アクセス解析ソフトにもう挫折しない!
Web解析ツールの実践的活用指南
文= 安西 敬介 オムニチュア株式会社 コンサルタント
url.www.omniture.com/jp/
第10回
マーケティングにWebを活用する
マーケティングをするにあたって自分たちの顧客を意識しなければならないことは、今更なことかもしれない。しかし、その意識の仕方はWeb以前と以後では大きく異なっている。今回はWeb解析ツールのデータを活用したマーケティングについて触れてみたい。
■■■
Webサイトで何かを行動することは、顧客からすれば「直接企業に触っている」感覚に近い。それは逆に企業側から見ても同じであり、Web解析ツールを通してサイトを見ることで、企業側からも「顧客が触っている感じ」をつかむことができる。
サイトの行動を集計し、どのような目的で訪問し、何を探し、どのような行動をしたかを知ることができるということは、マーケティングに大きな変化をもたらしているといえるだろう。
取得した行動に合わせたセグメントを簡単に分類することができるようになることで、その情報のマーケティングへの広がりは非常に大きなものとなってくる。
■Web解析ツールを通して何をセグメンテーションへ活用するか
Web解析ツールから取得できるものでセグメンテーションへ活用できるものは下記のふたつに大きく分けられる。
1:環境変数から取得できるデータ
2:サイト内の行動から取得できるデータ
環境変数の活用
Webサーバへアクセスする際にブラウザは「環境変数」というものを渡している。この環境変数にはブラウザのバージョン情報やIPアドレス、1ページ前に参照していたページのURL(リファラ情報)などが含まれる【1】。IPアドレスではおおよそのアクセス地域を特定することができる。これがわかれば、たとえば旅行サイトではアクセス地域を特定することによってより効果的なマーケティングオファーをすることができるだろう。
【1】Web解析ツールで利用される環境変数
リファラ情報はサーチエンジンからの流入の場合、「検索ワード」を抽出することができる。この「検索ワード」は訪問者がサイトに訪れた最初のニーズにほかならない。これをマーケティングに活用しない手はないだろう。キーワードによってランディングページのメッセージを変化させることで、より効果的にコンバージョンへ誘導することも可能になってくる。このように環境変数だけでもさまざまなデータを活用することができる。
サイト内の行動を詳細の活用
環境変数とは別に、Web解析ツールからはサイト内の行動を詳細に取得できる。これらのデータはサイトにおいて宝の山といってもよいだろう。環境変数がアクセスした訪問者の概要を知ることができるのに対し、サイト内の行動ではより詳細なデータや潜在的なニーズをつかむことができる。
ECサイトであれば「どのような商品をカートに追加しているのか?」といった情報も取得が可能である。Aという商品をカートに追加している人はほかにどのような商品を追加していることが多いかがわかれば、新たなプロモーションに活用することもできるだろう。
Web解析ツールによって取得できる情報は視点を変えれば山のようにある。その一例を列挙すると「コンバージョンへの到達可否」「サイトへの訪問回数」「サイトへの訪問間隔」「特定の商品の閲覧回数」などさまざまである。Web解析ツールで取得できる項目は、サイト訪問者の行動の結果でしかない。しかしながら、そこには工夫次第で数えられないほどのさまざまなマーケティングデータがあるといえるだろう。
また、最近ではサイト内で行ったフォームの入力データやアンケートの情報もサイト内行動と併せて集計し、セグメント情報として活用することができるものもある。このようなソリューションを併用することで、サイトの行動に定性的なデータを組み合わせた解析をすることが可能となってくる。
■セグメント情報の活用
このように取得された情報はどのように活用していくのがよいであろうか。ここには大きくふたつの方向性について触れてみたい。
マーケティングツールへの活用
もっともメジャーかつ明解なのがマーケティングツールへの活用だろう。そのなかでもわかりやすいのがサイト内でのプロモーションなどへの活用だ。サイト内で参照したページの内容に合わせてレコメンデーションする内容を変えていくことも可能である。
もうひとつ大きな武器となり得るのがメールでのリマーケティングだろう。Webで行えるマーケティングツールとしては唯一のプッシュ型の媒体であるメールを、より効果的に利用できるようになれば、その価値はかなり高いと言える。
やり方としては、サイト内での行動データを会員IDなどに基づき分析できるように設定をしておく。その後、集計されたデータをバックオフィスで保持している会員情報と付き合わせることによって、メールアドレスと付き合わせることが可能となる【2】。
【2】会員IDとの結びつけ。結びつけを会員IDなどで行うことによって、バックデータにあるメールアドレスとひも付け、あらたなアプローチへ活用する
あとは、先ほど紹介したさまざまな条件をもとにセグメント分類を行い、そのセグメントに合わせたメッセージを用意していくことで、サイトでの行動をベースにしたレコメンデーションメールを送ることができるようになる。
