今年8月にデビューした「ネコシェフ」。アイデアの種から芽生えたブランドの成り立ち、ネコとチーズの意外な関係から広がったアートワークに注目です。アートディレクターはTHAT'S ALL RIGHT.の河西達也さん、イラストは水沢そらさんです。
ネコシェフの成り立ち、コンセプトについて
今回は、多数の菓子ブランドを展開する「シュクレイ」の企画開発部で広報を担当する濱田萌笑さんと、各ブランドの商品開発から携わるアートディレクター、「THAT'S ALL RIGHT.」の河西達也さんにお話しを聞きました。
──「ネコシェフ」誕生のきっかけを教えてください。
濱田 今年8月、東京駅八重洲北口に開業した商業施設「東京ギフトパレット」から、新ブランドでの出店をお声がけいただいたことが始まりです。東京駅は利用目的も年齢層もさまざまな不特定多数の人々が行き交う場所ですから、老若男女問わず受け入れていただけるブランドにしようということになりました。
──この連載でも紹介させていただいた「フランセ」をはじめ、「シュクレイ」にはいろいろな菓子ブランドがあります。どのように新しいブランドを生み出していくのですか?
河西 「シュクレイ」では月に2回程度、商品開発者やシェフらがアイデアを持ち寄って、新たな商品開発を目指してミーティングを行っています。以前、このミーティングでフルーツのお菓子を試食したとき、「ネコの首輪の鈴が果実だったらかわいいよね」と、なにげなく口にしたことがありまして。今回、「あのときのネコと果実のアイデアがいいんじゃない」ということになり、新ブランド誕生のきっかけになりました。
ネコはキャラクターとしてもインパクトがあって、しかも親しみやすい。「シュクレイ」では通常、お菓子のメイン素材を決めてからコンセプトやアートワークを詰めますが、今回はめずらしくネコありき。ビジュアル面からブランドを構築していきました。
濱田 そしてお菓子の素材は、果実とチーズを組み合わせることにしました。「シュクレイ」には、すでにそれぞれを素材にしたブランドがありましたが、初めて試みる組み合わせで、新しいおいしさを表現しようということになったんです。
──お菓子はどんな点にこだわりましたか?
濱田 クッキーはカマンベールとレーズンなど、チーズのコクと果実の酸味・甘みのバランスはもちろん、生地も重視。溶かしたバターに小麦粉などの粉類を少しずつ混ぜ合わせていく、フラワーバッター法で作っています。口に入れたとき、ほろりと崩れる食感が特徴ですね。クッキーのまわりに付けた砂糖の甘みとチーズの塩気で、メリハリのある味わいに仕上げました。
ネコシェフのアートワークについて
──アートワークはどのように進められましたか?
河西 ネコありきで進めたものの、ネコとお菓子の関係性は薄い。なにか糸口はないかと調べていたら、ネコが描かれたフランス産チーズの丸い木箱のラベルを見つけたんです。とても古い時代のものですが、これが何種類もあって。この発見がアートワークのベースになりました。そして“ネコが作るお菓子“という設定も生まれ、その世界観がわかりやすく伝わるようブランド名を「ネコシェフ」としました。
古いチーズラベルの発見は、ストーリーデザインにもつながりました。主人公は森の中にたたずむチーズ工房の主人にかわいがってもらっている野良猫。その野良猫が工房に忍び込み、森の中で摘み取った果実とチーズで、自分の好きなお菓子を作る……。野良猫と森の住人の、飼われてないけど、飼われているというようなあいまいな関係や、ネコの気ままさ、自由さをブランドの世界観に忍ばせました。
──イラストは水沢そらさんが担当されていますね。起用された経緯は?
河西 水沢そらさんのイラストには、ただかわいいだけではない、懐かしさと新しさを織り交ぜたような独特な世界観があります。その世界観が僕の思い描く「ネコシェフ」のアートワークにぴったりだと感じたからです。ネコ特有の媚びない雰囲気を出しながら、あふれる愛らしさを表現してくれるはず、と思って。
そんな水沢さんは大のネコ好き。ネコも飼われているので、“ネコらしさ”へのこだわりがとても強い。体をくねらせた不思議なポーズもあるし、ぱっと見はかわいいけれどよく見ると無表情で怖かったりもする。どれもあざとさがなくて、ごくごく自然なしぐさ。このかわいらしさは、ネコ好きの方々に共感してもらえるのではないでしょうか。
いつもはブランドの総まとめとして、最後にロゴを作るのですが、今回はいちばん初めにチーズの丸い木箱のラベルをイメージして作りました。その後、クッキー、フィナンシェ、アソートの順でパッケージを製作したのですが、進めていくうちに水沢さんの肩の力がいい感じで抜けたのか、後半に描かれたネコは、あどけないかわいらしさがあるんです。同じネコだけど、ちょっと違う。そんな変化も楽しんでみてください。
お菓子ギャラリー
「ケーキ台の上でチーズや果実と戯れているネコ。一見かわいいのですが、よく見ると無表情(笑)。水沢さんのネコ観察力とネコ愛がよく表われてい
ます」(河西さん)。クッキー カマンベール&レーズン、チェダー&クランベリー、ゴルゴンゾーラ&イチジク各4個入1,080円(税込)
大きめの缶にフィナンシェ8個とクッキー12枚を詰め合わせたフィナンシェ&クッキーアソート5,400円(税込)。「蓋にはロゴ、側面にも画面いっぱいにネコと果実をデザイン。お菓子好きはもちろん、ネコグッズをコレクションしている方にも響く商品になったのではないかと思います」(同上)
「チーズと果実はクッキーと同じ組み合わせですが、しっとり生地のチーズフルーツバーガーでひと味違うおいしさを」(濱田さん)。ネコシェフバーガーセットは、カマンベール&レーズン、チェダー&クランベリー、ゴルゴンゾーラ&イチジク各1個ずつ計3個入1,296円(税込)※要冷蔵
カマンベールチーズを練り込んだ生地に、レモンピールを加えた肉球型のフィナンシェは5個入1,080円、8個入1,728円、12個入2,592円(各税込)でパッケージが違う!「クッキーのイラストに比べると、フィナンシェのネコはタッチがやわらかい。そんな違いにも注目してください」(河西さん)
2020.09.17 Thu