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大谷和利のテクノロジーコラム

2019.12.19 Thu

再燃するiPhone SE2への期待 ~ 人気モデルの再来なるか

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

iPhone SEが発売されて、およそ3年9ヶ月。毎年進化を続けるフラッグシップ機が注目を集める一方、片手でも操作できるコンパクトで買い求めやすいiPhoneの復活を望む声もまた、衰える気配がない。そして1-3月期が近づくと再熱するiPhone SE後継機への期待。今回は、2020年こそは発売が確実視されている「iPhone SE2(仮称)」の構成ついて、アップル社の立場から最も妥当と思われるものを探ってみたい。

様々なユーザーが待ち望むエントリーモデルの再来

最近のApple製品は、付加価値の高いプレミアムモデルと、必要十分な性能をより買い求めやすい価格で提供するメインストリームモデルの二極化が進んでいる。その戦略が功を奏し、iPhone XRから昇格した位置付けのiPhone 11も巷の予想以上の販売好調が伝えられたが、それでもまだ高価と感じる層は世界中に存在する。そのため、旧機種を買い替えずに使い続けている人たちも、それなりの数に上ると考えられる。

また、先頃、Googleに買収されたフィットネストラッカーのFitbitのユーザーから、プライバシー保護の点で懸念を持ち、Apple Watchへの乗り換えを検討する声が上がったように、Androidデバイスの利用者の中にも、iPhoneへの移行を考えながら価格面で躊躇している人たちがいて不思議ではない。そして、このような潜在層の背中を押すためのエントリーモデルを投入することは、Appleにとって理にかなっている。つまり、かつてのiPhone SEに相当する新製品の登場が期待されるわけだ。

すでに様々な噂や予想記事が公開されているように、iPhone SE2(仮称)にあたるモデルの存在は確実視されており、発売時期も2020年の春でほぼ間違いないだろう。というのは、来秋となるはずのiPhone 12/12 Proの発表と同時期では消費者の興味を分散させてしまう恐れがあることが、理由の1つ。また、iPhone 12/12 Proが5G対応を果たすなら、4G止まりの公算が強いiPhone SE2は、それ以前に十分な時間差を設けて発表することが求められるためだ。

iPhone SE2(仮称)はiPhone 8と11のハイブリッドになる

振り返れば、2016年にデビューしたiPhone SEは、2013年発売のiPhone 5sの筐体を踏襲して、基本性能を高めつつ、フロントカメラと動画機能を強化したものだった。今は、もちろん当時とは技術の進歩のスピードが異なるものの、iOS 13.xの対応機種のカバー範囲が広い(iPhone SEも含まれる)ため、2、3世代前のモデルをベースにしてiPhone SE2を開発しても、十分実用になるはずだ。

その観点から、今、このタイミングで考えたときに、ベースとなるモデルとして浮上するのは、iPhone 8である。潜在ユーザーの中には、iPhone X以降のフルスクリーンデザインや、より小型の筐体サイズを望む人もいるだろうが、前者はメインストリームモデルとの差別化(これをしないと、上位モデルの購入を考える消費者の一部が利益率の低いモデルに流れてしまう)、後者は開発コストや世界的に見た場合の大画面へのニーズを前提に考えると、Appleにとっての合理的な選択肢とはならない。

既存の設計を活かしながら新たな機能性を盛り込むとすれば、ワイヤレス充電も可能なiPhone 8をベースとしつつもCPUに最新のA13 Bionicを採用し、メインカメラはシングルレンズのままだが、ニューラルエンジンを利用してポートレート撮影やボケの表現を実現するのが現実的だ。

その上で、iPhone 8 PlusベースのiPhone SE2 Max(仮称)的な大画面&2レンズメインカメラ付きモデルがリリースされる可能性も十分ありうるだろう。そうすれば、iPhone SE2ラインとiPhone 11ラインの価格帯分布をより均一化することが可能となるからである。

iPhone 8
iPhone 8

 

販売寿命を延ばすならここが鍵。予断を許さないネーミング

一部では、この新たなエントリーモデルの製品名が、iPhone 9になるのではともいわれている。iPhone SE2も、むろん過去のモデルからの類推に過ぎないわけだが、9が欠番だったことを考慮しても、iPhone 11が出ている以上、過去に逆戻りするようなネーミングは避けて時系列とは無縁の名前にするものと思われる。

問題は、それが何かだが、現在のApple製品名の末尾に付けられている文字は、たいてい、Apple IIや初期のMacintoshの頃に案出されたものの流用だ。たとえば、PlusにはApple II PlusやMacintosh Plus、SEにはMacintosh SEのような前例がある。

iPhone SEから時間的に間が空き、デザイン的にも異なる製品をiPhone SE2と呼ぶのはどうかとの観点から、過去のMacのリストを見ていくと、Macintosh IIsiが目に留まった。このモデルは、1990年に登場した3つの廉価版Macのうちの1機種に付けられた名前だ。

たとえばiPhone SIとした場合、iPhone SEとの関連性も感じられ、iPhone 12が出た後も、古さを感じさせずに長期間の販売が可能となる。あるいは、iPhone XRとミックスして、iPhone SRでも良いかもしれない。

このあたりは、Appleのマーケティング担当者のさじ加減ひとつで変わる部分なので、あまり追求しても仕方がないが、少なくとも数字は使わず、レギュラーモデルよりも寿命の長いネーミングにする点だけは、iPhone SEから受け継ぐのではないだろうか。

大谷 和利(おおたに かずとし)
テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。
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