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【文房具連載】第5回 田中手帳「TETO」/物語のある、ニューフェイスな文房具・雑貨

2020.8.15 SAT

物語のある、ニューフェイスな文房具/第5回 田中手帳「TETO」五感やシーンでセレクト!書くことに夢中になれる愛おしいノート
見た目がおしゃれだから、使い勝手がよさそうだから。普段何気なく買っている文房具や雑貨だけれど、それらのアイテムに秘められた“物語”を知ることができたら、もっと選ぶのが楽しくなって、もっと愛着がわくはず。そこで、素敵なストーリーのある新顔ステーショナリーをご紹介。第5回目は「田中手帳」からデビューした「TETO」をご紹介。書き心地もデザインも優れたノートで、“書く”ことをたっぷりと楽しんで。

●取材:編集部、沼田佳乃 ●文:沼田佳乃 ●撮影:YUKO CHIBA

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▼もくじ
▽はじめに
▽書くことを素敵に演出する
▽筆記具をイメージして……
▽日記を思わせちょっとレトロ
▽インデックス加工で個性的に
▽おわりに

▼はじめに/書くことを大切に考える、情緒的で愛着が湧くノート
80年続く手帳メーカー「田中手帳」が、2018年にデビューさせた初の自社ブランド「TETO」。自己表現のひとつ“書く”ことをテーマに、紙質にもデザインにもこだわったノートを展開している。五感やシーンに合わせてセレクトできるのも特徴で、気を張らず綴れる原稿用紙ノート「RETRO」や、なんでもないことを書き記す「PAGES」など、どこか情緒的で書くことに夢中になれる素晴らしいアイテムがいっぱい。
▼コンセプトについて/書くことを素敵に演出する手帳製本のノート
a little bit「DAILY USE」。ポケットの中に入れて持ち運べるハンディサイズのノート。中質紙を使い無地なので、覚え書きをどんどん書ける。柔らかな色合いもかわいい。

a little bit「DAILY USE」。ポケットの中に入れて持ち運べるハンディサイズのノート。中質紙を使い無地なので、覚え書きをどんどん書ける。柔らかな色合いもかわいい。

商品の企画段階から携わる、デザイナーの有元さんにお話を伺いました。

──「TETO」が誕生したきっかけを教えてください。「田中手帳」から受け継いでいるフィロソフィー、逆に差別化している部分はありますか?

有元さん:もともと「田中手帳」は手帳専門の製本会社としてメーカーからお仕事をいただいき、製造して納品するのが仕事でした。「TETO」は、そんな田中手帳の初めての自社ブランドです。手帳製本の素晴らしさを伝えたいというのはもちろんのこと、「田中手帳」で働いている工場の方々にも自分たちが作ったものが実際売り場に並ぶことで、商品への責任が生まれる、会社に愛着心を持っていただきたいというのがきっかけでした。

大体のコンセプトを決めつつ実際にいろいろ作りながら、2年近くかかりようやく2018年にブランドデビューしました。当初は4ブランド27種類と商品数多く、売れ行きを見ながら調整をしていき、現在の3シリーズ14種類に落ち着きました。

──「TETO」のコンセプトはどのようなものですか?

有元さん:「書くことが素敵であるように」というのがコンセプトです。生活の中で“書く”という機会が減っているけれども、“書く”というのは非常に人間らしい動作のひとつだと思っています。愛着が湧く道具を提供することで“書く”ことを愛おしんでいただきたいという気持ちがあります。意識したのは“直感的に使い方がわかること”です。パッと見て、「こんなシーンで使いたい」というのが思い浮かぶような仕上がりにこだわりました。
▼「cocochi」について/筆記用具をイメージして作られた秘蔵っ子
左から、マーカーや水性ペンなどで、イラストを描くのに向いているcocochi「SILKY PAPER」、ハリのあるステーショナリー用紙の「BANK PAPER」、画用紙のように丈夫な紙「DRAWING PAPER」。

左から、マーカーや水性ペンなどで、イラストを描くのに向いているcocochi「SILKY PAPER」、ハリのあるステーショナリー用紙の「BANK PAPER」、画用紙のように丈夫な紙「DRAWING PAPER」。

──3つのシリーズ「cocochi」「a little bit」「clue of page」を展開されていますね。こちらはそれぞれターゲット層が異なるのでしょうか?

