似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行
使い手に合わせて変化を遂げる天然毛筆の魅力とは
第一回/東京鳩居堂 銀座本店 〜筆編〜 (前編)
都内近郊に点在する画材の専門店をめぐる新連載。大型店ではカバーしきれないマニアックな商品と知識を求め、イラストレーター兼ライターの筆者が専門店に潜入する企画がスタートします。第一回目に訪れたのは、銀座に古くから店を構える「東京鳩居堂 銀座本店」。2階の書道用品売り場で書道用の「筆」に注目します。画材であり文房具でもある筆の世界は、知っているようで知らない魅力が溢れていました。それでは、早速、魅惑の世界をレポートします!
(取材・文・イラスト:阿部愛美)
>>> 第二回目 「伊勢半本店」〜紅(べに)編〜
>>> 第三回目 「喜屋」〜岩絵具編〜
>>> 第四回目 「ならや本舗」〜墨編〜
>>> 第五回目 「うぶけや」 〜はさみ編〜
>>> 第六回目 「山形屋紙店」 〜和紙編〜
>>> 第七回目 「インクスタンド」 〜カラーインク編〜
>>> 第八回目 「ラピアーツ」 〜額縁編〜
>>> 第九回目 「箔座日本橋」 〜金箔編〜
>>> 番外編 「菊屋」 〜左利き用品編〜
>>> 第十回目 「宝研堂」 〜硯編〜
>>> 最終回 「岩井つづら店」 〜つづら編〜
「ここにある筆はほぼすべて鳩居堂製です。主に京都の工房で作っているんですよ」と、教えてくれたのは、東京鳩居堂で接客販売をする大橋裕太さん。
絵画用の平筆や面相筆と違い、書道用の筆は見た目がほとんど同じように見えるのだが一体どのように選ぶのだろう。
「用途とは、『漢字』と『かな』どちらを書くかで分けることができます。 かなは細い線で書きますので、一般的に固い筆が向いていると言われていますね。漢字は書く人の好みによっても変わりますので、幅広い種類の筆が使われます」とのこと。
今でこそ日本語の表記は漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベットが混在しているが、元々は漢字とかなのみの世界。そのため、このように2つに分けられているという。 大きさと固さはどうだろう。
「大きさは文字の大きさに比例すると考えてください。固さについても、 固い筆を使うことで固い線が表現できます。この『固さ』に直接関係してくるのが毛の種類です。鳩居堂では、柔らかい順に羊(山羊の毛のこと)、イタチ 、狸、馬を使った筆をメインに取り扱っています。なかでも羊の毛は高級品で、柔らかく墨の含みが良いのが特徴です」。(大橋さん)
一般的な水彩画筆であれば、水の含みが良いのはコリンスキー(イタチ)やテンなどの毛と言われているが、羊はそれよりもふわふわしていて柔らかく、技術がないとコントロールが難しそうだ。絵を描く時は何本もの筆を使い分けるが、書道は基本的に1本のみ。どんな文字をどのくらいの大きさで、何文字書くのかといった詳細をあらかじめ決めておくことが作品づくりの要となりそうだ。
大橋さんは幼い頃から書道を習いはじめたそうだが、本格的に書道の道に進み始めたのは高校から。学校の先生に誘われて書道部に入部したことがきっかけとなり、大学では文学部の書道専攻へ。今では鳩居堂に勤めながら、書道教室にも通っているという。
筆と水の量の違いだけでも、仕上がりには明らかな差がある。文字の大きさや線の強弱、かすれ具合に違いが見てとれる。
筆はもちろん、どんな紙や墨、硯を使うかによっても結果は全く変わるという。さまざまな組み合わせを試みた結果をストックしておくことで、表現したいことに合わせて道具を選ぶそうだ。
>>> 第二回目 「伊勢半本店」〜紅(べに)編〜
>>> 第三回目 「喜屋」〜岩絵具編〜
>>> 第四回目 「ならや本舗」〜墨編〜
>>> 第五回目 「うぶけや」 〜はさみ編〜
>>> 第六回目 「山形屋紙店」 〜和紙編〜
>>> 第七回目 「インクスタンド」 〜カラーインク編〜
>>> 第八回目 「ラピアーツ」 〜額縁編〜
>>> 第九回目 「箔座日本橋」 〜金箔編〜
>>> 番外編 「菊屋」 〜左利き用品編〜
>>> 第十回目 「宝研堂」 〜硯編〜
>>> 最終回 「岩井つづら店」 〜つづら編〜
1663年に京都で創業したお香、書画用品、はがき、便箋、金封、和紙製品の専門店。1880年に東京・銀座に出店し、現在にいたる。今回取材した書道用品はお香と一緒に店舗2階で販売しており、1階は、オリジナルのはがきや和紙のほか和小物を中心に取り揃え、昔からの常連や、外国人観光客でいつも賑わっている。
住所/東京都中央区銀座5-7-4
営業時間/10:00~19:00 (平日・土曜)、11:00~19:00(日曜・祝日)
TEL/03-3571-4429
URL:http://www.kyukyodo.co.jp/