たとえばカートに商品を追加はしているものの、購入まで至っていない会員を抽出できれば、その商品の購入を強調したプッシュメールを送ることもできるだろう。すべてをシステムで連携し、セグメント条件をルール化できれば、一定の期間で自動的に抽出からメール配信を行うこともできるプロダクトもある。
また、最近では広告配信やCMSサーバとも連携できるものもある。これらをうまく組み合わせることができればより流入からサイト内部に至るまで、効果的なマーケティング活動ができるだろう。
顧客の行動データがデータ化され、それをいかに活用していくかが、これからのマーケティングツールに求められるものとなってくる。
マーケティング戦略への活用
さて、Web解析ツールで取得できるセグメントデータは何も直接的なマーケティング戦術だけではなく、マーケティング戦略にも十分に活用ができる。プッシュだけではない、もっと上位のレイヤーでの活用だ。
サイトで得られるさまざまなデータやバックオフィスでのデータをもとにセグメントを分類し、あらためてセグメントごとのサイトの行動を俯瞰することで、今まで見えなかったセグメントの特徴が見える場合は多い。
通常、企業が顧客のデータを分析をする場合、店舗へ訪問した、商品を購入したというデータがあったとしても、その途中にある行動が見えていない場合が多い。解析ツールを使うことで今までは購入された段階でしか企業側で見えていなかったものが、購入前の段階で、どのようなニーズを持っているか、いつごろ行動を始めるのかなどを知ることができるようになってくるわけだ。
「商品の情報を探しにきた人は、どのような機能を利用しているのか?」「最初に訪問してから何日で購入まで至るのか?」「購入まで至った人はサイト内のどのような経路をたどることが多いのか?」などを知ることができるようになる。
今まで感覚や推測で行っていた部分の情報が、実際のデータとして知ることができれば、それによってマーケティング戦略の取り方も自然と変わってくる。場合によっては企業全体の舵の取り方にも影響してくる情報である。
このように取得されたセグメント情報をうまく分析できれば、戦術としてのマーケティングだけではなく、戦略としてのマーケティングにも十分にインパクトがあることといえよう【3】。
【3】解析ツールのふたつの活用
■まとめ
今回はWeb解析ツールを利用したリマーケティングについて触れた。どこまでできるかはソリューションやサイトのつくりなどによっても大きく変わってくる。ツールの組み合わせや活用方法についても、今後はどんどんWebマーケターとして必要になってくるスキルといえる。ぜひ、参考にして今後のマーケティング活動に役立てていただきたい。
本記事は『Web STRATEGY』2009年3-4 vol.20からの転載です
Web解析ツールの実践的活用指南
文= 安西 敬介 オムニチュア株式会社 コンサルタント
url.www.omniture.com/jp/
第10回
マーケティングにWebを活用する
マーケティングをするにあたって自分たちの顧客を意識しなければならないことは、今更なことかもしれない。しかし、その意識の仕方はWeb以前と以後では大きく異なっている。今回はWeb解析ツールのデータを活用したマーケティングについて触れてみたい。
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Webサイトで何かを行動することは、顧客からすれば「直接企業に触っている」感覚に近い。それは逆に企業側から見ても同じであり、Web解析ツールを通してサイトを見ることで、企業側からも「顧客が触っている感じ」をつかむことができる。
サイトの行動を集計し、どのような目的で訪問し、何を探し、どのような行動をしたかを知ることができるということは、マーケティングに大きな変化をもたらしているといえるだろう。
取得した行動に合わせたセグメントを簡単に分類することができるようになることで、その情報のマーケティングへの広がりは非常に大きなものとなってくる。
■Web解析ツールを通して何をセグメンテーションへ活用するか
Web解析ツールから取得できるものでセグメンテーションへ活用できるものは下記のふたつに大きく分けられる。
1:環境変数から取得できるデータ
2:サイト内の行動から取得できるデータ
環境変数の活用
Webサーバへアクセスする際にブラウザは「環境変数」というものを渡している。この環境変数にはブラウザのバージョン情報やIPアドレス、1ページ前に参照していたページのURL(リファラ情報)などが含まれる【1】。IPアドレスではおおよそのアクセス地域を特定することができる。これがわかれば、たとえば旅行サイトではアクセス地域を特定することによってより効果的なマーケティングオファーをすることができるだろう。
【1】Web解析ツールで利用される環境変数
リファラ情報はサーチエンジンからの流入の場合、「検索ワード」を抽出することができる。この「検索ワード」は訪問者がサイトに訪れた最初のニーズにほかならない。これをマーケティングに活用しない手はないだろう。キーワードによってランディングページのメッセージを変化させることで、より効果的にコンバージョンへ誘導することも可能になってくる。このように環境変数だけでもさまざまなデータを活用することができる。
サイト内の行動を詳細の活用
環境変数とは別に、Web解析ツールからはサイト内の行動を詳細に取得できる。これらのデータはサイトにおいて宝の山といってもよいだろう。環境変数がアクセスした訪問者の概要を知ることができるのに対し、サイト内の行動ではより詳細なデータや潜在的なニーズをつかむことができる。
