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ソフトバンクの通信障害とデータシェアプランの盲点

2019.10.16 WED

ソフトバンクの通信障害とデータシェアプランの盲点
2018年12月21日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)
先日、日本のソフトバンクに加えて世界各地でも同時発生した通信障害によって筆者も影響を受け、Wi-Fiを求めてしばし東京の街をさまよった。また、その少し前に、自前の新型iPad Pro(11インチLTEモデル)が、なぜか4Gネットワークに繋がらず、かつ、3Gの表示は出ているもののモバイル通信ができないという状況に陥った。それぞれ原因は異なるものの、どちらも思いもよらぬところに原因があり、だからこそ何の備えもなく急な発生によってあたふたする事態となったわけだが、今回は、この2つの出来事から得た教訓を綴ってみたい。

なお、時系列的に、iPad Proの問題が先に発生し、それが、ソフトバンクの通信障害の際の自分の判断にも影響したので、その順番で書くことにする。
▷ ジーニアスも突き止められなかった4G接続不能問題
実は、今使っている新型iPad Proは、3台目である。最初にオンラインのApple Storeで予約して製品が届いたとき、たまたま出張が重なり、ウルトラギガモンスターのギガ数を使い切る寸前だったため、一時的にポケットWi-Fiをレンタルし、そこにつないで利用していた。つまり、購入時点から基本的には携帯回線につなぐことなく使っていたので不具合に気づかなかったのだが、2週間のレンタル期限が終わる頃にモバイルデータ通信に切り替えると、一瞬だけ4Gの表示が画面の上に現れたがすぐに3Gとなり、しかもインターネットに接続できなくなったのだ。

この問題は上京中に起こったため、まずはApple Store 表参道に持ち込んだところ、引き取りサービスによる修理扱いとなった。もちろん、事前に自分でもリセットや初期化など、考えられる策はすべて試し、同じことをジーニアスバーのスタッフも試み、さらにSIMカードを別のマシンに入れて4Gの表示が出ることを確認した末のことである。原因は、デバイス側にあるとしか考えられなかった。

交換ではなく修理となったのは、担当したジーニアスバーのスタッフの配慮で、交換品を待つよりも修理のほうが早いと判断されたためだ。交換の場合、該当モデルの品薄により、最低でも1週間はかかるとのことだった。

引き取りと修理は迅速に行われ、数日で手元に戻ってきたのだが、アクティベートしてみると、やはり同じ症状が出る。しかも、シリアルナンバーが新しくなっていたので、実際には修理ではなく新品と交換された個体だということがわかった。

念のため、大阪の自宅近くのソフトバンクショップで改めてSIMカードを確認してもらい、スタッフの厚意でカード自体も新しいものにしたにもかかわらず、症状は出続けた。仕方なく今度はApple Store 心斎橋に持ち込み、またルーチン的にすべての手順を踏んだが、埒が明かない。
結局、レアケースながら2回続けて同じ不良のある個体に当たった可能性があると判断され、再び交換することになったのだが、依然として在庫はなく、代替品が店に届くのを待つことにした。

モバイル通信ができないとはいえ、Wi-Fiにつなげば正常に機能する。また、初代iPad Proも手元に残してあり、こちらにSIMを戻せば、何事もなかったかのように4Gに接続されるため、実用上は困らなかった。

交換まで1週間程度かかることを覚悟していたが、3日ほどで連絡があり、再びApple Store 心斎橋へ。ところが、3台目をその場でチェックしてみると、またもや同じ症状が出たのである。ここに至って、ジーニアスたちもお手上げとなり、もう一度、ソフトバンクに相談してみることにした。
▷ APN設定の謎 ― プランや製品構成の違いによる影響か?

このように長々と経緯を書き出してみたのは、ここまでしても、Apple Storeもソフトバンクも、そしてもちろん自分も、不具合の原因を突き止められなかったということを理解していただくためだ。それほどまでに謎の症状だったわけだが、それを解く鍵はまさかと思うところにあった。

2度目のソフトバンクショップには、初代iPad ProでSIMが正常に機能することを見せるために新型と両方を持っていったのだが、このSIMの入れ替えを含めて、若い男性スタッフと一緒にああでもない、こうでもないと思いつくことを色々と試してみた。

