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今年のiPhoneは“買い”なのか。2019年秋アップルの新商品&サービスの真価を問う

2019.10.19 SAT

今年のiPhoneは“買い”なのか。2019年秋アップルの新商品&サービスの真価を問う

2019年10月11日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)
9月に行われたアップルの秋のスペシャルイベントから一ヵ月あまりが経ち、新製品の評価や売り上げ動向なども明らかになってきた。筆者も自前のiPhone 11 ProやApple Arcadeを利用して新たな発見があったので、この機会に発表内容を振り返りながら、新サービスと新製品、特にiPhone 11シリーズをどう受け止めるべきかについて記しておくことにした。
▷ 2019年秋、アップルが打ち出した3つのサプライズ
まず、予想の自己採点をしておくと、新型iPad ProとMacBook Proの16インチモデルについては、おそらく10月末に再度行うと思われるもう1つのスペシャルイベントまで先送りとなった。

一方で、実質的にiPhone XRの後継機をiPhone 11とし、XS/XS Maxの後釜にiPhone 11 Pro/Pro Maxを据えた上で、全体的に価格を抑える戦略を採るという予想は的中した。しかも、そのおかげで、アナリストたちが苦戦すると見ていたiPhone 11シリーズの販売は好調となり、当初の予定よりも1割程度の増産が見込まれるほどだ。このあたりの采配は、ティム・クックの面目躍如といってよいだろう。
<span style="color: #333399;">iPhone 11 Pro</span>

iPhone 11 Pro

結果的に先のスペシャルイベントでは、Apple Arcade、Apple TV+、新型iPad(10.2インチ)、Apple Watch Series 5、iPhone 11シリーズが発表されたことになるが、ここに3つのサプライズがあった。

1つめは、Apple ArcadeとApple TV+のサブスクリプション月額が600円(しかも、家族6人まで共有可)となったこと。先行する他のサービスにとって、この価格設定は脅威以外の何ものでもない。

さらに、Appleならではのコンテンツとの関わり方が価格以上に重要であり、大げさにいえば、子どもたちを課金地獄から救うと共にゲームクリエーターが本来の創造性を発揮できる場を作るという使命感すらあるのではと思わせる。これについては、後述しよう。

サプライズの2番目と3番目は、このタイミングで、ProではないiPadの標準モデルがリニューアルされたことと、Apple Watchのディスプレイが常時点灯可能となったことだ。この2つは、誰も予想しない隠し玉だった。

特に後者の常時点灯ディスプレイは、そうでないことがApple Watchの弱点の1つとされていただけに、大きなブレークスルーである。ただ、それは業界関係者の見方であって、一般の消費者から見れば、ようやく普通の腕時計と同じように使えるようになったということに過ぎない。ともあれ、これでより広い層に対してアピールする製品となったことは確かだ。

また、セラミックモデルが復活し、チタニウムモデルも追加されたことは、販売が好調なことを受けて、初期に見られたファッションやステータスアイテム的な展開も強めていこうとする現れといえよう。

ただし、Series 4をメインで利用している筆者もそうだが、従来の点灯方式に慣れ、必要なときにだけ情報が表示されれば十分と思えるユーザーにとっては、その他の改良点を含めてもあえて買い換える必要性は感じられないかもしれない。

▷ 5G化が2年後なら、今年のiPhoneは「買い」
iPhone 11シリーズに関しては、冒頭でも触れたように、XRの後継機を標準モデルの11とするネーミングの工夫や価格を抑える戦略が功を奏し、予想を上回る好調な販売となっている。

このシリーズが「買い」かどうかは、iPhoneの5G化のタイミングとも関係してくるが、たとえば、日本でも5Gのプレサービスは開始されているものの、90%以上の人口カバー率が達成されるのは早くても2021年末。各社の5G端末のラインアップが揃い始めるのも、2021年からと考えられる。

しかも、AppleはIntelから買収した5Gモデム事業を元に、独自のモデムチップを開発する必要がある。これまでのCPU用Aシリーズチップの開発スピードを当てはめれば、2020年の投入も可能に思えるが、やはり、ある程度使える地域が増える2021年モデルでの5G化が妥当なところではないか。

うがった見方をするなら、iPhone 9を抜かしたように、2020年秋にiPhone 11sを飛び越して、フルチェンジモデルのiPhone 12シリーズ(4G)を発表し、2021年にその5G版のiPhone 12sシリーズに移行するというシナリオもありうるだろう。

iPhone 11s(仮)に購買意欲をそそる十分な魅力を持たせられれば別だが、そうでない場合、上記のやり方が、セールスを維持する最も効果的な手法と思えるからだ。

あるいは、iPhone 11シリーズの好調が続けば、2020年は通常の性能アップとさらなる価格戦略を打ち出してiPhone 11sシリーズで乗り切り、2021年のiPhone 12シリーズで新デザインと5G対応という2つの魅力を起爆剤として販売を加速させる可能性もある。 

