今回は湖池屋のポテトチップス『すっぱムーチョ じゃがうまビネガー』『すっぱムーチョ さっぱり梅』のパッケージで使用されているフォントを紹介。
*本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、プロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
じんわり滲んだニュアンス感のある文字で現代的な癒しを表現
すっぱいだけでなく、爽快な刺激と素材の旨味が感じられる味わいで人気のポテトチップス『すっぱムーチョ』のパッケージ。ビネガーのまろやかな酸味とじゃがいもの旨みが印象的な『じゃがうまビネガー』、梅のほんのりやわらかな酸味やじゅわっとした甘み、じゃがいもの旨みがクセになる『さっぱり梅』の2種類のフレーバーがラインアップされている。
“リフレッシュ&リラックス”をコンセプトにリニューアルされた新パッケージでは、『すっぱムーチョ』の味わいや商品特性が、現代的な癒しを感じさせる文字や配色、ビジュアルなどで表現されている。デザインを担当したクリエイティブカンパニー「ネアンデルタール」によると「リフレッシュしたい。癒されたい。そんな現代人の気持ちに寄り添う商品であることを念頭にデザインしました。じゃがいもの旨味と絶妙なバランスのビネガー・梅の酸味、ブランドの持つ歴史と愛嬌、誠実さを体現するパッケージにフルリニューアルしています」とのこと。
Font.01「秀英にじみ丸ゴシック」
インクの滲みを感じさせる文字でほっこりするような癒し感を演出
商品ロゴのうち「すっぱ」部分はインクのにじみを再現した温かみのある丸ゴシック体「秀英にじみ丸ゴシック」(モリサワ)がベースに。どこかほっこりするような“癒し”感があり、じんわりと滲んだアウトラインが背景に馴染んでみえるため選択された。
ネアンデルタールによれば「『す』にインパクトを持たせるため級数に差をつけて文字を組んでいるので、自然に見えるよう各文字の太さやアウトラインの馴染み感を細かく調整しています。また、フレーバーごとに『ぱ』の半濁音の形を変えて差別化をはかっています。商品名のうち『ムーチョ』部分は、同じムーチョブランドの商品『カラムーチョ』のロゴを使用しています」とのことだ。
Font.02「Stash Regular」
商品ロゴとの相性を考えスタンダードなスクリプト体に
フレーバー「Vinegar」部分の文字は、“洋”のイメージを感じさせるスクリプト体「Stash Regular」(J Foundry)がベースに。ネアンデルタールによれば「商品ロゴとケンカしないよう、クセがなくスタンダードな筆記体を選びました。また文字を組んだ際にリズムがつくよう、斜体を強めています」とのこと。
Font.03「解ミン 宙 R」
商品の味覚を思わせるやわらかい印象の文字に
フレーバー「梅」部分の文字は、“和”のイメージを感じさせる「解ミン 宙 R」(モリサワ)がベースに。明朝体に隷書の特徴を取り入れた独特のフォルムが、商品のイメージにマッチしていたため選択された。
ネアンデルタールによれば「『梅』という文字自体が商品の味覚に直結しているので、少しやわらかい印象を持つ書体を選びました。ウェイトはR(レギュラー)がベースですが、他の要素とのバランスを考えてレギュラーとミディアムの間くらいの太さになるよう加工しています」とのこと。
Font.04「秀英にじみ丸ゴシック」
素材の旨味を意識して温かみのある丸ゴシックを選択
フレーバーの名称「じゃがうまビネガー」部分の文字は、商品ロゴのベースと同じ「秀英にじみ丸ゴシック」(モリサワ)に。素材であるじゃがいもの旨味や、「じゃがうま」という言葉が持つ印象を考慮してインクの滲みを再現した温かみのある書体が選択された。
Font.05「ZENオールド明朝 H」
“和”を感じさせるスタンダードな明朝体に
フレーバーの名称「さっぱり梅」部分の文字は、オーソドックスな骨格を持つオールドスタイルの明朝体「ZENオールド明朝 H」(エイワン)に。“和”を感じさせる書体で、かつ「解ミン 宙」と差別化できるため選択された。
Font.06「秀英にじみ角ゴシック金 B」
商品ロゴに馴染むよう同じルーツの書体を
キャッチ「国産じゃがいも100%」部分の文字はインクのにじみを再現した「秀英にじみ角ゴシック金 B」(モリサワ)がベースに。商品ロゴの「すっぱ」の文字と馴染むように、同じルーツを持つ書体が選択された。小さめの文字サイズで使用するため、若干文字を太めて可読性を高める工夫がされている。
制作者プロフィール
- 株式会社ネアンデルタール
- クリエイティブカンパニー
- アートディレクター石井 原を代表とするクリエイティブカンパニー。2011年設立。マス広告からWeb、インストア展開にいたるまで一貫したクリエイティブディレクションと、それを実現するプロダクション機能を併せ持つ。http://neandertal.jp
2022.04.07 Thu