今回は映画 『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』のポスターのフォントを紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例で紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
作品の持つキュートな魅力をストレートに表現
愛する妻が自分のことを知らないパラレルワールドに迷い込んだ男性を描いた、フランス発のファンタジック・ラブストーリー『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』。2021年5月7日(金)より全国順次公開予定。人気SF作家のラファエルと小さなピアノ教室を運営するオリヴィアは、高校時代に出会って一目ぼれから結婚した夫婦。
しかし名声を得て多忙なラファエルとピアニストになる夢を諦めたオリヴィアは、すれ違いの毎日が続いていた。そんなある日、オリヴィアと大喧嘩したラファエルは見覚えのない部屋で目を覚ます。そこは夫婦の立場が逆転した“もうひとつの世界”だった……。
ポスターでは、アメリカのラブコメディを感じさせるタイトル文字や主演のふたりが笑顔で見つめ合うカット、パープルからピンクのちょっぴり甘くファンシーなグラデーションをキーカラーに、よい意味でフランス映画っぽくない、この作品の持つキュートな魅力がストレートに表現されている。
Font.01「刻ゴシック」
スマートで現代的な書体を使いラブコメ的な雰囲気に
メインタイトルの文字は、縦画に比べて横画が少し細めにデザインされた仮名が印象的なゴシック体「刻ゴシック」(フリーフォントの樹)をベースに。フランス映画というと小難しい印象を持たれがちだが、本作はハリウッドのラブコメ的な雰囲気を持つ映画のため、その王道感を意識してさわやかで現代的な書体がチョイスされた。
タイトルが長めなので、文字を組んだときにキュッと密度が出せるのも選択の理由。なお、やわらかな雰囲気を出すため全体的に文字の角を甘くし、アウトラインを少し荒らしてアナログ的な温かみを加えるなどの工夫も施されている。
Font.02「墨東N R」「TBUDゴシック R」
硬すぎずしっとりしすぎず程よい存在感のある文字に
サブタイトルの文字のうち、仮名は上品で落ち着いた趣のある「墨東N R」(モリサワ)、漢字はクリアな印象の「TBUDゴシック R」(タイプバンク)に。一般的なゴシック体ほどさらりとしすぎず、明朝体ほど情緒的すぎない書体で、程よい存在感があるため選択された。メインタイトルと同様に、文字のアウトラインを少し荒らして手触り感が加えられている。
Font.03「こころ明朝体」
全体の印象に合わせ温かみのある文字を選択
キャッチコピーの文字は、角が丸く少しほっそりしたフォルムの明朝体「こころ明朝体」(Typing Art)に。さらりとしすぎず、程よい情緒と温かみがあり、タイトルやサブタイトルとの親和性がよいため選択された。
2021.04.30 Fri2021.09.03 Fri