今回は書籍 『アクティベイター/冲方丁』の使用フォントを紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
緊迫感あふれる作品世界を連想させる文字でリアルさを
羽田空港に突如飛来した中国のステルス爆撃機と、その女性パイロットの身柄をめぐり暗躍する工作員、国際的な陰謀を食い止めようと奔走する主人公らを描いた国際サスペンス小説『アクティベイター/冲方丁』。『マルドゥック・スクランブル』や『天地明察』などで知られる冲方丁の作家デビュー25周年を記念した作品で、予測不能な展開と臨場感あふれるアクションシーンなど読みどころ満載のストーリーになっています。
表紙カバーでは、その緊迫感あふれる作品世界が、登場人物の視点を想定して物語中の舞台となっている場所で撮影された写真や、主人公が所属する組織のロゴをイメージした欧文タイポなどでリアルかつ印象的に表現されています。
Font.01「Acetone Regular」
ロゴタイプ風の書体で作中に登場する組織 を暗示
全体に大きくあしらわれた白抜きの「ACTIVATOR」の文字は、ところどこ ろ画線が凹んだような個性的なデザインの「Acetone Regular」(T-26)に。主人公が所属する組織のロゴに使われているであろう書体をイメージして選定された。
Font02.「新聞特太明朝(YSEM)」
独特の鋭さを持つ明朝体を選択
和文タイトルの「アクティベイター」の文字は、読売新聞の見出し組版に使用されている写植書体「新聞特太明朝(YSEM)」(写研)に。明朝体の中でも独特の鋭さを持っており、作品の緊迫感をイメージさせるのに適していたため選択されました。
Font03.「太ゴB101」
視認性や親和性を意識しオーソドックスなゴシック体に
著者名の文字は、オーソドックスで美しいデザインのゴシック体「太ゴB101」(モリサワ)に。縦横の画に抑揚があって視認性に優れ、他の文字要素に使用されている書体と親和性がよいためセレクトされました。
Font04.「Sackers Gothic Medium」
他とのバランスを考えエクステンド体に
和文タイトルと著者名の間の欧文は、幅広のサンセリフ体「Sackers Gothic Medium」(Monotype)に。両サイドの文字に対して天地を狭く収めたかったため、エクステンド体(平体)の文字が選択されました。
2021.05.20 Thu2021.09.03 Fri