今回はコミックス『カワセミさんの釣りごはん 1』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
温かみのある文字で素朴かつ真摯な印象に
田舎に転校してきた内気な女子高生のカワセミが、クラスメイトのミサゴに誘われて始める「釣りごはん生活」をテーマにしたアウトドア漫画『カワセミさんの釣りごはん 1』の表紙カバー。
外見も性格も正反対の二人の関係をコミカルに描きつつ「釣り」と「料理」に真摯に向き合う作者の姿勢や作品の内容の濃さが、印象的なメインイラストと温かみのあるタイトル文字、分かりやすく素朴な味わいのあるレイアウトなどで表現されている。
Font.01「オリジナル」
アナログ的な文字で素朴な温かさを表現
タイトルのうち「釣りごはん」部分の文字は、作品の雰囲気に近い手書き風のデザイン書体「タカ大海」(タカデザインプロダクション)で仮組みした後に、よりイメージに合うよう新たに作り起こされたもの。
「釣り」や「料理」に真摯に向き合う作風を表現するため、「タカ大海」のエレメントに見られる遊び要素は控えめにしてベーシックなフォルムにし、文字の強弱でリズム感が出るよう意識して作り起こされた。タイトルの中でも鍵になる漢字の「釣」については、安定感を重視しつつ、あえて魚のシルエットをあしらうという定番技法を取り入れることで懐かしさが感じられるよう工夫されている。
Font.02「筑紫B丸ゴシック B」
コンセプトに合わせ温かく誠実な書体に
タイトルのうち「カワセミさんの」部分の文字は、クラシカルでエレガントな丸ゴシック体「筑紫B丸ゴシック B」(フォントワークス)。温かく優しい印象でありながら誠実さも感じるデザインが、素朴かつ真摯な作品にぴったりだったために選択された。
Font.03「筑紫B丸ゴシック E」
他の文字要素に合わせ優しい丸ゴシック体に
著者名部分は、表紙カバーのコンセプトや他の文字要素との相性を意識し、優しく温かみのある丸ゴシック体「筑紫B丸ゴシック E」に。著者名の欧文表記は、それより少しウェイトの細い「筑紫B丸ゴシック D」(ともにフォントワークス)が選択されている。
2020.02.13 Thu2021.09.03 Fri