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甘いときめき、小さな宝箱

2020.09.30 Wed

モダンでかわいい新しい和菓子で、これからの伝統を築く京都の「UCHU wagashi」

取材・文:中村美枝(JAM SESSION)

京都の和菓子ブランド「UCHU wagashi」。デザイナー目線で新たな可能性を広げる和菓子が誕生するに至るまで……と、デザインへの熱い思いに迫ります。前職はグラフィックデザイナーという、代表・木本さんに話を伺いました。

UCHU wagashiの成り立ち、コンセプトについて

前職はグラフィックデザイナーで、アートワークを自ら手がける「UCHU wagashi」の代表・木本勝也さんにお話しを聞きました。

──ブランド誕生のきっかけを教えてください。

木本 グラフィックデザイナー時代は代理店や出版社の仕事に多く携わりました。やりがいはありましたが、消費者と僕の間にディレクションやプロデュースをする人がいる仕事がほとんどで、消費者に自分の仕事を直接見てもらうことができたらと思い続けていました。

20・30代は流行を気にしながら、今のデザインを作ることに一生懸命。それでいて会社にいると、40歳を過ぎたら管理する立場になって、自分でデザインする機会がなくなってくる。流行に左右されず、自分と向き合って新しいデザインを生み出し続けたい。そんな思いも重なり、100%自分で一から作るブランドを立ち上げました。

──なぜ和菓子だったのですか?

木本 地元が京都なので、京都でなにか新しいことをしたかったんです。そこで、京都における“和”のデザインってなんだろうと模索するうちに、“お茶席”に興味を持ちました。調べを重ねると、お茶席は“和の美の真骨頂”ではないかと感じたわけです。

そして、僕がお茶席でできることは……?と、たどり着いたのが、和菓子でした。京都での和菓子はだんごなどのお菓子と、お茶席に出す京菓子で区分されます。京菓子の素材はとてもシンプル。なにが価値を見出しているかというと“美しさ”。つまりデザインなんです。

京菓子の基本ルールは“四季を見立てる”こと。その制約にも惹かれました。自由が少ないからこそ、美しさへのさまざまな工夫がされている。日本のデザイン美を感じる京菓子で、自分ができることに挑戦することにしました。

──コンセプトやブランド名はどのように決めたのでしょうか?

木本 和菓子は洋菓子に比べると地味ですし、京菓子は行儀よく、由緒正しきという敷居が高いイメージがあります。だからこそ、ときめいて、わくわくできる和菓子を作りたいなと。コンセプトは「人をわくわくさせたり、幸せにする和菓子」としました。

そして、宇宙には人知では計り知れない無限性があります。宇宙のような無限性を秘めた和菓子を作り続けたいという想いを「UCHU wagashi」に込めました。

UCHU wagashiのアートワークについて

drawing
drawing

──商品開発はどのように進めていったのでしょうか?

木本 初めに手がけたのは落雁。和菓子のなかでも落雁はさらに地味な存在。まずは落雁を輝かせることから始めました。落雁を作るときに使う木型の美しさに惹かれたことも理由のひとつ。「UCHU wagashi」で使っている木型はすべて専門の職人に作ってもらっています。

主な材料は香川産の和三盆。これにお茶やフルーツなどを組み合わせるのですが、1%割合が違うだけで固まらなかったり、口当たりが変わったり……。すーっと溶けていく、やさしい味わいを目指して何度も試作を繰り返しました。

──デザインはどんな点にこだわりましたか?

木本 落雁を輝かせる第一歩は、たくさんの方に手にしていただくこと。製法やルールの基本を守りながら、現代の人々に受け入れてもらえるデザインを心がけました。そして主観的に、自分がいいと思うことをカタチにすることにこだわりました。初期の商品はコンセプチュアルなものが多く、最初の商品「drawing」は1年くらいかけてコンセプトを練り込みました。

──「drawing」はパズルのような楽しい落雁ですね。

木本 ピースを組み合わせていろいろな形が作れるので、お客様ご自身が四季や自然をデザインして楽しんでいただけるようにしました。

ただ、コンセプチュアルなものはデザイン好きな方が気に入ってくれる傾向がありまして。僕自身、それを意識はしていましたが、商品数が増えるにつれ、もっと幅広い方たちにわくわくしてもらいたいと思うようになったんです。コンセプチュアルでなく、感覚的な楽しさがあるようなもので。

秋限定商品「りすとどんぐり」は、その楽しさが表われているかな。りすに、どんぐりを頬張らせてみました。大学生のときにキャラクターの研究をしていて、新卒で就職したのが「サンリオ」だったので、その色が出ているなあと。僕、顔を作るのが好きなんです。

