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Web解析ツールの実践的活用指南 第6回 シナリオを利用してサイトを最適化する

2024.5.18 SAT

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Web解析ツールの実践的活用指南


全日空システム企画(株)  安西 敬介
文=
安西 敬介 全日空システム企画(株)
ANAのWebサイトのマーケティング・分析支援を行う



第6回
シナリオを利用してサイトを最適化する


Web解析ツールは取得できるデータが多いが、仮説を立てて考えることでどの指標を見ていくかを絞り込むことができる。今回はこの仮説を利用したシナリオ型のサイト最適化についてみていきたい。


シナリオの必要性

前回まではWeb解析ツールで利用される指標を利用してサイトを最適化をしていく方法を見ていった。今回はセグメントの作成を通してシナリオを組み立てる中で、サイトを最適化していく方法を見ていきたい。

ここでいうシナリオとは、サイトを構築する際に仮説を立てて、その仮説に基づいて、サイトの目的、つまりコンバージョン地点へサイト訪問者を誘導していく考え方である。この方法は嗜好性の強い訪問者を誘導するのに非常に有効である。

仮説を立てて考えることは非常に重要であり、仮説があることで、それを軸として検証しなければならない部分を明確化しやすくなる。検証する中で仮説がまちがっていれば修正をしていけばよい。Web解析ツールはさまざまな指標をさまざまな視点で見ることができるため、混乱をしないためにも非常に有効な方法である。


シナリオを利用した最適化のステップ

シナリオを利用したサイトの最適化は5つのステップを踏んで行っていく【1】。

【1】シナリオ最適化の流れ
【1】シナリオ最適化の流れ


ステップ1:サイトを検証し、訪問者の行動を分析する

ステップ2:対象セグメントを設定し、目標を設定する

ステップ3:目標までのシナリオを設定し、サイト構造をつくる

ステップ4:シナリオをWeb解析ツールで検証する

ステップ5:シナリオにフィードバックする


ステップ1 サイトを検証し、訪問者の行動を分析する

最初のステップは現状運営しているサイトの検証である。サイトがどのように利用されているかによって、シナリオをいくつかのセグメントに分ける必要があるからだ。

分析するポイントはいくつかあるが、流入元(提携サイト・サーチエンジン)、サーチワード(リスティング・自然)が比較的わかりやすい。

特にサーチワードについては、サイト訪問者のサイト訪問の意思が反映されている確率が高い。そのためシナリオを作成するのにも非常に役立つ。サーチワードからそのあとのページ遷移を分析をすると傾向がわかりやすいだろう。こういった部分を手がかりにセグメントを作成していく。

ただし、現状分析の中では、セグメントを分けるために手がかりがすべてわかるわけではない、こういった場合もわからないからとあきらめてしまうのではなく、仮説を設定し先に進んでいきたい。まちがっていればそのときに直していけばよいのである。

ステップ2 対象セグメントを作成し、目標を設定する

実際にある程度の訪問者の層が見えてきたら、併せてセグメントを作成していく。

初めて行うのであれば、セグメントはそれほど多くつくらないほうがよい。これは、セグメントをたくさんつくりすぎることで、分析がし切れなくなってしまうためだ。最初に行うのであれば、ひとつのセグメントでもよいぐらいだろう。その後、慣れてから複数増やしていけばよい。

セグメントを作成する際には、目標であるコンバージョン地点を用意しておく必要がある。これはサイトやセグメントによって異なるが、商品の購入完了、キャンペーンの登録完了などになることが多いだろう。この目標を設定することが、シナリオベースでの分析を行っていく第一歩となる。

また、コンバージョン地点を設定する際は、ひとつのセグメントにふたつ以上の設定を行ってはならない。こうするとシナリオも立て難く分析も難しくなるからだ。欲は出さないこと、それが分析項目を明確にし、サイトを最適化していくことにつながっていく。

ステップ3 目標までのシナリオを設定し、サイト構造をつくる

セグメントとコンバージョン地点が決定したら、シナリオを作成する。これはWebにおける推奨の形があるわけではなく、そのサイトの業態ごとに訪問者をコンバージョン地点までどのように誘導するかが重要となる。

シナリオからサイト構造に落とし込んでいく際は、下記のポイントに注意を払うようにしたい。

ページに複数の主題を持たせない

ハブページにならないようにする

別フローからの流入がなるべくないようにする

ページに主題が複数あると、訪問者はそこで混乱してしまう可能性がある。また、ひとつのページにひとつの内容を設定しておくことで、Web解析で検証を行う際に、シナリオのミスを見つけやすくなる。

さらにひとつのページに複数の遷移先が存在している場合、セッションがバラバラになってしまう可能性がある。意図がないのであれば欲は出さずに、リンクはひとつに絞ったほうがよいだろう。

また、シナリオ以外のページからの流入がシナリオパス上に入ってきているとそれ以降のシナリオを分類していくことが難しくなる。できるだけ、ほかからのリンクがないようにシンプルなサイト構造をつくっていくことが望ましい。

ステップ4 シナリオをWeb解析ツールで検証する

実際にシナリオに合わせたサイト構造をつくり、運用を始めたら、あとはWeb解析ツールを利用しながら検証を行っていく。

こういったシナリオベースのWeb解析を行う場合は、パス(サイトフロー)分析を利用し、大まかなポイントを見定めながら、ほかの指標と組み合わせて問題個所の絞り込みを行っていく。

パス分析を行いながら、そのパス上において想定以外の個所へ遷移していたり、極端に離脱率が高くなっている部分を見つけ、その部分を検証していく。

ページが特定できればサイトオーバーレイ機能*1がある場合はそういった機能を利用すると、どこかもっともクリックされているかを視覚的に認識することができるだろう。極端に別のページへの遷移が高いページでこの機能を利用すると、想定していたリンクではない部分が数多くクリックされていることが見つかる場合もある。こういった場合、そこまでのシナリオは合っているものの、そこのページに設定した仮説がまちがっている可能性が高い。

*1 実際にサイト上のページを開いて、そのページ上 に各リンクのクリック数を表示する機能

ステップ5 シナリオにフィードバックする

シナリオを作成し、検証を行うことでシナリオの悪い部分が見えてくる。これをサイト構造にフィードバックして、また検証を行っていくというPDCAサイクルをつくっていくことで、サイトが最適化されていくことになる。

ある程度、シナリオが最適化されてきたら、別のセグメントのシナリオを行っていくとよいだろう。こうすることで、少しずつだが、サイト全体の最適化がされていく。


まとめ

今回はシナリオをベースとしたサイトを最適化していく方法を見ていった。実際に、シナリオをつくるところから始めると結構な手間がかかる。しかし、この作業を行っていくことで、実際の訪問者のニーズをきちんと考えることにもつながり、新しいアイデアにつながることも少なくない。

シナリオをつくることで、検証するためのアンカーができ、非常に検証ポイントを絞り込みやすくなる。ぜひ、シナリオを利用した検証を行って、よりサイトの最適化を行っていってもらいたい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年5-6 vol.15からの転載です


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