あべちゃんのサブカル画材屋 紀行/知っているようで知らない和紙の世界 第六回 山形屋紙店 〜和紙編〜 ① | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

あべちゃんのサブカル画材屋 紀行/知っているようで知らない和紙の世界 第六回 山形屋紙店 〜和紙編〜 ①

2024.4.25 THU

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似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行


知っているようで知らない和紙の世界
第六回/山形屋紙店 〜和紙編〜 ①

山形屋紙展の田記さん(中央)と吉澤さん(右)

山形屋紙展の田記さん(中央)と吉澤さん(右)

都内近郊に点在する画材や文具の専門店をめぐる連載企画。大型店ではカバーしきれないマニアックな商品と知識を求め、イラストレーター兼ライターの筆者が専門店に潜入します。今回訪れたのは、東京・神田の神保町にある和紙専門店の「山形屋紙店」。誰もが知っている和紙の、誰もが知るわけではない材料と作られ方、そして特徴に迫ります。

(取材・文・イラスト:阿部愛美)


<<< 第一回目 「鳩居堂本店」〜筆編〜
<<< 第二回目 「伊勢半本店」〜紅(べに)編〜
<<< 第三回目 「喜屋」〜岩絵具編〜
<<< 第四回目 「ならや本舗」〜墨編〜
<<< 第五回目 「うぶけや」 〜はさみ編〜
>>> 第七回目 「インクスタンド」 〜カラーインク編〜
>>> 第八回目 「ラピアーツ」 〜額縁編〜
>>> 第九回目 「箔座日本橋」 〜金箔編〜
>>> 番外編    「菊屋」 〜左利き用品編〜
>>> 第十回目 「宝研堂」 〜硯編〜
>>> 最終回  「岩井つづら店」 〜つづら編〜

和紙を買いに専門店へ。創業139年の「山形屋紙店」
先日、五反田の書道用具店「ならや本舗」にて、念願の固形墨を手に入れた。意気揚々と家に帰り「さあ、試すぞ!」と、購入した墨と硯、そして筆を机の上に並べてみる。そして、はたと気づいた。

紙がない。

いや、あることはある。コピー用紙、ケント紙、画用紙、水彩紙……。こんなにあるのに、「和紙」がない。やはり墨を使うなら、和紙でないと……!! と、駆け込んだのは、東京・神田神保町にある和紙専門店「山形屋紙店」。1879年創業の老舗和紙店だ。

こじんまりとした店内に入ると、引き出しのなかや棚、壁に至るまで和紙製品がずらり。はがきや便箋、千代紙、ぽち袋など文具店で馴染みのものから、障子紙、襖紙、和帳(※1)、張り子まで。「そうか、これも和紙か……!」と、その幅広い活用方法に気づかされるはずだ。

※1)和帳……「和式帳簿」の略称。元来は帳簿用だが、現在ではノートにしたりさまざまな使い方をされている。 どれも長く使用・保存できることが特徴
店頭にはさまざまな紙が彩り豊かに並べられている。千代紙や染め紙は外国人にも人気なのだとか

店頭にはさまざまな紙が彩り豊かに並べられている。千代紙や染め紙は外国人にも人気なのだとか

家庭で使われる障子紙も確かに和紙だ

家庭で使われる障子紙も確かに和紙だ

さて、どんな紙にしよう。

「墨に適した紙は色々ございます。書道用紙や水墨画用紙はもちろんですが、日本画用紙、版画用紙、写経用紙、拓本(※2)用紙まで、用途別に用意があります。とはいえ、絵を描くのに書道用の画仙紙(※3)を好んで使う方もいらっしゃいますので、用途にこだわらず、表現に合わせて紙を選ばれた方がいいでしょう。具体的にこんな絵や字を描きたい、こんな滲みを出したい、これと同じ紙が欲しい、など仰って頂ければいくつかご提案致します」

と、声をかけてくれたのは、山形屋紙店4代目社長の奥様、田記 有子(たき・ゆうこ)さん。

店内の壁の取っ手をおもむろに引くと、そこには大きなサイズの和紙がびっしりと詰め込まれていた。まさかこんなところに収納されているとは思いもよらず、驚いた……!!
※2)拓本(たくほん)……石碑や金属器などに刻まれた文字や模様を紙を押し当てて写し取るもの
※3)画仙紙(がせんし)……書道につかう大判の和紙
引き出しには紙が産地別にびっしりと詰まっていた

引き出しには紙が産地別にびっしりと詰まっていた

「ここに入っているのは、二・三版(約60×90センチメートルの大きさ)のもの。絵を書かれる方はこのくらいあるといいかもしれませんね」と、田記さん。

日本全国各地には、約100種類もの和紙があるそうで、紙には地名が書かれていた。産地によって、材料や漉き方、見た目、使い心地が異なるという。

「うちで一番取り扱いが多いのは、福井県の越前和紙。それから、肥前名尾和紙(佐賀)や、ユネスコの無形文化遺産に登録された、美濃和紙(岐阜)や細川紙(埼玉・小川町) も昔から取り扱っています。ほかにも石州和紙(島根)、黒谷和紙(京都)、悠久紙(富山)……など、産地だけでも選択肢は多いですね」

店内に並び切らない商品が、店舗の3階や地下、蔵にも置いてあるという。店内の商品は、山形屋紙店で扱っている和紙のごく一部というわけだ。
日本各地のはがきが揃っている。まずは手頃なサイズで各地の紙を試してみるのも楽しい

日本各地のはがきが揃っている。まずは手頃なサイズで各地の紙を試してみるのも楽しい

白いものばかりではなく、自然の生成り色や、繊維が入ったもの、色付きのものまでさまざま

白いものばかりではなく、自然の生成り色や、繊維が入ったもの、色付きのものまでさまざま

便箋も地域ごとに選ぶことができる

便箋も地域ごとに選ぶことができる

山形屋紙店の商品案内

山形屋紙店の商品案内

次のページは「和紙って一体なんだろう? 」

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●山形屋紙店
明治12年(1879年)創業の、和紙専門店。初代・田記 俵次郎(たき・ひょうじろう)が日本橋の「松本紙店」につとめ、その後のれんわけする形で独立。東京・神保町に「山形屋」の店舗を構えた。以後130年、同じ場所で紙店を営んでいる。店の裏手には、大正2年の神田の大火、関東大震災、東京大空襲にも耐え抜いた貴重な蔵があり、外からでも3階建てのレンガ造りの蔵を見ることができる。店内には楮紙、奉書紙、書道用半紙、障子紙、千代紙、手芸用和紙をはじめ、オリジナルの便箋、封筒、カード類、ポチ袋などの取り扱いがある。

住所/東京都千代田区神田神保町2-17
アクセス/都営新宿線・半蔵門線・都営三田線 「神保町駅」A6出口より徒歩1分
営業時間/10:00〜18:00
休業日/土・日曜日、祝日
TEL/03-3263-0801
URL http://www.yamagataya-kamiten.co.jp/
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