りすとどんぐりの製作工程。木型に和三盆糖を詰めていく
りすとどんぐりの製作工程。木型に和三盆糖を詰めていく
丁寧にほっぺをスタンプしていく。オレンジ色のほっぺがチャームポイントに
丁寧にほっぺをスタンプしていく。オレンジ色のほっぺがチャームポイントに
りすとどんぐりを並べ、隙間なく金平糖を埋めていく
りすとどんぐりを並べ、隙間なく金平糖を埋めていく
完成!
完成!
フルーツの羊羹(NEXT 100 YEARS)
フルーツの羊羹(NEXT 100 YEARS)

──昨年12月には、新ブランド「NEXT 100 YEARS」を立ち上げられましたね。

木本 「UCHU wagashi」のセカンドコンセプトは「今の和菓子を作っていくこと、それが100年後の文化になる」。古いものをつむいでいくだけが伝統でなく、今からでも作っていける。この瞬間から始めても100年後は伝統になるかもしれませんから。その自由度を訴えたくて「フルーツの羊羹」と「宝石の菓子」を作りました。

「宝石の菓子」はもち米が原料の寒梅粉で作っています。和菓子の定番材料ですが、寒梅粉のお菓子は昔っぽいと言われていたので、あえて使って現代的なお菓子にしてみました。職人さんに作ってもらった昔ながらの球断器という道具で、手作業で成形しています。

球団器を作れる職人はごくわずかしか残っていませんが、このような道具があることを知っていただくことで、若い世代の職人が現れるかもしれないし、100年後も続く道が開かれるかもしれません。そういう和菓子の可能性をどんどん広げていきたいですね。

宝石の菓子(マスカット)NEXT 100 YEARS
宝石の菓子(マスカット)NEXT 100 YEARS

お菓子ギャラリー

木型でひとつずつ手作りする落雁を詰め合わせたdrawing20個入780円(税込)。「ピースを組み合わせて、絵を描くようにカタチを作れます。伝統的な和菓子の“見て感じる”を、ご自分なりに楽しんでください。描くことが楽しくなるようなパステルカラーにもこだわりました」(木本さん)

木型でひとつずつ手作りする落雁を詰め合わせたdrawing20個入780円(税込)。「ピースを組み合わせて、絵を描くようにカタチを作れます。伝統的な和菓子の“見て感じる”を、ご自分なりに楽しんでください。描くことが楽しくなるようなパステルカラーにもこだわりました」(木本さん)

「飴などと同じ様にバッグに忍ばせて持ち歩いていただきたくて、ひと口サイズの落雁をやわらかな和紙でひとつずつ包みました。外出先での一服になるよう、お茶のフレーバーにしています」(同上)。ochobo 抹茶、ほうじ茶、ジャスミン茶、プレーン各5個入り1,180円(税込)

「飴などと同じ様にバッグに忍ばせて持ち歩いていただきたくて、ひと口サイズの落雁をやわらかな和紙でひとつずつ包みました。外出先での一服になるよう、お茶のフレーバーにしています」(同上)。ochobo 抹茶、ほうじ茶、ジャスミン茶、プレーン各5個入り1,180円(税込)

紅葉のような金平糖にも心が躍る、りすとどんぐりは秋限定の商品(画像上)。「春はバード、夏はスイミー(画像下)、冬は白くま。特に春と夏はオーソドックスなデザインだったので、秋はちょっととんがらせてみようと思い、僕が素直におもしろいと思うデザインにしました」(同上)。りす3個、どんぐり6個、金平糖入り1,500円(税込)。ミニサイズも展開。

紅葉のような金平糖にも心が躍る、りすとどんぐりは秋限定の商品(画像上)。「春はバード、夏はスイミー(画像下)、冬は白くま。特に春と夏はオーソドックスなデザインだったので、秋はちょっととんがらせてみようと思い、僕が素直におもしろいと思うデザインにしました」(同上)。りす3個、どんぐり6個、金平糖入り1,500円(税込)。ミニサイズも展開。

「もち米を使用した寒梅粉で作りました。ゼリーでもなく、グミでもない、もち米の食感を生かした新しいフルーツのお菓子です。100年後も続く、伝統のお菓子になれたら嬉しいですね」(同上)。宝石の菓子 NEXT 100 YEARSはココナッツ(写真)のほか、マスカット、レモン味も。80g1,380円(税込)

「もち米を使用した寒梅粉で作りました。ゼリーでもなく、グミでもない、もち米の食感を生かした新しいフルーツのお菓子です。100年後も続く、伝統のお菓子になれたら嬉しいですね」(同上)。宝石の菓子 NEXT 100 YEARSはココナッツ(写真)のほか、マスカット、レモン味も。80g1,380円(税込)

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