Web解析ツールの実践的活用指南 第3回 サイト最適化への一歩 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

Web解析ツールの実践的活用指南 第3回 サイト最適化への一歩

2024.5.18 SAT

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アクセス解析ソフトにもう挫折しない!
Web解析ツールの実践的活用指南


全日空システム企画(株)  安西 敬介
文=
安西 敬介 全日空システム企画(株)
ANAのWebサイトのマーケティング・分析支援を行う



第3回
サイト最適化への一歩


同じ目的地に行くのなら燃費のより良い車のほうがガソリン代がかからない。今回は、無駄な広告費を払うより、サイトをWeb解析ツールで最適化し、より燃費の良いサイトにしていく方法を見ていきたい。


改善のポイントとなるキーページを見つける

サイトを最適化するにあたり、やはり少ない対応で大きな効果を得ていきたい。そのためにも改善のポイントとなるキーページを見つけることは非常に重要だ。第1回で触れたとおりデータはグラフ化をしていくことでデータの変化を見つけやすくなる。今回はバブルチャートを利用した方法を紹介したい。

バブルチャートは数値を3つ組み合わせて比較することができる。これをうまく利用することでいろいろな視点でページの位置づけが検証可能だ。たとえば下記のような組み合わせで見ていく。

訪問者数(大きさ)×平均滞在時間(X軸)×平均訪問回数(Y軸)

バブルチャートを上記のような設定をした場合、グラフ上でより右に存在するページが滞在時間の長いページとなる【1】。つまりよく読まれているページである。逆に左側にあればあるほどすぐに帰ってしまっているページだ。こういったページは、リンク元で想定した内容に対して、実際のページの内容が期待に沿わなかった可能性が高い。

【1】グラフ化したバブルチャート
【1】グラフ化したバブルチャート


またグラフの上側に存在するページはより訪問回数の高いページである。こういった位置にあるページはよりリピート率が高いページとなる。内容にもよるが、商品の紹介ページなどであれば、人気商品である確率が高い。

つまりグラフ上の右上に存在するページほど1人当たりの訪問回数も高く、滞在時間も長いページとなる。こうしたようにバブルチャートを利用することで、それぞれのページにどういった対応を行っていくのがよいかも見えてくる。

バブルチャートは設定する項目を工夫することで、いろいろな視点から各ページを比較することができる。たとえばコンバージョン達成率がわかるWeb解析ツールであれば、下記のような軸でグラフをつくることで、さらによりコンバージョンに達成しているポイントを見つけることができる。

訪問者数(大きさ)×コンバージョン達成率(X軸)×ページのCTR(Y軸)

このあたりはサイトの特性により数値が変わってくるので、いろいろと試しながら最適なものを見ていくのがよいだろう。バブルチャートを利用する場合、たくさんのサンプルがあるとわかりにくい。訪問者数が上位のページなどをうまくピックアップして見ていくとよいだろう。

また、セクション(ディレクトリ)ごとに見ていくことでも大まかな内容を知ることができる。こうして大きく数値を見ながら気になる部分をページ単位でブレイクダウンをしていく方法は、ページ量の多い大規模サイトの場合は行いやすいだろう。


キーページを深堀りをしていく

連載の第1回で「想像する」ということに触れているが、キーページを見つけたらそこから深堀りをしながら対応策を検討していく必要がある。基本的にはページの内容を実際に確認をしながら、「ページへの到達を高くする」「ページからのコンバージョンを上げる」のふたつのポイントで整理を行っていく。

ページへの到達を高くする

Web解析ツールでは指定したページから「前ページ」「次ページ」と流入や流出ページを判断できるものが多くなってきている。ページの訪問者数が低く、到達を高くしたい場合、「前ページ」がどのようなページかを確認しながら、それらの内容やリンクからユーザーのニーズを分析していく。たとえば「キーページへの流入が多いページは何か?」「どのような目的でつくられたページだろうか?」「張られているリンクの文言は何か?」といった部分を分析していると、ページを作成した際に考えていた主目的とは違う目的で遷移している場合がある。これは前のページのさらにひとつ前のページのリンクが誤誘導をしてしまったために、ユーザーがひとつ多くページ遷移してしまっている場合などだ。

