第4回 モバイル販促活用のススメ - モバイルマーケティング実践Hacks | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4回 モバイル販促活用のススメ - モバイルマーケティング実践Hacks

2024.5.12 SUN

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ケータイコンテンツの企画・制作から、ビジネス活用まで
モバイルマーケティング実践Hacks

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営企画・文=中谷健一(写真左)
トリムタブJAPAN(有)代表取締役
モバイルマーケティングコンサルタント
url.www.trimtab.jp/

企画・文=吉田悟美一(写真右)
(株)イオス代表取締役社長
モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』開発・提供。
「ケータイ小説がウケる理由」(毎日コミュニケーションズ新書)
url.www.e-o-s.net/



第4回
短期キャンペーンだけじゃない
「製品からの販促」で変わる、モバイル販促活用のススメ


前回までは、モバイルサイト開発のプロジェクト構築、いわば「イントロ」部分のHacksを紹介してきた。参考になっているとうれしいのだが、どうだろう? 今回からはさらに実践的なHacksを提供していこうと思う。より具体的な内容を伝えるために、サイトの企画タイプを絞って話を進めていきたい。新しいステージのスタートは、もっとも利用ニーズの多いテーマから「モバイル販促」企画をピックアップ。ユニークな「製品からの誘導・販促」のHacksを紹介する。


Q1→
モバイルはプレゼントキャンペーンや来店誘導など、
短期的なマーケティングにしか利用できないのでは?


A1←
製品マニュアルやカスタマーサポートなど、モバイルの特性を生かせばアイデア次第で、長期的なマーケティングにも活用できる。

商品パッケージをお客さまとの対話窓口に仕立て上げる
日本マクドナルドでは、商品パッケージやトレーペーパーにQRコードを印刷。それぞれの商品に対応したモバイルページをつくり、カロリーや栄養、アレルギー情報など、利用者が気になる情報を提供している【1】。販促というよりは顧客サービスの一環といえる取り組みだが、情報が開示されることで安心感や信頼感を生む効果が期待でき、モバイルサイトの認知が促進される。またお客さまとの対話の入り口として活用していくこともできるという点で、販促利用の好例といえるだろう。

【1】日本マクドナルドのQRコードの使い方のページ(www.mcdonalds.co.jp/quality/qrcode/qrcode.html)
【1】日本マクドナルドのQRコードの使い方のページ(www.mcdonalds.co.jp/quality/qrcode/qrcode.html


QRコードひとつあれば、簡単にモバイルの世界へ誘導することができる。「デザインQR」など、パッケージのイメージと連動してよりアテンション力の強いQRコードも登場している【2】。製品のパッケージの印字面に収められない情報発信ができ、しかも情報をリアルタイム更新できる。商品購入の瞬間からパッケージを廃棄するまでの間、手近に携帯電話がないという顧客はむしろ少ないだろう。商品の情報や活用法、あるいは製品にまつわる世界観を刷り込むのに活用すべきだ【3】。

【2】デザインQRを作成する業者も登場している。画像は(株)IT DeSignのサイト(d-qr.net/)
【2】デザインQRを作成する業者も登場している。画像は(株)IT DeSignのサイト(d-qr.net/

【3】製品パッケージからの販促動線のモデル
【3】製品パッケージからの販促動線のモデル


忘れてならないのは、モバイル端末が個人にとってのコミュニケーションの中心であるということ。ユーザーに近い目線でアプローチすれば、短時間に顧客との距離感を縮め、親密度を高めることができる。製品や企業のブランディングに効果を期待できるのだ。モバイルを通じた対話の習慣をつくっておくことで、スポットで販促キャンペーンを行うときの効果もアップすることになる。

蛇足ながら、一度サイト構築の環境を整えてしまえば、次からはほとんど追加のコストがかからない。製品や製品パッケージはいずれにせよ印刷するのだから、原稿(QRコード)の差し替えとサイト更新のコストだけで製品の販売数と同じだけのフライヤー(チラシ)を配布できるということになる。食品、飲料、コスメ、書籍など、携帯電話の近くで利用されるパッケージ製品ではもっとモバイルが活用されていい。

POINT
・商品パッケージ+QRコードでモバイルへの入り口をつくる
・リアルタイム情報、付加情報や世界観を伝えられる
・ユーザー視点のアプローチで短期間に親密度をアップ
・施策コストが安く抑えられる


