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作業が捗る!クリエイティブワークが楽になる作業効率化「Tips」

2024.02.29 Thu

値上げでユーザー離れ&Webデザイン領域から撤退の噂も...

Adobeの次なる戦略の考察とクリエイターの時代の変化に負けない作業環境の構築を考える

文・画像:塚本建未

脱Adobeの是非と有力代替ツール

Adobeの代替ツール候補


Webデザイン領域に関しての今後の動向以上に、ユーザーにとっての関心事は料金の値上げでしょう。学割プランなど様々な裏技を使って料金を安くする試みを行う人もいれば、ライトユーザーを中心に脱Adobeを検討しているクリエイターも出始めています。しかし、クリエイターの業種によって、脱Adobeが可能か否かは異なります。最後に、加入するプランの見直しや代替ツールも含めて、作業環境を構築する上でどのツールを優先すべきかを見極めていきましょう。

クリエイター業種別コスト削減対策
Adobeはクリエイティブツール業界において、寡占状況にあるものの、競合のツールが存在しない訳ではありません。プロユースという観点からは圧倒的なシェアを誇るAdobeですが、買い切り・無料・オープンソースといった領域においては、安定した人気を獲得しているツールが存在します。こうした代替候補となるツールも含めて、Adobeを利用していると考えられるクリエイター業種別に、クリエイティブツールのコスト削減対策を考えてみましょう。

紙媒体をメインに活動するデザイナー
DTP領域に関しては、どんなにクリエイターが利用する端末環境が進化したとしても、堅牢な現行の印刷システムを簡単に変えることはできないという壁があります。印刷関連機器は、安定した稼働が優先されるため、アップデートというのは慎重な投資判断が必要になりAdobeの優位性は今後も変わらないと予測されるのです。したがって、印刷関連の制作物に携わるクリエイターや企業は、脱Adobeはほぼ不可能であるといって過言ではありません。紙媒体メインのデザイナーは、モリサワパスポートのライセンス料などもランニングコストに含まれてきますので、それら以外のサブスク料金を見直すほうが良いでしょう。

Web制作・アプリ制作をメインに活動するデザイナー
Webやアプリの制作をメインとするフリーランスのデザイナーは、脱Adobeは検討してもよい事柄なのかもしれません。その場合は、Figmaの上位有料プランに加入することを前提として、IllustratorやPhotoshopの代替ツールとしては、買い切りで購入可能なプロユース向けツールを開発・提供するAffinityのツール(Affinity Designer、Affinity Photo)が候補になるでしょう。ただし、対応できるクライアントにも制限が出てくる可能性もあるため、顧客層の分析を十分に行ってから検討しましょう。デザイン会社や企業のデザイン関連部署については、脱Adobeは難しいと思いますが、契約台数を減らして予備のツールとして買い切りのツールも利用していくという対策は可能でしょう。

イラストレーター・漫画家
現在もPhotoshopでイラスト作成をしているイラストレーター・漫画家は少なくなっていると思いますが、使い慣れているという理由で他のペイントツールへ移行していない人もいるでしょう。その場合は今回の料金値上げを機会にCLIP STUDIOに乗り換えるのも一つの手かもしれません。Illustratorでイラスト作成をしているイラストレーターの場合は、Affinity Designerなども視野に入りますが、納品時のトラブル回避なども考慮すると継続してコンプリートプランの場合は単体プランに切り替えするなどしてAdobeを利用し続けたほうが良いと思われます。

関連記事:デザイナーこそ使うべきペイントツール「CLIP STUDIO PAINT」をデザイン現場で活用する方法

写真家
写真家はもともとAdobeがPhotoプランを提供していますので、料金値上げは苦しいところですが、積極的に脱Adobeする理由は見当たらないかもしれません。ただ、RAW現像・写真加工・編集ツールに関してはプロユースの代替ツールが数多く存在しますので、特に芸術活動などクライアントワーク以外で写真撮影を行うといった場合においては、乗り換えを検討しても良いのかもしれません。

 編集者・ライター
前述のように印刷関連の制作物に携わる業種は脱Adobeは難しいと思われますが、出版社の編集部であれば、すべての端末に一律で同じプランを導入する必要性はないので、端末によってInDesignファイルのテキスト部分だけ編集可能なInCopy単体プランの利用を検討するといった対策も考えられます。また、近年はPDF入稿(PDF/X-1aやPDF/X-4など)も可能になってきましたので、同人誌を作りたいといったケースなどにおいてはAffinity DesignerやAffinity Publisherを代替にすることを検討しても良いかもしれません。

