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甘いときめき、小さな宝箱

2021.11.08 Mon

グラデーションが美しいチョコレートも。サスティナブルに取り組む「Little MOTHERHOUSE」

取材・文:中村美枝(JAM SESSION) 撮影:米山典子(メイン) 画像提供:Little MOTHERHOUSE

途上国の人々に寄り添いながら、一緒にものづくりを続けてきたファッションブランド「MOTHERHOUSE」から、2021年2月、食のブランド「Little MOTHERHOUSE」が誕生。インドネシア産のカカオでチョコレートが作られるようになるまでの道のりや、こだわり、そしてデザインにかける思いを伺いました。

Little MOTHERHOUSEの成り立ち、コンセプトについて

今回は、「MOTHERHOUSE」の広報、マーケティングを担当、「Little MOTHERHOUSE」の事業責任者でもある小田靖之さんにお話を聞きました。

──「Little MOTHERHOUSE」が誕生したきっかけを教えてください。

小田 2020年4月、全国に緊急事態宣言が出て、「MOTHERHOUSE」の全34店舗が約2カ月にわたって休業しました。お客様と店頭でコミュニケーションできない日々が続く中、MOTHERHOUSEらしく、なにか情報発信できないか、途上国の可能性をアパレルの素材以外にも生かせないかと、社内で議論を重ねました。

そして、自宅でもMOTHERHOUSEを感じてもらえるよう、「僕たちがトライできることはなんだろう」と模索していくうちに見えてきたのが“食”でした。

──なぜチョコレートだったのですか?

小田 MOTHERHOUSEでは創業から15年、途上国の人々とものづくりをさせてもらってきたので、そのスタンスを大切にしたい思いがありました。コーヒー、紅茶、スパイス……と、いろいろな案が出ましたが、可能性の広がりを特に感じたのがカカオでした。

そこで、インドネシア・スラウェシ島の最高品質カカオ豆を自社で調達し、チョコレートを作っている京都の「Dari K」に相談を持ち掛けました。今回の企画と商品開発は、代表取締役副社長の山崎と僕がメインでスタートしたのですが、山崎がDari Kの代表・吉野さんと以前から交流があったのです。

──インドネシアのカカオは、日本ではあまり知られていない印象がありますね。

小田 カカオは、生産者がカカオの実を収穫、発酵、乾燥させ、カカオ豆に加工してから出荷されることがほとんど。ただし、インドネシアは世界を代表するカカオの産地ながら、発酵技術がなく、収穫した実を出荷するだけ。そのため、日本に輸出されることが少なかったといいます。

吉野さんは、インドネシアの農園の人々にカカオの発酵技術も提供。現地の人々とおいしいチョコレート作りを目指す姿勢にも共感できますし、その活動はMOTHERHOUSEが続けてきたことともリンクします。コラボレーションできたらおもしろいだろうなと感じましたね。

──インドネシア産のカカオ豆を使用されているのには、そんな経緯があったのですね。

小田 Dari Kとのコラボや、インドネシア・スラウェシ島のカカオを原料にするというところまでは順調に決まりましたが、そこからが長い道のり。

試作でおいしいチョコレートはできてもしっくりこない。足りないものはなにか?それは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもとで、ものづくりを続けてきた立場として、“HOW”ではなく、“WHY”なぜそれをやるのか?を明確にすることでした。

新しさを追求するだけでなく、僕たちが15年かけてやってきたことを改めて振り返れたことが、2つのライン「インドネシアオリジンズ」と「イロドリチョコレート」の誕生につながりました。

Little MOTHERHOUSEの商品・アートワークについて

──まずは、インドネシアオリジンズの特徴から教えてください。

小田 その名の通り、インドネシアのカカオにしっかりフォーカスした商品です。第1弾は、インドネシアの生カカオと、同じくインドネシア産の世界最大級サイズのカシューナッツを使ったチョコレートを発売しました(現在は販売終了)。