ECサイトであれば「どのような商品をカートに追加しているのか?」といった情報も取得が可能である。Aという商品をカートに追加している人はほかにどのような商品を追加していることが多いかがわかれば、新たなプロモーションに活用することもできるだろう。
Web解析ツールによって取得できる情報は視点を変えれば山のようにある。その一例を列挙すると「コンバージョンへの到達可否」「サイトへの訪問回数」「サイトへの訪問間隔」「特定の商品の閲覧回数」などさまざまである。Web解析ツールで取得できる項目は、サイト訪問者の行動の結果でしかない。しかしながら、そこには工夫次第で数えられないほどのさまざまなマーケティングデータがあるといえるだろう。
また、最近ではサイト内で行ったフォームの入力データやアンケートの情報もサイト内行動と併せて集計し、セグメント情報として活用することができるものもある。このようなソリューションを併用することで、サイトの行動に定性的なデータを組み合わせた解析をすることが可能となってくる。
■セグメント情報の活用
このように取得された情報はどのように活用していくのがよいであろうか。ここには大きくふたつの方向性について触れてみたい。
マーケティングツールへの活用
もっともメジャーかつ明解なのがマーケティングツールへの活用だろう。そのなかでもわかりやすいのがサイト内でのプロモーションなどへの活用だ。サイト内で参照したページの内容に合わせてレコメンデーションする内容を変えていくことも可能である。
もうひとつ大きな武器となり得るのがメールでのリマーケティングだろう。Webで行えるマーケティングツールとしては唯一のプッシュ型の媒体であるメールを、より効果的に利用できるようになれば、その価値はかなり高いと言える。
やり方としては、サイト内での行動データを会員IDなどに基づき分析できるように設定をしておく。その後、集計されたデータをバックオフィスで保持している会員情報と付き合わせることによって、メールアドレスと付き合わせることが可能となる【2】。
【2】会員IDとの結びつけ。結びつけを会員IDなどで行うことによって、バックデータにあるメールアドレスとひも付け、あらたなアプローチへ活用する
あとは、先ほど紹介したさまざまな条件をもとにセグメント分類を行い、そのセグメントに合わせたメッセージを用意していくことで、サイトでの行動をベースにしたレコメンデーションメールを送ることができるようになる。
たとえばカートに商品を追加はしているものの、購入まで至っていない会員を抽出できれば、その商品の購入を強調したプッシュメールを送ることもできるだろう。すべてをシステムで連携し、セグメント条件をルール化できれば、一定の期間で自動的に抽出からメール配信を行うこともできるプロダクトもある。
また、最近では広告配信やCMSサーバとも連携できるものもある。これらをうまく組み合わせることができればより流入からサイト内部に至るまで、効果的なマーケティング活動ができるだろう。
顧客の行動データがデータ化され、それをいかに活用していくかが、これからのマーケティングツールに求められるものとなってくる。
マーケティング戦略への活用
さて、Web解析ツールで取得できるセグメントデータは何も直接的なマーケティング戦術だけではなく、マーケティング戦略にも十分に活用ができる。プッシュだけではない、もっと上位のレイヤーでの活用だ。
サイトで得られるさまざまなデータやバックオフィスでのデータをもとにセグメントを分類し、あらためてセグメントごとのサイトの行動を俯瞰することで、今まで見えなかったセグメントの特徴が見える場合は多い。
通常、企業が顧客のデータを分析をする場合、店舗へ訪問した、商品を購入したというデータがあったとしても、その途中にある行動が見えていない場合が多い。解析ツールを使うことで今までは購入された段階でしか企業側で見えていなかったものが、購入前の段階で、どのようなニーズを持っているか、いつごろ行動を始めるのかなどを知ることができるようになってくるわけだ。
「商品の情報を探しにきた人は、どのような機能を利用しているのか?」「最初に訪問してから何日で購入まで至るのか?」「購入まで至った人はサイト内のどのような経路をたどることが多いのか?」などを知ることができるようになる。
今まで感覚や推測で行っていた部分の情報が、実際のデータとして知ることができれば、それによってマーケティング戦略の取り方も自然と変わってくる。場合によっては企業全体の舵の取り方にも影響してくる情報である。
このように取得されたセグメント情報をうまく分析できれば、戦術としてのマーケティングだけではなく、戦略としてのマーケティングにも十分にインパクトがあることといえよう【3】。
【3】解析ツールのふたつの活用
■まとめ
今回はWeb解析ツールを利用したリマーケティングについて触れた。どこまでできるかはソリューションやサイトのつくりなどによっても大きく変わってくる。ツールの組み合わせや活用方法についても、今後はどんどんWebマーケターとして必要になってくるスキルといえる。ぜひ、参考にして今後のマーケティング活動に役立てていただきたい。
本記事は『Web STRATEGY』2009年3-4 vol.20からの転載です