1つ疑われたのは、モバイルデータ通信のAPN設定というものだ。APNとは、Access Point Name(アクセス・ポイント・ネーム)の略で、携帯電話とインターネットという異なる通信網をゲートウェイを介して接続する際に、システムがキャリアやユーザーIDを確認するための情報を指す。

製品をキャリアから購入した場合、APNは、あらかじめ正しい設定がなされている。また、そうでない場合も、一括設定のプロファイルをダウンロードしてインストールすることで、自動的に設定されるはずだ。

今回、筆者の新型iPad Proはアップルの直販で購入したSIMロックフリー端末だったが、初代iPad Proのバックアップから復元したので、当然、APN設定も引き継がれているものと思っていた。また、障害発生後に念のため公式のプロファイルを再インストールしており、不備はないものと思われた。

事実、Apple StoreでもソフトバンクショップでもAPN設定は確認済みで、ネット上のソフトバンク向けの設定情報の通りだったため、スルーしていた部分ではあった(具体的には、APN名:jpspir、ユーザー名:sirobit、パスワード:amstkoi)。

しかし、ソフトバンクショップのスタッフの思いつきで、初代iPad ProのAPN設定を直接確認してみると、まったく異なる設定がなされていたのである(同じく、APN名:sbm4glte、ユーザー名:data、パスワード:softbank)。

これを新型iPad ProのAPN設定に適用したところ、「ほぼ」問題なく4G接続とモバイルデータ通信ができるようになった。「ほぼ」というのは、この状態でも、ローミング設定をオンにしないと4Gに接続されないためだ。ショップスタッフによれば国内でローミング設定がオンになっていても支障はないとのことであり、また、これ以上、何かをいじって再び通信不能となっても困るため、とりあえずは現状のまま利用することにした。

APN設定が通常と異なっていたのは、どうやら筆者が加入しているデータシェアプラン(iPhoneとiPad Proでギガ数を分け合うプラン)が関係しているようだ。以前は両製品ともソフトバンクから購入したが、今回、そのうちの1台だけを直販分で置き換えたことがAPN設定に何らかの影響を与えた模様である。先のショップスタッフの話でも、最近はプランや製品構成が複雑なため、それ以上のことはわかりかねるということだった。

念のために付け加えると、Apple Storeとソフトバンクショップ、どちらのスタッフもプロとして真摯に対応してくれ、その点では申し分なかった。また、筆者のケースは珍しいとはいえ、他のユーザーの身にも起こる可能性はゼロではないため、APN設定の件を改めてジーニアスにも伝え、参考にしてもらえるよう手配した。
▷ そしてソフトバンクの通信障害、偶然の重なりが判断を鈍らせる
その後、ソフトバンクに通信障害が発生した日は再び上京中だったのだが、上のような体験をしていたことや、たまたま作業途中の新型iPad Proで急にネット接続ができなくなったことから、すぐに思い浮かんだのは、APN設定だけでは問題が解決せず、症状がぶり返したのではないかという考えだった。

ところが、iPhoneによる通話もできなくなっていたので、ようやく回線側の障害を疑うに至り、最終的にテレビのNHKのニュースで何が起こっているかを理解した。

しかし、すぐにでも送らねばならない原稿があったため、Wi-Fi接続ができるところを求めて自転車で移動を開始し、最初は原宿のソフトバンク旗艦店に向かった。途中でサラリーマン風の男性から公衆電話の場所を訊かれたものの、あいにく近くには心当たりがなく、フリーWi-Fiが使えるカフェなどを探してみてはとアドバイスした。

旗艦店に着いてみると、ソフトバンクはショップのWi-Fiも障害に巻き込まれて利用できない状態にあったため、すぐに目的地をApple Store 表参道に変更。こちらではさしたる混乱は見られず、無事に原稿も送信することができた。

ということで、自分の身に立て続けに起こった2つの出来事は、あって当然、動いて当然と思えるものが急に機能を停止することの不便さを、今更ながらに痛感させた。そして、直近の出来事によって、判断が左右されたことに苦笑した。

今後もテクノロジーは否応なく複雑さを増し、ときに前触れなく機能することをやめて、人々を惑わせることだろう。特にディープラーニングに基づくAIが下す判断は、なぜそうなるのかという理由を開発者自身も把握できない場合がある。

自ら考えて行動するという当たり前のことが無意識のうちにできなくなってきている危険性を自覚し、デジタルとアナログのバランスをとって生活することの大切さを改めて考えるべきときに来ていると感じた。
[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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