第3回 モバイルサイトのコンテンツプランニングのコツ - モバイルマーケティング実践Hacks | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第3回 モバイルサイトのコンテンツプランニングのコツ - モバイルマーケティング実践Hacks

2024.5.12 SUN

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
ケータイコンテンツの企画・制作から、ビジネス活用まで
モバイルマーケティング実践Hacks

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営企画・文=中谷健一(写真左)
トリムタブJAPAN(有)代表取締役
モバイルマーケティングコンサルタント
url.www.trimtab.jp/

企画・文=吉田悟美一(写真右)
(株)イオス代表取締役社長
モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』開発・提供。
「ケータイ小説がウケる理由」(毎日コミュニケーションズ新書)
url.www.e-o-s.net/



第3回
モバイルサイトのコンテンツプランニングのコツ


モバイルサイトの重要性は十分理解した。モバイルサイトのプロジェクトも立ち上げた。メンバーはもちろん、上司とも調整し、ゴール目標を短期・中長期のふたつを掲げた。マイルストーンを設定して、最初はASPでサイト構築することも決めた。ところが肝心なことを抜け落としていることに気がついた。「このモバイルサイトに、どんなコンテンツを用意すればよかったんだっけ?」。高い理想や目的があっても、それを実現させるためのコンテンツがなくては絶対にサイトは立ち上がらない。今回は、モバイルマーケティングサイトのコンテンツ企画のHacksだ。

■■■
「モバイルサイトのコンテンツ企画」と言われても、いまひとつピンと来ないかもしれない。特にあまりケータイサイトを利用していない人は、なぜモバイル専用のコンテンツを準備する必要があるのかと疑問を感じるようだ。逆にケータイサイトをよく利用している人は、「モバイルにはモバイルのコンテンツが必要だ」とあっさりと納得する。その感覚の違いはどこにあるのだろうか? よくある疑問に答える形で整理しておこう。

よくある疑問1
PCサイトのコンテンツを、そのままモバイルで見られるようにすればいいのでは? 最近はフル・ブラウザを搭載している携帯端末も増えているようだが

PCサイトのコンテンツを転用するというアイデアは悪くないが、モバイルをマーケティングに積極活用したいのなら、お勧めはしない。使われ方がまったく異なるからだ。例を挙げると、モバイルサイトは暇つぶし利用が多い、自分のモバイルメールアドレスを覚えていない人が多い(空メール送信で代用される)など。使われ方が異ればコンテンツのつくり方も変わる。

また、多くの携帯端末にフル・ブラウザが搭載されているが、PCのようにサクサクと利用できるわけではない。通信速度や画面サイズなど、さまざまな面でまだまだ使いづらい代物だ。モバイルサイトのユーザーに最適化されたコンテンツとサイトが必要なのだ。

よくある疑問2
モバイルサイトの利用パターンは、どういう導線がメインになるのか? 検索サイトユーザーが増えたというが、PCのように利用されているのか?

サイトの利用パターンは、モバイルとPCでは大きな差がある。モバイルで

(1)サイトを検索エンジンから検索
(2)結果一覧からサイトをクリック
(3)サイトから情報やサービスを利用

……と利用しようとすると、(2)のあたりでつまずいてしまう。モバイルサイトの数が少なく、お目当ての情報やサービスを提供しているところにたどり着くことができないのだ。結局(PCサイトの黎明期のように)気に入ったサイトをあらかじめブックマークしたり、メールマガジン登録しておいて、暇があるときにサイトを訪問するという利用スタイルになる。サイト運営者側から言はSEOやSEMへの配慮はもちろん、メールマガジンの登録やブックマークを促す施策もしっかりと手を打っておかなくてはならない【1】。特にメールマガジンはサイト利用のアクションをつくるうえでも、サイトをブランディングするうえでも重要な利用導線だ。

【1】サイトに訪問者をリピート訪問させるためのコンテンツ企画がポイント。コンテンツの頻繁な更新やメルマガ発行が一般的な戦術だ。ゴール到達した顧客をリピート顧客化する導線も大切
【1】サイトに訪問者をリピート訪問させるためのコンテンツ企画がポイント。コンテンツの頻繁な更新やメルマガ発行が一般的な戦術だ。ゴール到達した顧客をリピート顧客化する導線も大切


よくある疑問3
モバイルサイトではどんな表現ができるのか? 小さな画像と質素な文字しか表示できないという印象がぬぐえないのだが

ケータイ端末に搭載されているブラウザの機能進化は目覚ましく、この数年内に発売された端末ではかなりのリッチ表現が可能となっている。一部の輸入端末を除けば、かなりファイルサイズの大きな画像が扱えるようになっているし、Flashファイルの再生は当たり前。ブランドの雰囲気を伝えるモバイルサイトは実現不可能ではない。

しかし、これまで適当な制作ツールやASPが充実していなかったため、それを実現させる手間がかかったのだ。廉価で高機能なツールの登場によって、この状況は大きく変わる。今後はもっと豊かなモバイルサイトが増えるだろう。


Q1→
とりあえず、自社の顧客がモバイルサイトをどのように利用してくれるのか
反応を確認したい。どんなサイト企画を組めばよいだろうか?