有元さん:メインターゲットはいずれも20代から40代の女性です。担当した私の年齢が20代ということもあり、等身大のターゲットに設定することで、ブランドを進めやすいと考えたからです。シリーズの違いとしては“使ってほしいシーン”でわけています。

──まずは「cocochi」について教えてください。この商品が誕生したきっかけや特徴は……?

有元さん:これがもともと作りたかったシリーズです。紙に囲まれた職場でいろいろな紙が身の回りにありましたが、手帳製本に使う紙は大体決まっていて……。もっと紙の魅力を伝えたいというところで秘蔵っ子を出しました(笑)。

筆記用具を使ってほしいという思いがあったので、書く道具をイメージして紙を選びました。全部で6種類ありますが、例えば、水彩絵の具には「ドローイングペーパー」という厚みのあるガシッとした画用紙っぽい紙があいます。万年筆には「バンクペーパー」「レイドプリンティング」という2種類がおすすめですが、書き味が少し異なっています。「バンクペーパー」の方がぬるぬるっとした感じで、「レイドプリンティング」の方はカリカリっとした書き味です。紙フェチではなく、今まで紙にこだわったことがない方でも「何か違うな」というのがわかるアイテムになっています。
cocochiのコンセプト
数多の紙には、それぞれに役割や五感を楽しませる個性があります。シーンや好みに合わせて、TETOが厳選した特徴のある紙を使ったノート。
▼「a little bit」について/日記のようでちょっとレトロな趣
a little bit「RETRO」は、ふわっとした書き心地で、気を張らずに書ける原稿用紙ノート。右上にちょこんと描かれた花のイラストが愛らしい。

a little bit「RETRO」は、ふわっとした書き心地で、気を張らずに書ける原稿用紙ノート。右上にちょこんと描かれた花のイラストが愛らしい。

──「a little bit」についても教えてください。“ひとりだけの大事な時間”というテーマが、すごく今の時代にマッチしている気がしたのですが、時代背景も気にされていますか?

有元さん:そうですね。今はデジタルが当たり前で、スマートフォンでパパっと打ち込む方が早いし、場所を選ばないと思うのですが、“書いてみること”が大事だなと思っていて。自分で書いてみると考え方がよくわかる。そのときに選んだノートとか、紙とか、筆記具とか、使ったインクの色とか、走り書きなのか、丁寧に書いたものなのか……。そのときの気持ちを残せる情報みたいなものが多いのは、アナログだと思っています。「a little bit」は、自分の中にだけしまっておきたい感傷的なことを綴ってほしいと思って作りました。人に見せるというより、自分の部屋の本棚にしまっておきたくなるような……、日記に近いイメージですね。

──「a little bit」のデザインは、全体的に優しくなれるようなデザインに感じました。

有元さん:日記のように愛着を持って欲しかったので、原稿用紙のレイアウトにしてみたり、文庫っぽい形をしたりと、なんとなく手に取りたくなる懐かしいものを模しています。紙も“ゆっくり文字が書ける”というところにこだわって、ちょっと沈み込むような書き心地の紙を選びました。「OKプリンセス」というほんのりクリーム色をした紙です。表紙の色バリエーションは気分が上がるような女の子らしい感じのかわいい色にしました。
a little bitのコンセプト
ひとりだけの大事な時間。特別なゆったりとした時間の中で気持ちを綴るためのノートたち。
▼「clue of page」について/インデックス加工で個性的な1冊に
clue of page「PAGES」。2段のインデックスが特徴のノートで、“明後日には忘れているようななんでもないこと”を気軽に書き留めることができる。

