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MacBook AirかiPad Proか クリエイターが選ぶべきモバイルデバイス

2018.12.16 SUN

MacBook AirかiPad Proか
クリエイターが選ぶべきモバイルデバイス

2018年11月30日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)
前回のコラムで筆者は、アップルが一般ユーザーが最初に買う、もしくは日常的に使うモバイルプラットフォームをMaciBook AirからiPad Proへとシフトしようとしているとの見方を示した。今回はクリエイターが選ぶべきモバイルデバイスとは果たしてどんなものなのか。ディスプレイ、入力デバイス、ポート類、拡張性など様々な側面から改めて考えてみようと思う。
▷ クリエイターも無視できないモバイル環境
作業環境の一部をiPad Proへと移行するクリエイターが現れた一方で、Macintoshを利用しているクリエイターの中には、メインマシンとしてのデスクトップMacとサブマシンとしてのノートMacを併用したり、外付けディスプレイと組み合わせてMacBook Proですべての仕事をこなす人もいる。

さらには、ロケや打ち合わせで移動する時間が長いため、MacBookがメインマシンとなり、それらを中心に作業しているというクリエイターも存在しており、ビデオの書き出し作業にはやや時間がかかるものの、編集自体は十分にこなせるという声も聞く。

なぜ、旧MacBook AirではなくMacBookかといえば、ディスプレイの差に尽きる。前者の1440x900ピクセルというLCDは、解像度が低いだけでなく発色においても数年前の水準であり、それだけでデザイン系の処理には向いていなかったのである。

実際に自分自身でも、頻度はそれほど多くはないものの、ここしばらくは動画編集をMacBook(Early 2015モデル)で行なってきた経験があり、書き出し時間を除けば特に痛痒は感じなかった。CPU単体の性能では、MacBook ProはもちろんMacBook Airにも明らかに劣っていながら、それが可能だったのは、やはりアップルが、CPUや各種コンポーネントの特性を熟知した上で、OSとハードとソフトを統合的に開発している強みといえ、限られたパワーでも最大限に引き出す術に長けているからといえよう。

となれば、ディスプレイがRetina化され、eGPU(外付けGPU)もサポートされた新型MacBook Airは、最大の弱点が克服されたことになり、クリエイターにとっても俄然、魅力が出てくる。そして、進化したApple Pencilが使え、MacBook Pro並みのグラフィック性能を秘めた新型iPad Proも、クリエイターのツールとしての資格十分だ。そのため、どちらを選ぶべきかということで迷っても不思議ではない。そこで、私見ではあるが、その答えを考えてみることにした。

ここで、真っ先に対象から外れるユーザー層をはっきりさせておくと、ビデオ編集が中心でコンスタントに書き出し処理も行うような使い方をする人は、デスクトップMacやMacBook Proのほうが適している。

同じく、ツールパレットを一度に数多く表示させることを好むクリエイターは、一見、ノートMacやタブレット向きではないように思える。しかし、実際にはMacBook AirでもiPad Proでも最低4Kレベルの外付けディスプレイを接続して大画面を利用することができるため、この点は、さほど問題とはならない。むしろ、外付けディスプレイを外せば、そのまま自分の作業環境を外に持ち出せるというメリットを積極的に評価するべきだ。
▷ 単体での画質とペン機能ではiPad Proに軍配

まず、MacBook Airのディスプレイについては、「最大の弱点が克服され」て「Retina化され」たと書いたが、同じRetinaでもMacBook Proのような広色域のP3カラースペース(Display 3ともいう)には対応していない。

アップルが提唱するP3というカラースペースは、WebやアプリなどグラフィックスをターゲットにしたsRGBを完全に内包し、DTP業界における事実上の標準カラースペースであるAdobe RGBに匹敵する規格になっている(Adobe RGBのほうが青~濃緑系の範囲が広く、P3のほうが赤系の範囲が広い)。ざっくりいうと、一般的なディスプレイ表示ならばsRGB、印刷目的であればAdobe RGB、デジタルムービー/ビデオ業界向けがP3という棲み分けになる。

