連載の記念すべき第1回目は、文具・雑貨メーカー「ハイタイド」から、2019年11月にデビューしたばかりのブランド「fur.」。国産の革とロウ引きの帆布を使用した、上質なフラットポーチに魅せられて。ミニマルでユニセックスなデザインが素敵。
ものづくりへの思いがこもったミニマルなアイテム
今回ご紹介する「fur.(ファー)」は、文具・雑貨メーカー「ハイタイド」より新たに誕生したブランド。ドイツ語で「〜の為の」という意味を持ち、シーズンごとのテーマ設定、素材が持つストーリーを大切にしながら、ものづくりに向き合う。第1弾のテーマは「持ち運ぶ為のもの」で、国産の革とロウ引きの帆布を使用したMade in Japanのフラットポーチに。カジュアルにもビジネスシーンにも使えるシンプルでユニセックスなデザインが魅力的。
自分のためにいいものを買いたい働く女性たちへ
福岡本社のプロダクトデザイナー、細井さん、広報の尼田さん、東京支社の広報、安達さんにお話を伺いました。
──「fur.」を立ち上げた経緯を教えてください。
細井 ハイタイドに在籍し、日々いろんな文具や雑貨の開発をしていますが、ブランドを立ち上げたのは今回が初めてです。文房具や雑貨はファッションなどに比べると売価がリーズナブルですが、もう少し高くても欲しいと思ってもらえる商品をつくりたい、素材にこだわった「いいもの」を世に出したいという思いから、新ブランドの発足に至りました。
──コンセプト、ブランド名に込めた思いを教えてください。
細井 先に、「〜の為に」というコンセプトを設定しました。人が行動するとき、必ず動機があると思うのですが、それって意外と見えてなかったり、わざわざ説明する必要がないことだったりもしますよね。それをあえて表に出すのも面白いかなと。「贈るために」「いい時間を過ごすため」「自分のため」「誰かと過ごすため」など、言葉ベースで考えたときにすごく広がりやすさを感じたんです。ブランド名は、「〜の為に」が英語だと「for」で捻りがなかったので、いろんな言語に置き換えてみて、ドイツ語の「fur」がしっくりきました。ハイタイドのカチッとしたデザインもドイツの雰囲気に近いので親和性も考えつつ決めました。
──ブランドづくりでこだわったところを教えてください。
細井 素材を際立たせること。素材自体がユニークで、ストーリーが語れるものだと、それ自体が特徴になりますし、ユーザーも商品を認識しやすいと考えました。
──イメージするターゲットは?
細井 自分と同じような、30代から40代の働く女性のためにデザインしました。ベーシックなものやマニッシュなもの、ケミカルすぎないものを好み、自分のためにいいものを買いたいと思っている人たちです。
5年、10年、ずっと使いたくなる上質素材のポーチ
──第1弾をフラットポーチにしたのはなぜですか?
細井 ここ数年、弊社の商品カテゴリーの中で“持ち運び系”がグンと伸びているんです。ノマドワーカーやフリーアドレスが増えたせいでしょうか。特に、PCやiPadを入れるキャリングケースは文房具業界のカテゴリとしても急成長している背景があり、せっかくなら伸びているカテゴリーでつくったほうがいいということで決めました。
──ロウ引き帆布とレザーの組み合わせが粋ですね。
細井 早い段階でいい生産先との出会いがあって、会話の中で素材が見つかりました。勧めてもらったロウ引き帆布とタンニンなめしの革の相性が絶妙で、ほぼ即決。サイズ・色展開を各3ずつと決めてから、それぞれの色見本表を突き合わせ、黒、カーキー、ベージュに絞り込んでいきました。
素材の特徴として、ロウ引きの帆布はハリ感がくたっと柔らかくなって味が出てくる。使っているうちにロウが剥がれて元々のキャンバス地が出てくるので、ちょっとシワっぽくもなり、それが表情となって、こなれ感が育っていきます。
タンニンなめしの革も、職人が目で見て、トントン叩いていって、濃淡で絵を描くみたいに色をつけていくので、とても手間がかかるし、濃淡の感じが絶妙。こちらも使っているうちに、ピンと張ったフラットな革もくたっとして味が出てくる。そんな変化を楽しみながら、育てるように使って欲しいですね。モノとしてはかなりいいので、5年、10年と長期間使っていただけると思います。
──デザインでこだわったところを教えてください。
細井 逆説的ですが、あえてデザインしすぎないことです。ステッチの感じや切りっぱなしのラインなど、ベーシックなものというのに気をつけて最後まで落とし込みをしました。女性のためのものでスタートしているんですが、自分自身、女性らしすぎるものは好きじゃなかったりして、結局、ベーシックが落ち着くんです。女性らしいものよりは、ユニセックスなものを好む女性に選ばれるブランドでありたい。そこで男性にも共感してもらえたら嬉しいです。
──Made in Japanもこだわりですか?
細井 ブランドポリシーとして、Made in Japanにこだわっているわけではないのですが、結果的にデザインの微調整もスムーズに対応していただけて、品質も高く仕上がったので満足しています。
──広報として、完成したアイテムを見たときはどう感じましたか?また使ってみた感想を教えてください。
安達 久しぶりにハイタイドの自社ブランドで、ここまでシンプルで上質、なおかつストーリーのあるプロダクトが完成したことが嬉しかったです。私自身「fur.」のターゲットのど真ん中ということもあり、すっと入ってきました。あえて内ポケットなどを付けない余白のある使い心地も、今の気分に合っているように感じます。LサイズにノートPCと手帳を、Sサイズにコスメを入れて持ち歩いていますが、バッグの中でもかさばらず、取り出し口が広いので中身の出し入れがしやすいです。
“めんどくさい”がかっこいい、封緘留めボックス
──封緘留めの外箱にもこだわりを感じます。
細井 ちょっとめんどくさい感じがいいですよね(笑)。ギフトにもなるように、パッケージにもこだわりました。箱がいいとテンションが上がるし、お店でも一緒に並べてもらえる可能性が高くなります。そうすると、売り場で目に留まりやすくなるし、何をギフトに買うか迷っている人の一歩手助けになればという狙いもありました。
デザイン案として、ぱかっと開く身箱とふたで構成されるかぶせ箱形式も考えたんですが、予算的に厳しかった。封緘留めならコスト的にもクリアでき、文房具メーカーらしさもでて一石二鳥。素材もナチュラルな感じの紙が合うと思ったので、あえてボール紙のような質感のものを使いました。箱も3サイズ展開なのですが、 箔押しの版下データを共通にするなど、がんばってコストを抑えました。
春が待ち遠しい、第2弾にも期待を込めて…
──今後の展開についておしえてください
細井 ひとまず、今回の動きを見つつ、来春を目処に第2弾を発売する予定です。現段階での感触としては、バイヤーさんやメディアの方々から大変好評で、ファッション誌やライフスタイル誌にも多数取り上げていただけており、今までの文房具の括りから一歩飛び出せたかなと思います。次は、贈り物やギフトになるようなものを考えたいなと思っていますが、まだまだ検討段階。そちらも、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
2019.12.23 Mon