ZINEがブームになっている理由
ZINEがZ世代にブームになっている背景には、デジタルネイティブ世代だからこそ直面している現代社会の課題と、それを解決する糸口が見えてきます。
Z世代の消費行動は「コスパ」「タイパ」重視と捉えられがちですが、その一方で、感情的な価値や共感を重視する「エモ消費」、社会貢献や企業の理念に共感してお金を使う「イミ消費」といった消費傾向があるといった調査報告も広告代理店などから報告されています。ポッドキャストの記事で紹介したラジオの人気復活や昭和・平成レトロブームと同様に、ZINEブームも、こうした消費トレンドの中にある動きの一つと言えるでしょう。
また、Z世代は情報が溢れる中で、画一的なWebメディアの記事や収益目的が透けて見えるコンテンツに「飽き」や「疲れ」を感じている可能性があります。既存の出版ルートに乗らない自由な表現媒体であるZINEは、作り手の個性や手作り感があり、デジタルコンテンツでは得られない「価値」や「体験」を提供しているため、そうしたZ世代に刺さる文化となっているのではないでしょうか。
加えて、ZINEブームを語る上で重要なのが、作り手と読み手の距離が近いコミュニケーションツールとしての側面です。イベントでの直接販売や交流は、「推し活」に代表されるZ世代の「界隈消費」にも通じるものであり、オンラインでの交流が当たり前になった時代だからこそ、人と人が直接繋がる温かみに魅力を感じているのかもしれません。
まとめ:ZINEブームの分析から見える人間性への回帰
私はもともと雑誌編集者で、Webメディアに活動の軸を移したのですが、PV数やSEOを重視するWebメディアのあり方に常に違和感を抱いていました。今回、ZINEのブームを調査する中で、その違和感の正体は、人間ではなく検索クローラーというロボットに向き合ってコンテンツを作成していることではないかと気付かされた気がします。
松本零士の傑作『銀河鉄道999』には、永遠の美しさを求めて機械の体を手に入れながらも、生身の体に戻りたいと後悔する機械化人の物語が描かれています。この寓話は、効率性や便利さを追求するあまり、人間らしいノイズや不完全さから生まれる魅力、つまり「人間性」を忘れかけている現代社会に重なるのではないでしょうか。AIに関する技術革新が進むほど、こうした人間性は枯渇していくでしょう。だからこそ、ZINEブームの背景にある「人間性への回帰」は、AI時代を迎える私たちに、本当に大切なものは何かを示してくれているように思えます。
ZINEブームの分析は、オールドメディアやWebメディアが復権していく上でも重要な意味を持ちます。本記事が、クリエイターの皆さんが大切なものを再発見する一助となれば幸いです。
2025.10.16 Thu