書籍、パッケージ、Webなど魅力的な最新のデザインを毎週お届けする連載。デザイン担当者のコメントが読める場合も!デザインの狙いやこだわりをチェックして、デザインの理解度アップに役立てましょう。
書籍カバー
山野辺太郎『こんとんの居場所』
●Designer:森敬太[合同会社 飛ぶ教室]
●Illustrator:nico ito
●Editor:石原将希[石原書房]
国書刊行会/2023
山野辺太郎の最新作『こんとんの居場所』。謎の生命体の取材記者として、調査船に乗り込む男女。2人がたどり着いた島の上で見たものとは?表題作のほか、人類を次のステップへと進める驚きの内容を描いた「白い霧」を収録している。かわいらしい色合いと反し、どこか不気味さも秘めた生物が描かれ、インパクトのあるブックカバーに。作品・著者名はコンパクトにまとめられ、より装画の不思議さ、ユニークさが際立つ。装丁は飛ぶ教室の森敬太、装画はnico itoによるもの。
COMMENT|編集者|石原将希[石原書房]さん
山野辺太郎さんの小説は、幻想性とリアリズム、純朴さと毒、非人情な不気味さとユーモア、そして古代やそれに連なるものへのノスタルジーが混在し、唯一無二の読み味を持つ非常に特異なものなのですが、これまでの単行本ではその明るい面を前に出した装幀が続いていました。
そこで今作のカバーはその毒の割合を高めたものにしたいと考え、装幀の森敬太さん(合同会社 飛ぶ教室)、装画を描き下ろしてくださったnico itoさんも作品からそういった部分を精確に汲み取ってくださり、このように迫力のあるデザインに結実しました。
収録作のエッセンスが絶妙に形象化された装画を全面に押し出し、文字情報の主張を極端に切り詰めたレイアウト(帯がついている状態では、動物なのか植物なのか、生物なのか無生物なのかよくわからないものと目が合ってしまったような具合になります。思わず帯を外したくなるのが不思議です)。共通するテーマを持つ二つの作品が収録されていることから、同じモチーフの微妙に違うイラストが表紙と裏表紙に配されていることも相まって、異様かつ不穏なオーラを放っています。なおかつどこかあっけらかんとした明るさや宗教画のような神々しさも感じられ、それがまたどこか深いところで怖い。
読了後、表紙と裏表紙の装画を見比べて頂くと、小説作品はもちろん、この絵とデザインの印象も戦慄とともに深まるはずです。
商品パッケージ
『冷凍スープ弁当』
●Art Director+Designer:長岡拓也[Nagaoka design office]
Illustrator:ハニュウミキ
カラミノフーズ/2023
カラミノフーズから2段式の『冷凍スープ弁当』が新登場し、サムゲタン、トムヤムクンなど4種の味がラインナップ。具だくさんスープに十穀米やフォーを組み合わせた商品で、電子レンジで温め混ぜれば、スープごはんとして楽しめる商品だ。働く女性や育児中の女性に向け開発され、パッケージデザインにはリラックスして過ごす女性が描かれている。イラストと自身をリンクさせることで、ホッとできるようなデザインに。アートディレクションはNagaoka design officeの長岡拓也、イラストはハニュウミキによるもの。
COMMENT|アートディレクター|長岡拓也さん
「忙しく、頑張る日々をいたわる冷凍食品」のコンセプトをもとに、パッケージからやさしさを感じられるようなデザインができないか考えました。よくある冷凍食品の「シズルたっぷりなビジュアル」では押しが強すぎるのであえてイラストを用いて「なんかホッとする」ようなビジュアルになるように方向性を決めました。
さまざまな女性像やライフスタイル等を描かれているハニュウミキさんにイラストをお願いし、様々なシチュエーションで食べている女性達を描いていただきました。「店頭で見ても、家の冷凍庫で見ても、なんかホッとする」そう思っていただけたら嬉しいです。
(長岡)
COMMENT|イラストレーター|ハニュウミキさん
「身体をいたわる冷凍食品」というコンセプトから、忙しく過ごす女性のホッと一息できるお食事時間を描きました。子育て中ママの夜食、疲れて何もしたくない時の夕飯、時間が取れない時のデスクランチなど、それぞれどんな時に食べるかなと考えながら描くのが楽しかったです。自分と照らし合わせて選ぶ楽しみもあれば嬉しいです。
(ハニュウミキ)
今週のラインナップは以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。
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2023.05.24 Wed2023.06.21 Wed