動画製品マニュアルで顧客満足度をアップする
「販促」の話題からは少々脱線するが、製品とQRコードで顧客満足をアップさせるモバイルの活用法をひとつ提案したい。製品の操作説明やマニュアル、関連商品のカタログをモバイルサイト化するのだ。顧客は携帯電話から、いつでもどこでも利用できる。アウトドアでも、暗い場所でも、必要なときに取り出せる「究極のマニュアル」だ。企業側には構築とサイト運用コストが発生するが、印刷や配送のコスト削減が期待でき、しかも製品出荷後でも情報アップデートができるというメリットがある。

全部そっくりモバイル化しなくても、たとえば紙と連動させてユーザビリティ向上を図るというハイブリッド利用も有効だ。紙で簡単に説明し、複雑な操作方法や製品の組み立て方法をモバイル動画やフラッシュで見せるのだ。すでに携帯電話が大画面化し、通信速度もアップしたことにより、見る側のストレスは格段に下がっている。ビデオ動画の活用もすでに実現可能な状態になった。

Webの仕組みを使っているので、関連商品やオプションパーツなどの紹介や通信販売、メンテナンスやアフターフォローなどのサービス窓口への誘導も容易だ。ユーザーからの問い合わせが多い内容を随時FAQに取り込み、更新していくようなサービスは今後増えていくだろう。顧客満足度が高まった結果、顧客がファンとなり、その口コミによって利用が増えるのが本来の「口コミマーケティング」だ。高関与商品など、一見モバイルとは縁がなさそうな商品の販促にも活用できるだろう。

POINT
・マニュアルのインターフェイスにモバイルを活用する
・動画やインタラクティブ性を活用する
・製品登録、アフターフォローの窓口につなぐ
・顧客満足度アップからのファンづくり、口コミ
・高関与商材のマーケティングにモバイルが有効



Mobile Marketing Hacks
製品購入者をモバイルへ誘導することで、既存顧客に効果的な販促ができる




Q2→
製品やパッケージにQRコードを印刷するだけでモバイルサイトに誘導できるのか?
また、サイト利用者にはどのようなマーケティングアプローチが効果的か?


A2←
モバイルサイト利用を促すインセンティブや楽しみは確かに必要だ。
利用者へのアプローチはメールが定石。メール配信のパーミッションを獲得しよう


製品からモバイルへ誘導するインセンティブの設計
製品やパッケージにQRコードが印刷されていれば、ほとんどの顧客はそれがモバイルへの入り口だと理解する。その点、QRコードは非常に便利な存在だ。しかし、読み取ったあとにどんなアクションが待ち受けているのかがわからなければ不安を感じるだろうし(ユーザビリティの問題)、たとえ説明があったとしても「お客さまアンケートにご協力ください」といった内容ではアクセスの動機としては弱い(インセンティブの問題)。また、その後の利用者へのアプローチまで考えれば、最低限、企業側からのメール送付の許諾はとっておきたいところだ。

顧客が「アクセスしてみよう」と感じるような説明とインセンティブを用意できるか? アクセスした顧客に「繰り返し利用しよう」「メールでのお知らせを受け取ろう」と感じてもらえるコンテンツが提供できるかがポイントとなる。賞品を用意し、上記一連の課題を商品応募という形で解決することも可能だ。しかし賞品の用意、発送にかかる手続きや、抽選・発送の手間を考えると、中長期的な施策としてはちょっと荷が重いかもしれない。特に個人情報の取り扱いには多くの企業が神経をとがらせている。賞品発送には個人情報取得のリスクがつきまとう。

お勧めしたいのはコストと手間のかからないプレゼント、つまり限定情報の提供だ。顧客がそのQRコードを目の前にしているとき、「知りたい」と思うであろう情報をモバイルから提供できれば企業も顧客もWin-Winになれる。日本マクドナルドが包装紙や店内紙トレーから、カロリーや食の安全に関する情報をフックにして顧客をモバイルサイトに誘導しているように、商品やパッケージを目の前にしている顧客に、何か有益な情報を提供できるのではないだろうか? と考えてみよう。

購入者の5%が来訪、3%がメール許諾
ファンの囲い込みに成功した出版社

出版社の大和書房では07年夏から「ホントに本が大好き!クラブ」という読者向けモバイルサイトを運営し、出版するすべての書籍のカバーや帯にアクセスQRコードを印刷している【4】。書籍読了後の感動が冷めないうちにモバイルサイトへ誘導。コミュニティ機能を提供し、感想投稿やメールマガジン登録を募るというモデルだ。このうち、昨年末から一部の書籍で実施している取り組みが効果を上げているという。書籍の著者に協力してもらい、モバイルサイトにアクセスした人だけ読むことのできるボーナスコンテンツを用意。携帯メールを介して特別サイトのURLを提供するという方法で読者をモバイルサイトに導いた。

【4】「ホントに本が大好き! クラブ」(daiwashobo.mobi/)