2021年10月に発売した第2弾は、ビター、ミルク、ホワイトの3種がそろうタブレット型チョコレート。ハイカカオチョコレートでコーティングした生カカオ豆「カカオエッグ」をクラッシュして散りばめ、カカオ特有の苦みを感じられるようにしました。

第1弾と2弾とでは、まったく違う商品になりましたが、「オリジンズ」というネーミングのもと、形、雰囲気、味わいを変えながらも、インドネシアのカカオが持つアイデンティを引き継いでいます。それはインドネシアのカカオの魅力やおいしさだったり、インドネシアのカカオだからこそ生まれた商品の背景だったり。今後もシリーズを続け、カカオの可能性を見出していきたいと思っています。

──グラデーションのパッケージが美しいイロドリチョコレートは、どのように開発されたのでしょうか?

小田 MOTHERHOUSEでは、日本の四季をグラデーションで表現した財布やカードケースなどの革製品「イロドリ」をシリーズ化しています。その延長線上で、「チョコレートもグラデーションにできたら、MOTHERHOUSEらしくておもしいよね」という発想から開発が始まりました。

こちらは、デザイン性を重視したファッション寄りの商品。色鮮やかなグラデーションの箱を開けたら、チョコレートもグラデーションだった……という驚きがあったらいいなと思い、パッケージだけでなく、チョコレートの見た目のインパクト、かわいらしさにもこだわっています。

とはいえ、おいしくなければサスティナブルではありません。インドネシア・スラウェシ島のカカオ豆からカカオバターを抽出してホワイトチョコレートを作り、フレーバーはすべて天然素材を使用。グラデーションを出すのも、色味や味わいの調整も本当に大変でしたが、果物や野菜など素材そのものの色味、そして風味や味わいを活かすことを大切にしています。

──カラーリングやネーミングも素晴らしいです。

小田 イロドリチョコレートは全12種類。ラベンダー×ブルーベリーは「あじさい」、カシス×ブランデーは「ゆうぐれ」、ビーツ×栗は「こうよう」など、日本の四季や風景を、名称、デザイン、味わいで表現しました。そうした情景を思い浮かべながら、見て、食べて、楽しんでいただければ。

──Little MOTHERHOUSEのデザインは、Study and Designの古谷萌さんが担当されているのですね。

小田 普段は社内でデザインすることがほとんどですが、数年前に当社でアパレルブランドを立ち上げたときに、Study and Designの古谷さんとご一緒させていただきました。そのご縁で、今回はパッケージやホームページのデザインをお願いしました。

古谷さんには、Little MOTHERHOUSEを立ち上げた意図、ファッションブランドとしての見せ方も大事にしたいなど、いろいろお伝えしたうえでミーティングを重ね、デザインを構築していきました。僕たちの思いを、美しく、かわいらしく、表現してもらえたと感じています。

特にイロドリチョコレートのデザインは、海外からも評価され、取材を受けたり、デザイン雑誌の“2021年の世界のデザイン”に選んでいただいたり。チョコレートとしてはもちろんですが、ひとつのデザインとして、世界に広がったらいいですね。

ギャラリー

カカオを50%配合した「インドネシアオリジンズ ミルクチョコレート」1,620円(税込)は、ミルクチョコレートの濃厚さとカカオエッグの苦みのバランスが絶妙。「カカオエッグのザクザクとした歯ごたえが楽しいです。インドネシアオリジンズは3種ともパッケージにはカカオの実と葉っぱをデザインしています」(小田さん)

「インドネシアオリジンズ ミルクチョコレート」1,620円(税込)は、カカオ豆から抽出したカカオバターで作ったオリジナル製法のホワイトチョコレートに、カカオエッグのクラッシュをトッピング。「カカオエッグの香ばしさがアクセントになった甘すぎないホワイトチョコレートです」(同上)

「インドネシアオリジンズ ビターチョコレート」1,620円(税込)は、カカオ配合78%の大人味のチョコレート。「ハイカカオですが、後味すっきり。フルーティな味わいで、カカオ本来の風味やうまみが楽しめます」(同上)

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