A1←
モバイルキャンペーンのASPを利用して、プレゼント&アンケートキャンペーンを
実施してみよう。調査とシミュレーション、OJTの一石三鳥を狙うことができる


わからないことをお客に聞くというスタンスでスタートしよう
プロジェクト立ち上げの段階でモバイルサイトに詳しいメンバーがいたらラッキー。ほとんどの場合、担当になった人がそれを機にしてサイトチェックを始めるという状況だ。心配ご無用。1~2週間も没頭すればかなりの「モバイル通」になれる。しかし他サイトを知れば知るほど、自社サイトをどう企画すればよいのかがわからなくなってくるようだ。

モバイルサイトはPCサイトと比較すると、かなりカジュアルにつくられているため、「コレが定型」というスタイルがない。その事実がわかってくるに従って、どこをベンチマークしてつくればよいのかと、不安になるのだ。そんな状態のままメンバーが集まってディスカッションしても、「私はこのサイトが好き」とか「このサイトのこの企画が気に入った」とかいうレベルがせいぜいだろう。お客が喜ぶコンテンツ企画へと昇華させるには、時間がかかりそうだ。

そこで、連載第1回で紹介したハック(Mobile Marketing Hakcs 3)を、もう一度紹介させていただきたい。1週間や2週間で名案なんかひねり出せるわけがないと開き直って、お客に聞くのである。しかもお客の声を聞く手段としてモバイルを使うのだ。今回は少し詳しく手順を紹介しよう。

キャンペーン用ASPを利用すれば
数十万円の予算でかなりのことがわかる

自社の顧客にモバイルサイトにアクセスするよう依頼できる場合にだけ使える方法だが、全体の段取りは非常にシンプルだ。

キャンペーン用モバイルサイト構築ASPと契約し、アンケート回答用サイトをつくる

・アンケートサイト構築
・空メールによるメールアドレス登録
・メール一斉配信

以上の機能が揃えば十分だ。

※3カ月間の利用(アンケートサイト構築やメール送信なども)を含めて、約20万円程度で構築可能

アンケートサイトで聞く内容は……

・モバイルサイトの利用実態
・モバイルで欲しい情報やサービス
・自社へのご意見・ご要望
・簡単な顧客属性調査

フリーコメントを1~2問に、全15問程度までに設計するとよい。

アンケートサイトにアクセスするためのQRコードを印刷したチラシまたはレターを顧客に配布して、ケータイからの回答を依頼する

※店舗などでの待ち時間に参加を勧めるなどできればベター

応募期間は2週間~1カ月程度がよい

「抽選でプレゼントが当たる」キャンペーンとして仕立てて、回答率をアップさせる

※全体の規模にもよるが、プレゼント総予算10万~20万円程度、20~50名程度の当選者数を設定すると応募者数が増えるようだ

「当選者には、あとでケータイメールでお知らせする」としておく。最初のアンケートで聞くべき個人情報をメールアドレスだけにするためである。無駄な個人情報は聞かないほうがよい

回答を締め切ったら、定量データを分析し、集まった定性コメントをプロジェクトチームに持ち帰って検討する

キャンペーン用サイト構築ASPを利用すれば、ワンストップで上記のことが実施可能だ。アンケート回答の集計がすんだ時点で以下のことがわかる。

・自社顧客への案内数(チラシやレターの配布数)に対する、サイトアクセス者数の割合
・顧客のモバイル利用動向
・モバイルサービスへのリクエスト
・ご意見・ご要望のコメント
・モバイルアンケートに
・参加してくれた方の属性
・顧客の属性ごとの傾向
・ASPにアクセス解析機能があれば、どんな機種からのアクセスがいちばん多かったかなどの分析

コンサル会社や調査会社に任せずに自力でやり切れば、費用総予算約30万~50万円程度で、これだけの材料を手にすることができる。サイトの企画やコンテンツに関するディスカッションの方向性は、迷走することなく、おのずと見えてくるだろう。なにしろ顧客の声が手元にあるのだから。しかも、アンケートサイト構築などの作業を通じて、メンバーはモバイルサイトの設計やメール送信の手順など、基本作業を学ぶことができる。

調査会社のモニターを利用するのではなく、自社のリアルな顧客に調査しているため、本番のモバイルサイトを立ち上げたときにどれくらいの利用や反応を見込めるか、おおよその目安もつけられるようになる。よほどの理由がない限り、このテスト調査は実施しないほうが損だ。


Mobile Marketing Hacks
サービス開発の前にモバイルアンケートASPで自社顧客にアンケートをする




Q2→
マーケティングサイトとは、どんな企画バリエーションがあるのか?