【4】「ホントに本が大好き! クラブ」(daiwashobo.mobi/


漫画「ドラゴン桜」で知られる漫画家・三田紀房氏によるビジネス書『汗をかかずにトップを奪え!』のケースでは、書籍発売から約2カ月で印刷部数の約5%にあたる数の読者がサイトにアクセスしてコンテンツを閲覧【5】【6】。その約6割(総部数の約3%)が、次回作品の案内をメールで受けてよいというパーミッションを与えているという。感想コメントも多く寄せられており、読了後の感動が冷めないうちにサイト来訪につながっているようだ。書籍の売り上げは順調で、数字は現在も伸びている。今後はこれらファン読者にメールを活用した告知・販促を予定しており、その効果に大きな期待がかかる。

【5】『汗をかかずにトップを奪え!』(三田紀房/大和書房)










【5】『汗をかかずにトップを奪え!』(三田紀房/大和書房)

【6】【5】で使われたQRコードの入ったフライヤー










【6】【5】で使われたQRコードの入ったフライヤー


書籍の場合、それ自体がコンテンツ商品であるため「もっと読みたい」という心理が働く。ベンチマーク事例とするには特殊な事例だと考える人も多いだろう。しかしすぐれた消費財には熱心なファンがいることは「@コスメ」などCGMサイトの盛り上がりからも明らかだ。製品の近くには必ずモバイルがあるというメディアのユニークさを生かす販促施策ととらえれば、参考にできる点は多いのではないだろうか。

商品に愛着や共感を感じてくれているファン顧客を大切にする姿勢を企業が表明する、顧客限定の情報や便利な活用方法(まさに「Hacks」だ!)を提供する、という手法は優良顧客向けの販促として昔ながらのやり方だ。ただ、マスメディアには向かないし、印刷物を使うのではコミュニケーションコストの見合う商品が限られる。PCインターネットでは製品とコミュニケーション空間の接触ロスが大きい。いつも身近にあるモバイルインターネットだからこそ、企業も顧客もWin-Winになれるのだ。


Mobile Marketing Hacks
ファン顧客に優先して話題提供し、そのためのメール配信導線をつくる。
中長期的な販促インフラとなる




製品のQRコードからモバイルサイトに誘導する施策のHacks集

1.QRコードに書き込むURLにはリダイレクトページを設定する
製品と一緒に出回るURLは最低でも数年間は固定されていなくてはならない。ソリューションの変更などの不測の事態に備え、QRコードに記載されるURLは自社管理のドメイン(サーバ)配下のリダイレクト設定のかかったページにしておく。

こうすることで、表示コンテンツを変更したり、利用するソリューションを変更する場合も柔軟な対応ができる。また、誘導チャネルによる導入数の把握など、アクセス分析が容易になる。

2.限定コンテンツはメールで配信。メールアドレスを登録させ、将来のメール配信パーミッションを取っておく
限定コンテンツは、顧客のメールアドレスと交換で提供する仕組みをつくる。具体的には企業が顧客に送るメール(に記載されたURL)から、限定コンテンツにアクセスするシステムを構築する。

空メールによるメールマガジン登録のASPを利用して、以下のような手順を組むことができる。安価に「特別コンテンツ提供システム」を構築することが可能だ。

①QRコードから案内ページに誘導
② 案内ページから空メールを送信させる(自動返信メールを受け取ることができるよう設定してもらう)
③ 自動返信メール記載のURLをクリックさせる
④ クリックした先のページで今後のメール配信のパーミッションや、必要に応じて顧客のプロフィールを尋ねる(メルマガなどのパーミッションを獲得するときは、それぞれ別にパーミッションを取る)
⑤ 設定完了後に、限定コンテンツを提供するページへのリンクを表示する


3.一般サイトではモバイルフィルタリングへの対応が必要
報道されているように、モバイル通信の監督官庁(総務省)の要請により、未成年のモバイルサイトへの利用を規制する「携帯フィルタリング」の制度が2月から全携帯キャリアで導入された。

青少年を有害なモバイルサイトから保護することを目的とし、親権者が「フィルタリングは不要」と表明しない限り、原則的に一般サイトへのアクセスが制限されるというものだ。特に利用者参加型のコミュニティ機能をもったサイトは公式サイトであっても制限を受けるという。

2月現在は新規契約者のみが対象だが、夏までに既存契約者についても規制対象となる。規制の内容や運用方法などの詳細は春ごろまでに詰められる予定だという。「非常に残念」と言わざるを得ないが、若年層をターゲットにしたモバイルサイトの企画は、この規制内容の決定が出るまで凍結するのが賢明だろう。


本記事は『Web STRATEGY』2008年3-4 vol.14からの転載です




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