これまでiPhone Xを愛用していた筆者自身は、いずれにしてもiPhoneの5G化は2年後と踏み、iPhone 11 Proに切り替えた。大まかにいって、次に挙げるカメラ機能の向上だけでも、1レンズのモデルやスマートHDR機能を持たないiPhone Xまでのユーザーであれば、買い換える価値はあるといえる。
▷ 最新のスマートHDR機能を搭載した3眼カメラは、それだけでも買い替えの価値あり
iPhone 11シリーズでは、iPhone Xにあった3D Touchがなくなった。それでも、さほど影響はないと予想していたが、テキストの挿入ポイントを動かそうとして、無意識にソフトキーボード上でプレス&ドラッグする自分に気づき、用途を限れば、案外、利用していたことがわかった。

Appleとしては、挿入ポイントの移動が、以前よりもスムーズにテキスト上の直接タッチで行えるようになったため、こちらで対応して欲しいということなのだろう。しかし、キーボード上で操作するほうが、片手で、かつ指の動きも少なくて済むので、個人的なユーザービリティは多少低下した印象だ。

3D Touchには、指の押し込みを感知する上で、スクリーンと同サイズの距離センサーや強度としなやかさを両立させた特殊なガラスが必要となる。そのため、コストを抑えて生産性を向上させる意味からも、仕様の変更を行ったものと推測される。

それ以外の基本的な使い心地は、Face IDやSiriの反応速度が上がったことがはっきり体感できる以外は、iPhone Xから劇的に変化しているわけではない。しかし、3眼カメラが想像を超えて素晴らしく、これだけでも買い換える意味はあったと感じている。

特に、標準と望遠の画角時に、フレーム外の状態を確認しながら撮影できることや、3つの画角間のスムーズな移行、最新のスマートHDR機能は、製品発表会などの取材時に威力を発揮し、携帯性も考慮すれば最強の取材カメラになったといっても過言ではない。

先日もトリニティのwearaの発表会での撮影に利用したが、暗めのステージで、プレゼン画面やスポットライトなどによる明暗の差が激しい環境で、望遠、標準、超広角を使い分けても破綻のないイメージを撮ることができた。特に超広角は、後ろに下がって撮れない状態でも全体が楽にフレームに収まるので、狭い場所での撮影に重宝する。
<span style="color: #333399;">wearaの発表会で撮影した写真 明暗の激しい環境で、望遠、標準、超広角を使い分けても破綻のないイメージを得ることができる</span>

wearaの発表会で撮影した写真
明暗の激しい環境で、望遠、標準、超広角を使い分けても破綻のないイメージを得ることができる

iPhone 11では望遠レンズのない2眼になるものの、集合写真などにも威力を発揮する超広角レンズを搭載している。また、Proと同じくインカメラの解像度があがり、スローフィー(スローモーションのセルフィービデオ)にも対応しているので、カメラ機能で選ぶ意味は十分にあるはずだ。
▷ ゲームの品質を引き上げる「Apple Arcade」の仕組み

最後に、Apple TV+の本サービス開始は11月1日だが、Apple Arcadeは、すでにスタートしているので、そこから見えてくるAppleのスタンスも含めて感想を述べておこう。

先に書いたように、月額600円というサブスクリプションフィーは、iTunes Music Storeの楽曲が1曲あたり99セント(日本では150円)で販売開始されたときと同じかそれ以上のインパクトがある。しかし、Apple Arcadeには、単にユーザーの負担を軽くするだけでなく、ゲームメーカーを救う意味合いも含まれている点が重要だ。

現状、ゲーム市場で人気となっているゲームは、アプリ内で課金しないと先に進めなかったり、いわゆるガチャシステムによって射幸心を煽ることで成り立っているものが多い。逆にいえば、そうしたシステムを組み込めない、あるいは組み込みにくい構成を持つゲームは開発しにくい状況だ。

しかし、一方では、アプリ内課金やガチャとは無縁のところで、ユニークな発想やシナリオを生かそうとするゲームもある。だが、単体販売の環境では、それらのゲームのクリエーターたちが多くのユーザーを獲得することは難しかった。

実際に、事情に詳しい関係者からの情報では、Appleにゲームサブスクリプションサービスの企画を持ちかけたり、それを強く支持したのは、後者に属するゲームメーカーの人間だったという。つまり、現在の売り上げ重視のゲームが横行する中で、クリエイティブでバラエティ豊かなゲームの世界を提供していくために、Apple Arcadeというサービスをゲームメーカー自体が望み、それにAppleが賛同したという構図が見えてくる。

筆者もApple Arcade内のゲームをいくつか試してみたが、確かにこれまでにないアイデアや作り込みが重視されていることを感じた。Apple Arcadeは、月額の低さで消費者を惹きつけるが、それ以上に、提供されるゲームの質や方向性に真価がある。Apple TV+も、同様の意義を持つメディアとなるだろう。

最大の心配事は、次々にゲームを試したくなるという別の依存症だが、それは強い意志とスクリーンタイムの効果的な運用で防ぐしかなさそうだ。
<span style="color: #333399;"> Apple Arcadeに登場するタイトルの一つ WayForwardの「Shantae and the Seven Sirens」</span>


Apple Arcadeに登場するタイトルの一つ
WayForwardの「Shantae and the Seven Sirens」

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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