサービスと紹介されている記事もあります。チャットボットサービスによって、Webサイト設計やUI・UXの在り方が大きく変わりましたが、ChatGPTの登場は、その傾向をさらに強めていく可能性があります。Webサイト訪問者の求めている内容の大半をChatGPTのようなAI技術で解決できるようになると、サイトに必要な要素や、それらに関するUI・UXデザインの在り方も大きく変わっていくでしょう。Webサイト制作では、今後こうしたAIチャットボットの利用も視野に入れた視点が重要になるはずです。
ChatGPTの注意点
さまざまな可能性が考えられるChatGPTですが、利用する上で注意しなければいけない点もあるので、以下に説明します。
【ChatGPTを利用する上での注意点】 |
1.現在はテスト段階で間違いや嘘の回答が作成されることもある |
2.利用情報は調査データとしてOpenAIに提供されている |
3.より高度なメディアリテラシーが必要となる |
4.今後有料になる可能性がある |
1.現在はテスト段階で間違いや嘘の回答が作成されることもある
ChatGPTはテスト段階で、間違った回答や嘘の回答が作成されるケースも多いのが現状です。特にデータの少ない事柄については、誤った内容になることが多い印象があります。試しにいくつか取引先の企業について尋ねてみてください。情報が少ない中小企業に関しては、精度が低い内容になっていると思います。
上の画像は「MdNについて教えて下さい」と質問した結果です。MdNは「マシンデザインオフィス・ニッポン」の略称となっていますが、正しくは「Macintosh designers Network」です。その他の内容はだいたい合っているので、事前知識がない人にとっては、どこが間違いかわからない回答になっています。SiriやAlexaなどのAIは、わからないことは「わかりません」と回答してきますが、現段階のChatGPTは適当な文章を作成して返答してくる場合があるので注意しましょう。
また、ChatGPTを英文校正ツールや翻訳ツールとして利用することもできますが、こちらは(筆者の個人的な感想になりますが)DeepLなどの翻訳アプリのほうが精度は高いように思います。
加えて、今後は似たような創作物を生成してしまう可能性から、著作権の問題も発生する可能性もあります。記事作成に利用する場合も、そのまま転用するのではなく、ファクトチェックやコピペチェックを行い、ある程度自分で手を加えることも必要になってくるでしょう。
2.利用情報は調査データとしてOpenAIに提供されている
サインアップの際にも注意事項として伝えられている通り、現在無料で使うことのできるChatGPTの機能は調査プレビューの一環として提供されているテスト版です。無料で使うことのできる代わりに、ユーザー側はOpenAI側に個人情報や質問内容などの全てを提供していることになります。注意事項には、会話で機密情報を共有しないでくださいということも伝えられています。
3.より高度なメディアリテラシーが必要となる
ChatGPTは独自のデータベースとして利用し文章を作成しています。そのため時事的なトッピックやデータベースに含まれてない情報に関しては弱く、精度も低い回答が繰り返されるケースもあります。また、AIの開発は白人男性のデータに偏りがちで、人種、性別、宗教、性的指向・性自認などに関して「AIの偏見」や「アルゴリズムの差別」が形成されてしまうといった問題が、これまでも度々指摘されており、データ量は十分にあっても、そのデータに偏りが生じる可能性も考えられます。ChatGPTに限ったことではありませんが、AIから得られた情報の中に偏見や倫理的な問題が潜んでいないかは注意深くチェックする必要があります。そうした観点では、作成される文章の質が高い分、今まで以上に高度なメディアリテラシーがユーザーに要求されている技術であるとも言えます。
4.今後有料になる可能性がある
現在は、データ収集のために無料版が提供されているChatGPTですが、今後有料になる可能性もあります。ただし、ChatGPTは、すでに有料版の「ChatGPT Plus」というサービスが提供されており、しばらくの間は一部機能が制限された無料版の提供も継続されていくと予測されます。有料版の「ChatGPT Plus」は、利用ピーク時も快適に使える、レスポンス時間が短縮される、新機能を先行利用といった機能が追加されてます。
まとめ
最新トレンドをキャッチアップしていく必要があるデザイン業界の人たちにとって、一次情報に触れることを心がけることは非常に大切な姿勢です。後発のサービスも続々と登場していますので、ChatGPTが文章作成AIツールの中で覇権を握っていくのかどうかは定かではありません。しかし、AIが今後私達の生活に大きな影響を及ぼすことは確実です。
AIの登場で会計処理や事務手続きといった作業が先に自動化されると思っていたのに「文章を書く」「絵を描く」「作曲をする」といったクリエイティブな領域が侵食されているように感じている人も多いと思います。しかし、AIに使われるのではなくAIを使う側になるためには、今からAIに多く触れ、その傾向と対策を知っておくことが非常に重要になるでしょう。その1つの体験となるように、本記事を参考にしてChatGPTを使ってみましょう!
2023.02.27 Mon