今回は、ローソンのスイーツブランド「ウチカフェ」の商品『ウチカフェ 茶師十段関谷祥嗣監修茶葉使用 ほうじ茶ラテバー』のパッケージの使用フォントについて、デザインを手がけたKnot for, Inc.に取材。趣がありつつモダンで印象的なタイトル文字などの制作過程に迫ります。
*本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、プロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
緩急のあるデザインでカジュアルかつ明るいトーンを出す
全国でも十数人しかいない“茶師十段”の関谷祥嗣氏が厳選した、薫り高い宮崎県産茶葉の豊かで華やかな風味を堪能できるアイス『ウチカフェ 茶師十段関谷祥嗣監修茶葉使用 ほうじ茶ラテバー』。シリーズ化されており、「ほうじ茶」のほかにも「抹茶」と「和紅茶」がラインアップされている。
パッケージでは、お茶の良し悪しを見極める目利きである「茶師」にフォーカスしながらも、お茶から連想する格式高い和のイメージをあえて避け、明るくカジュアルなトーンが追求された。アートディレクターの上杉滝さんによれば「パッケージの最重要テーマである『茶師』を大きくレイアウトしてアイキャッチとしました。ターゲットが幅広い商品ですので、若年層にも受け入れられやすいカジュアルなイメージにすべく、『茶師』の文字は緩く明るいスキのある印象を目指して調整を重ねています。文字要素の周囲を飾るオーナメントは、お茶の湯気がモチーフになっています」とのことだ。
Font.01「オリジナル」
カジュアルで明るくスキのある表情の文字に
商品名のうち「茶師」部分は、商品の幅広いターゲットに合わせて作り起こされたオリジナルの文字。お茶の伝統的なイメージはあえて避け、カジュアルなテイストで制作された。図はその制作途中のもの。
上杉さんによれば「お茶というと、伝統的で格式の高い佇まいを思い浮かべますが、今回は若年層にも受け入れられるようなトーンを目指し、カジュアルで明るくスキのある表情になるよう心がけました。『茶師』の文字はいちばんに目に留まる部分なので、作り起こしたあとで輪郭ににじみやムラのような表情を与え、懐かしさや優しいニュアンスが少し出るように調整しています」とのことだ。
Font.02「かもめ龍爪」
宋朝体で軽くニュートラルな印象に
商品名の「十段」部分と、キャッチコピー「香×苦×涼」は、細く鋭いはらいが特徴的な宋朝体「かもめ龍爪」(モリサワ)に。そのシャープな印象がコンセプトに合っていたため選択された。上杉さんによれば「メインの『茶師』を引き立たせるのが今回のデザインのテーマでした。そのため、ほかの文字要素はできるだけ軽いニュートラルな印象になるよう心がけています」とのことだ。
Font.03「筑紫B丸ゴシック」
温かみのある丸ゴシック体を選択
商品名のうち「ほうじ茶ラテバー」や「関谷祥嗣監修茶葉使用」部分、ボディコピー、欧文部分は、すべて「筑紫B丸ゴシック」(フォントワークス)がベースに。メインの「茶師」部分を引き立たせるため、軽やかでニュートラルな印象の書体が選択された。ウェイトは「ほうじ茶ラテバー」が「M」、「関谷祥嗣監修茶葉使用」やボディコピー「香ばしくコクのある~」部分が「E」などとなっている。
上杉さんによれば「メインの『茶師』はにじみなどの加工を施して揺らぎのある表情にしていますが、それ以外の文字要素は若干太らせている箇所が部分的にある程度で、基本的に加工はしていません。ディテールを詰める部分と詰めない部分の対比がカジュアルさを生み、画面に緩急が生まれればと考えてデザインしています」とのこと。
制作者プロフィール
- Knot for, Inc.(株式会社ノットフォー)
- デザイン事務所
- 株式会社ノット・フォーは、ブランディングやロゴ、パッケージ、webデザイン、コンサルティングなど様々なプロジェクトを手がけています。ブランドや商品の『潜在的・本質的』な魅力を引き出すデザインを提供します。 https://www.knotfor.co.jp/
2022.09.01 Thu