今回は書籍『横濱エトランゼ/大崎梢』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
装飾的な文字で異国情緒あふれるイメージに
元町や山手、馬車道など、横浜を舞台に起こる不思議な出来事を解き明かす、ハートウォーミングな連作短編集『横濱エトランゼ/大崎梢』の表紙カバー。異国情緒あふれる賑やかで華やかな街「横浜」のイメージが、作中に登場する多種多様なモチーフを散りばめたメインイラストや、レトロでハイカラな雰囲気のタイトル文字などで表現されている。
Font.01「オリジナル」
レトロさと音を感じさせる華やかな雰囲気の文字に
メインタイトルの文字は、作品の舞台である横浜の異国情緒あふれるイメージをもとに作り起こされたオリジナルのもの。レトロ感を出すため、欧文書体のブラックレターのような装飾的な文字が考案された。下図はその制作工程。手描きでラフを作成したあと、Illustratorでトレースし、細部の調整を行うなどして仕上げられた。
その際、キラッと輝くようなモチーフをあしらったり、メインイラストに描かれている紙吹雪から想像した「ファンファーレが鳴り響く情景」を音符記号風のラインで表現するなどして、横浜の賑やかで華やかな雰囲気を演出する工夫もされている。
Font.02「見出ゴMB1」
タイトルとの差別化と可読性を意識した書体に
著者名の文字は、読みやすさを重視して設計されたオーソドックスなゴシック体「見出ゴMB1」(モリサワ)に。ハネやハライがシャープで華やかな印象のタイトル文字と差別化するため、あえて落ち着いた雰囲気のゴシック体が選択された。
Font.03「Easy Street Alt EPS」
流れるような書体でエレガントさを表現
タイトルの欧文表記部分は、流れるような筆跡のスクリプト体「Easy Street Alt EPS」(EPS Fonts)。エレガントさを出すため、流麗で雰囲気のある書体が選択されている。
2020.04.30 Thu2021.09.03 Fri