A2←
大きく分けて、4つ。
事業サイト、販促サイト、付加価値サービスサイト、対話・調査サイト


サイトの目指すゴールを絞り込めば
コンテンツの要・不要が見えてくる

マーケティング目的別にモバイルサイトの企画を分類すると、サイトが直接収益を生む「事業サイト」、既存ビジネスの販売促進のために開設される「販促サイト」、既存ビジネスに便利な機能を提供する「付加価値サービスサイト」、顧客との対話・意見聴取を目的に開設される「対話・調査サイト」の4つに大分できる【2】。

【2】この分類を参考に、立ち上げ当初は目指す提供機能を絞り込んでおくとよい
【2】この分類を参考に、立ち上げ当初は目指す提供機能を絞り込んでおくとよい


これらの企画を複合させるサイトも考えられるが、立ち上げ当初は目指すゴール(企画の目的)を絞り込んでおくのがよい。あるいは優先順位を明示しておく。ひとつ、またひとつ、と目的達成を味わいながらサイト運営するほうが、メンバーのモチベーションも、経営からの心証も上がるというものだ。また、個別のコンテンツ企画で迷ったとき、そもそもこのサイトはどういう目的を達成しなくてはならないのか、と戻れる場所があると、要・不要や、力を注ぐべきポイントがおのずと見えてくるようになる。


Mobile Marketing Hacks
事業、販促、付加価値サービス、対話・調査のいずれの目的のサイトなのかを自覚する




Mobile Marketing Hacks
サイトが目指す企画目的を絞り込み、ひとつひとつ達成していく




Q3→
モバイルサイトのコンテンツ企画を考えるときに、
「これはポイント」というコツがあれば教えてほしい


A3←
「その企画はユーザーに楽しさを提供しているか?」と、つねに問いかける

モバイルサイトのコンテンツは、メールもサイトも「暇つぶし」が基本のスタイルだ。そこにどんなにすばらしくて役に立つことが書いてあったとしても、最初に目に飛び込む画面から「わくわく・どきどき」や「お得感」が感じられなければ、ほとんどのユーザーに読み飛ばされてしまう運命にある。

「毎度毎度、わくわくすることやお得なネタばかり出せるわけがない」と思うかもしれないが、大切なのは材料や予算の有無ではなく、ユーザーを楽しませようというサービス精神の有無だ。サイトのタイトル、コーナーの企画、文章の言葉遣いなどからユーザーは敏感に感じ取って反応してくれる。できない理由を並べる時間があるなら、いまある材料をどのようにしたら楽しそうに見えるのか、を考えよう【3】。

【3】サイトの目的に合うコンテンツの具体的な例を紹介。立ち上げる際の参考にしてほしい
【3】サイトの目的に合うコンテンツの具体的な例を紹介。立ち上げる際の参考にしてほしい



Mobile Marketing Hacks
コンテンツ企画はつねに「ユーザーを楽しませる」ことを念頭に




Q4→
PCでの通販サイトを運営している。これからモバイルでの展開を予定しているのだが、ECでもモバイル専用のコンテンツ企画が必要なのだろうか?

A4←
PCとモバイルではモノの売れ方も異なる。モバイルにはモバイル用の企画がベター

モバイルECは物語で売る
モバイルサイトはPCサイトとまるで異なる使い方がされると先に書いたが、それはECサイトにも当てはまる。たとえばPC用のECサイトでは価格や商品の「比較」が重要なウエイトを占めるが、複数のウインドウを立ち上げられず、暇つぶしユーザーがほとんどのモバイル通販では「いかにユーザーにアピールして、その場で購入まで誘えるか」がポイントになる。

紹介する商品は絞り込まれていたほうがいいし、ひとつの商品について「つい買いたくなる」物語が語られていなくてはならない。同じECサイトでもPCとモバイルではお客との間合いの取り方が異なるのだ(むしろ、テレビショッピングの売り方にそっくりだ)。逆に言えば、ある程度モバイルでショップ運営してみれば、コンテンツを差し替えたほうが売り上げが伸びることに気づくだろう。


Mobile Marketing Hacks
モバイルECでは「物語で商品を売る」コンテンツ企画が重要になる




本記事は『Web STRATEGY』2008年1-2 vol.13からの転載です
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