動画クリエイター・動画編集者・アニメーター
動画編集やアニメーション編集には、Adobeの競合となるプロユースのツールが数多く存在します。それらの料金体系と比較して、脱Adobeを検討することも可能でしょう。ただし、凝ったサムネイル画像やモーショングラフィックなどを動画と合わせて制作する場合はコンプリートプランを利用するほうが結果的にコストを抑えられる可能性が高いでしょう。

以下に、有力なツールの候補を表にしましたので参考にしてみてください。

有力代替ツール候補一覧表

Illustratorの代替ツール

Affinity Designerプロユースな機能を多数搭載したベクターグラフィックソフト買い切りで購入できる。
Inkscape無料で利用できるベクターグラフィックソフト。


Photoshopの代替ツール

Affinity Photoプロユースな機能を多数搭載した写真編集ソフト。買い切りで購入できる。
GIMP無料で利用できる画像編集ソフト。
CLIP STUDIO PAINTイラスト制作・マンガ制作用のソフト。アニメーションの制作も可能。数多くの良心的プランが用意されており買い切りプランも提供。


InDesignの代替ツール

Affinity Publisher プロユースな機能を多数搭載したDTPソフト。買い切りで購入できる。


Lightroomの代替ツール

PhotoDirectorRAW現像ソフト。サブスクだがAdobeのフォトプランより安価な料金で利用可能。
AfterShot proRAW現像ソフト。買い切りで購入可能。
SILKYPIX日本製のRAW現像ソフト。買い切りで購入可能。


Premiere Proの代替ツール

Final Cut Pro X  Appleが提供する動画編集ソフト。買い切りで購入可能。
PowerDirectorAI技術を搭載した動画編集ソフト。サブスクだがPremiere Pro単体プランより安価な料金で利用可能。
DaVinci Resolveプロ向けの動画編集ソフト。それなりの価格であるものの買い切りで購入可能。


After Effectsの代替ツール

Motion      Appleが提供するモーショングラフィックソフト。買い切りで購入可能。

上記に挙げた以外にも、Adobeの代替ツールの候補になるソフトは存在します。クリエイティブツールにおけるAdobeの寡占状態が進むことはユーザーにとって決して望ましいことではありませんので、時にはコストパフォーマンスを重視するなど、他のツールを選択していくことも時代の変化に負けない作業環境を構築には重要かもしれません。

まとめ

本記事でAdobeという企業を俯瞰して考察する過程で、クリエイティブ業界の発達や進化にAdobeがいかに貢献してきたのかということを再認識できたかと思います。一方で、Adobeは料金の値上げの理由について生成AI機能の追加などによる付加価値向上であるとしていますが、その機能がクリエイターにとって本当に必要なのか、バージョンアップによって生じた不具合を修正・改善するほうが先なのではないか、といった疑問は残ります。

買い切りのパッケージとして発売されていたAdobe Creative Suiteでは、DTP用パッケージの「Design」、Web制作用パッケージの「Web」といったように用途別にツールを揃えることが可能で、バージョンによりそれぞれStandardとPremiumという価格帯も選択可能でした。その当時は、「Adobe税」などと揶揄するユーザーは少なかったと思います。

それぞれがどんな選択をするにせよ、Adobeの今後の動向がクリエイターに与える影響は大きいでしょう。昨今の事情から料金値上げがやむを得ないことだとしても、以前のように目的や用途に合わせた良心的なプランを提供することが、Adobeが今後もクリエイターに支持される企業であり続けるための重要な施策なのではないでしょうか。次なる戦略に期待しつつ、ユーザーとしてしっかりとAdobeの動向を見守っていきましょう。
 

著者プロフィール

塚本 建未
ライター・編集者・イラストレーター
フリーランスのライター・編集者・イラストレーター。高校はデザイン科を卒業し、大学は、文学部とスポーツ科学部の2つの学部を卒業。フィットネス・トレーニング関連の専門誌で編集者・ライターとしてキャリアを積む。メインの活動の場をWebメディアに移行してからは、ITツール紹介やWebマーケティング分野などを得意領域として活動を続けている。
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