clue of page「PAGES」。2段のインデックスが特徴のノートで、“明後日には忘れているようななんでもないこと”を気軽に書き留めることができる。

──最後に「clue of page」について教えてください。こちらのシリーズは、インデックス処理を行っていることが特徴ですね。

有元さん:インデックス加工は、アドレス帳や手帳でよく見られる1月・2月という切り込み加工のことです。従来は手作業で行っていた作業なのですが、 ズレや強度の違い、亀裂の元になってしまうことが多かったのです。そんな悩みを払拭すべく、完全に製本された本へのインデックス加工を可能にしたのが弊社の技術となっています。

それを表立って出したシリーズが「clue of page」です。こだわったのは、インデックス加工をちょっと変わった形で入れ込むこと。今まで見たことがないデザイン、こういう使われ方はしてなかったな、という新しい見方をしてもらえるようなシリーズを目指しました。変わったレイアウトのものが多いので、ターゲットも人と被らないものが好きな方に選んでもらえるかなと。

インデックス加工を施すと検索性が高まるので、一般的には手帳やアドレス帳に入っていることが多いのですが、ノートの見開きごとに入れてあげることによっていろんな情報をカテゴリわけしやすくなる。料理のレシピや読書録とか、好きなものを並べてもらう感じで使ってもらえたらいいですね。

──「clue of page」には、グラデーション加工された「CHANNEL」や、ページの端をちぎれる「Geometric」など、シンプルでありつつどこかアクセントのあるデザインが素敵ですね。どのようなことを意識されていますか?

有元さん:「clue of page」は全部で6種類あるのですが、例えば「CHANNEL」は時間を意識させるようなデザインにしたかったので朝焼けのちょっと紺色が薄くなってきている色をグラデーションで表現しました。

シンプルな作りの「Geometric」はページの端に切り込み線が入り、ちぎれる仕様になっていて、自由にインデックスが作れます。

「TIDY UP」は紙質が異なる2種類のページを使って「思考のお片付けをしましょう」というもの。前のページは中質紙でザラッとしていてアイデアの走り書きなどにぴったりで、後ろのページは上質紙の真っ白い紙で前のページに書いたことの清書に使ってもらうイメージです。ノートって1回書いたらそのままにしてしまいがちですが、振り返ってまとめ直すっていうところまでを一連の作業にして、思考のお片付けに使っていただきたいです。
clue of page「CHANNEL」には、朝焼けと夕焼けをイメージしたグラデーションをインデックス加工で施している。柔らかなカラーリングで、見ているだけでうっとり。

clue of page「CHANNEL」には、朝焼けと夕焼けをイメージしたグラデーションをインデックス加工で施している。柔らかなカラーリングで、見ているだけでうっとり。

clue of pageのコンセプト
製本後にインデックス処理を施すという、常識を覆す独自の加工技術を使ったプロジェクト。
▼おわりに/思わず使いたくなる、心ときめかせるアイテム紹介も
──どの商品にも帯があって素敵な紹介文が書かれていますが、どなたが書いているのでしょうか?

有元さん:帯自体はデザイン事務所さんに作ってもらっていますが草案は私が書いています。「これを読んで買いました」と言ってもらえることが多いので、商品特性がわかりやすく伝わるように考えています。

──帯を読んでいるとどれも欲しくなってしまいます。最後に今後の展開を教えてください。

有元さん:お客様からの要望もあり、新商品としてカバンに入れて持ち歩きたくなるような小さなノートを考えています。携帯性に優れたものですね。また、これまでワークショップなどをしたことがないので、今後は製本にまつわるイベントなどを大阪のショップでやっていきたいなと計画を練っています。
有元さんによるラフスケッチを特別に見せてもらいました!

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