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Web解析ツールの実践的活用指南 第5回 離脱率でサイトを最適化する

2024.5.18 SAT

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Web解析ツールの実践的活用指南


全日空システム企画(株)  安西 敬介
文=
安西 敬介 全日空システム企画(株)
ANAのWebサイトのマーケティング・分析支援を行う



第5回
離脱率でサイトを最適化する


前回は直帰率を利用してサイトを最適化する方法について触れた。今回は、サイト内の漏れをなくすためのの離脱率を利用して、サイトを最適化していく方法に触れていきたい。


直帰率と混同しやすい指標

離脱率は直帰率と混同しやすい指標となっている。直帰率は「そのページを入り口として1ページしか参照せずにサイトから離れてしまった割合」を指すのに対し、離脱率は「サイト内で回遊したユーザーが最終的にそのページからサイトを離れた割合」を指している。実際に離脱率はページごとに下記の式で算出する。

離脱率=離脱数(そのページからサイトを離れた数)÷ページビュー数

離脱率はページごとに計算をし、高ければそこからサイトを離れていったユーザーが多いということになる。どちらもサイトから離れていったユーザーを対象としているため、混乱してしまうことが多いかもしれない。サイトの流入から目的までが水道管のようなイメージとすると、直帰率を利用して改善をしていくことは、水道管の入り口に漏れないように水を入れていくための方法と考えてよいだろう【1】。これに対して、離脱率を利用して改善をしていくことは、水道管の途中から漏れている水を、その個所を特定しながらふさいでいく作業に似ている。

【1】サイトの流入から目的までのユーザー動向を水道管をモチーフにして考えてみる
【1】サイトの流入から目的までのユーザー動向を水道管をモチーフにして考えてみる


離脱率を改善する場合、その方法は直帰率よりも難しい。これは対象のページで離脱したことが、まちがったものなのか、正しいものなのかを判断しにくいためだ。

Eコマースサイトの場合は、その目的が売り上げであることが明確である。つまり、サイト内でどのページが目的のページかが判断しやすい。そのため離脱率を利用したサイトの改善は行いやすい。

これに対し、コンテンツ系やサポート系のサイトでは、離脱が「目的を達成したためにセッションを終了した」のか「わかりにくかったためにほかのサイトへ移動した」のかを判断するのが難しい。そのためこのようなサイトの改善に離脱率を役立てることは困難となる。


改善に利用するポイント

今回は第1回や2回の連載でも例に挙げたダミーのECサイト「Sakulife」を例に、Eコマースサイトにおける離脱を見ていきたい。「Sakulife」は大きくふたつのパートにサイトが分かれる。サイトを回遊しながら購入する商品を選ぶパートと実際に購入する商品を手続きするための購買プロセスのパートである。

離脱率でサイトの最適化を考える際に、このようにサイト内をいくつかの目的に分けて考えていくと整理をしやすくなる。

購買プロセスでの改善

実際に「Sakulife」の購買プロセスのページは「1:選択したカートの中身の表示」「2:お客さま情報入力」「3:購入商品・入力内容確認」「4:購入完了」と画面を遷移することになる。ある期間の購買プロセスの離脱率を確認したところ【2】のような結果となった。

【2】ある期間の購買プロセスの離脱率
【2】ある期間の購買プロセスの離脱率


これを見ると4の「購入完了」が高いことがわかる。しかし、ここで「改善すべき項目は購入完了である」と早々に決めてしまわないほうがよい。実際には購入完了は目的を達成している画面であるため、ある程度高くなってしまうことはいたし方ないからだ。洋服を購入してから、あらためて店内を見直す人は多くはないだろう。

ここでは、その次に高い「お客さま情報入力」に注目するとよいだろう。実際、ユーザーに入力を促すような画面では、高い離脱になってしまうことも多い。

こういった入力がある画面では、情報を入力するためのユーザビリティが悪いために離脱をしてしまうことが多い。そのため、改善を行う際は「より簡単に」「わかりやすく」情報を入力できるようにしていくのがよいだろう。たとえば、入力の必須項目をきちんと明示することでエラー発生を抑えたり、入力を促す文言を変更するだけでも改善できる場合がある。

あとは改善の前と後の離脱率を計測し、改善対策の効果を測定していく。この際、複数の改善を一度に行ってしまうと、改善の結果が良かったとしても、どの改善策がその要因だったかがぼやけてしまうことが多い。効果の高い改善策をナレッジとしてためていくためにも、ある程度改善策を絞り込みながら、少しずつ対応していくのがよいだろう。

回遊系ページでの改善

回遊系ページのセクションでは、離脱率の改善への利用はもう少し難しくなってくる。サポートサイトと同じように、離脱していくことが良いことかどうかがわからない場合もあるからだ。こういうセクションでは離脱率が高いページを洗い出し、上位のページから順番にその要因を調べながら対策を打つページを決定していく。実際には、各ページの意味や、サイト内でのひとつ前のページを確認することから始まる。

商品の詳細といったページで離脱が多く出ている場合、その情報だけを取得して、別のサイトや店舗で購入してしまっている可能性もある。こういった場合は、いかに購買プロセスに結びつけるかが課題となってくる。「カートへ追加」のボタンをわかりやすくするなどの工夫ができるだろう。

また、プロモーションやキャンペーンのページの場合は、ある程度のシナリオを考えてサイトをつくっているはずだ。こういった場合は、離脱率が高いページとサイトのシナリオを照らし合わせることで、そのページの改善のポイントを判断していくことになるだろう。こういった場合は「内容がわかりにくい」「次へのアクションやリンクがわからない」などの原因が考えられるため、そういった部分を改善していくとよいだろう。

実際に「Sakulife」ではAページの離脱率が上位に昇っていた。このAページはキャンペーンの詳細説明ページであり、「リスティング広告流入」→「ランディングページ」→「キャンペーン詳細説明」→「キャンペーン申込み」というシナリオの中に組み込まれている。Web解析ツールでキャンペーンのフローを確認したところ【3】のようになった。

【3】あるキャンペーンの離脱率
【3】あるキャンペーンの離脱率


ほかのページの離脱率はそれほど高くなく、おおむねシナリオどおりに遷移していたため、Aページの改善のみを行うことにした。改善施策として、Aページのリンクボタンの位置や文言の見直しなどページの修整を行ったところ、離脱率を大幅に抑えることが可能となり、結果、キャンペーンの申し込みを増やすことにつながった。


まとめ

今回は離脱率からのサイト改善のアプローチについて考えた。直帰率に比べると、直感的でもなく、なかなか指標としてもわかりづらい部分もある離脱率。重要なのは、その値ではなく、改善した際の変化だ。うまく利用することで、サイトをより良い方法へ改善していく指標になると思うので、ぜひ活用してもらいたい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年3-4 vol.14からの転載です


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