たとえばA→B→Cと遷移していた場合に、わかりやすくそれぞれで10%の離脱があったとする。ページAに1,000人来訪していた場合に、ページBでは900人、ページCに到達したときには630人になってしまう【2】。

【2】リンク修正前とリンク修正後の離脱の相違
【2】リンク修正前とリンク修正後の離脱の相違


これをWeb解析ツールの分析から見直し、Bへのリンクをなくし、A→Cへリンク先を変更したとしよう。その際はたとえ20%減っていたとしてもAページへ1,000人訪れているのであればCページには800人が流入することとなる。

こういった工夫を行うことで、それぞれのCTRに大きな変化がなかったとしても、サイト全体で見た場合のコンバージョンを大きく向上させることができる。

ページからのコンバージョンを上げる

ページ自体に来訪者が多かったとしても、ページの平均滞在時間が短かったり、そこからのCTRやコンバージョン数が低かった場合、そのページは効果を挙げていないことになる。こういった場合は、ページ自体を見直すことでコンバージョンを上げていく。

滞在時間が短く、さらに離脱率が高ければ、そのページへの遷移が期待外れだったということが証明されているようなもの。リンク元からのリンクを正確に把握し、ページの目的に合わせた内容を容易にする必要がある。ひと目で見て、ユーザーの目的に合ったページに遷移しているかわかるコンテンツが望まれる。

また、ページにさまざまな情報が混在してしまっている場合、ページの目的が不明確になってしまうことが多い。内容を見直し、そのページの目的が明確になるように情報をダイエットさせることも必要だ。コンテンツの情報や内容を整理した結果は、滞在時間でもある程度修正した効果の判断がつく。

ページ全体のCTRは高いもののコンバージョン率が低い場合は、リンクが大量に存在しているためにコンバージョンプロセスへのCTRが低くなってしまっている可能性がある。こういうときは、リンクの数をなるべくそぎ落とし、コンバージョンプロセス以外へのリンクはできるだけ排除することが望ましい。

リンクが複数あっても、何度も戻ってすべてのリンク先を検証してくるような、心優しい暇なユーザーは数少ないものだ。


対応を行ったら必ずその効果をチェック

対応を行ったら必ずその効果の分析を行う。実際に対応前と対応後で数値を参照していくことである。これを行わないと施策が正しいものであったかの判断ができないため、効果のない修正をいつまでも続けてしまいかねない。

チェックする項目は対応した項目によって異なってくる。ページの内部を修正し、そこからのコンバージョン率の向上を目指したのであれば、CTRやコンバージョン率を対応前と後で比較するのがよい。また、ページへのリンクなどで到達方法を修正したのであれば、そこへの流入の変化を見ていく必要がある。

連載の第1回でも書いたが、いずれの比較を行う場合もある程度の期間をもって比較をしたほうがよい。前後の1日で比較した場合、その日だけたまたま良かった、悪かったという可能性もあり実際はなんの変化になってない場合もあるからだ。また、できるだけ対応を行う場合は1回につきひとつの対応を行うほうがよい。複数の対応を同時に行ってしまうと、そのほかの要素の変動要素が大きくなってしまい、対応策についての効果分析が行いづらくなってしまう。

まとめ

今回は改善するページを見つけながら、最適化をしていくために、どのような改善をしていくかを見ていった。一見こうした作業は小さく、効果があまりないように感じてしまうが、少しずつ積み上げていく作業の中で、全体の内部コンバージョンを大きく変化させていくことができるようになってくる。

燃費の悪い車でもガソリンさえあれば、目的地にはたどり着く。しかし、より燃費のよい車にすることでガソリンにかかる費用を抑えながら目的地にたどり着くことができるようになる。バナーやリスティング広告を出稿し、外部の流入を増やしていくことで売り上げなどのコンバージョン数を上げていくこともできるが、こういったサイト内部を修正しながら最適化していくことで、より燃費の良いサイトを目指していってほしい。


本記事は『Web STRATEGY』2007年11-12 vol.12からの転載です
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