アップルは、iPhoneでは7以降の全機種、iPadでは9.7インチモデル以降のiPad Pro、そしてRetinaディスプレイ搭載のiMacでP3対応を果たしているが、MacBookとMacBook AirのRetinaディスプレイはP3対応ではない。したがって、製品単体で考えると、MacBook AirはWeb系のデザイナーやアプリのグラフィック/UI/UX系デザイナーであれば問題なく利用できるものの、プリントメディアのグラフィックデザイナーやフォトグラファー、ビデオグラファー向きとはいいがたい部分がある。しかし、ニーズに合わせてメモリとストレージを拡張したうえで普段の仕事ではP3対応の外付けディスプレイやeGPUユニットと接続して利用し、打ち合わせやプレゼンでは身軽さを活かすような使い方であれば、十分、実用になるはずだ。

対するiPad Proは、P3対応のRetinaディスプレイを搭載し、グラフィックスを含めた処理能力も単体でMacBook Proに比肩するほど高い。そして何より、新たに無接点充電に対応し、スケッチワークやドローイングに威力を発揮する第2世代のApple Pencilを利用できることから、特にグラフィック系のデザイナーやイラストレーター、コミック制作者にお薦めできる。

ちなみに、両者のディスプレイ解像度は、MacBook AIrが2560x1600ピクセルで227ppi、iPad Proが2,388x1,668px, 264ppi(11インチモデル)か2,732x2,048px, 264ppi(12.9インチモデル)とほぼ互角だが、同じ13インチ級同士ではiPad Proのほうが横方向に200ピクセル弱、縦方向に400ピクセル強も多い。モバイル環境でもできるだけ描画スペースを確保したいというのであれば、この差は無視できない。

加えて、外付けディスプレイの解像度も、MacBook Airでは最大4Kだが、iPad Proは最大5Kであり、4Kディスプレイならば2台同時接続も可能だ。従来のiPad Proもプロのフォトグラファーの現場機材として認知されていたが、新型は、この分野でさらなる普及が見込まれるだろう。

▷ 拡張性とアプリの充実度は(現状)MacBook Airが有利だが…
現時点で、MacBook Airのほうが圧倒的に有利なのが、拡張性とデザイン現場で利用されている定番アプリの充実度だ。iPad ProもコネクタがUSB-Cになり、一見、MacBook Airと同等の拡張性を備えたように思われる。しかし、実際には標準の写真アプリでデジタルカメラを直結したり、SDカードリーダーを接続してメモリカードやUSBメモリ(ただし、標準的なディレクトリ構成のものに限る)から写真や動画データの転送はできるものの、キーボード以外の周辺機器や一般的なストレージデバイスは未サポートだ。

また、たとえば、iPad用のAdobe Lightroom CCは、RAW現像もでき、Apple Pencilを用いて現像時のマスキングなども直感的に行えるため評価が高く、Procreateなどの定評あるiPad専用イラストアプリも存在するが、今はまだAdobeの主要アプリの完全版やMacで定番のデザイン系アプリをすべて利用できるわけではない。

拡張性は今後のiOSのバージョンアップによって改善される可能性があり、アプリも2019年に予定されているAdobe Photoshop CCのフル対応を皮切りにMacバージョンからの移植に弾みがつくものと考えられるが、ここしばらくは何らかの代替アプリを見つけて対応する必要がある。

このような状況から、もしすでにMac環境でのワークフローが確立していて、そこからはみ出すようなことはしたくない、あるいははみ出す余裕がないということであれば、モバイル対応はMacBook Airで図るほうが良いだろう。

しかし、新たなクリエイティブ環境を学ぶ気持ちや挑戦する気構えがあるなら、個人的にはiPad Proをお薦めしたい。それは、MacBook Proよりも安価に同等の性能を発揮でき、現状でもMac環境を補完するツールとして利用可能なためだ。そして、アップルが、これから今までにも増してiPad Proを核とするクリエイティブワークフローの充実に力を入れてくることは明らかであり、今からそれに備えておくことが重要と思うからである。
[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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