今回は映画『青の帰り道』のポスターの使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
文字のアンバランスさで若者たちの青春模様を
歌手を夢見て上京したカナ、実家を出て一人暮らしを始めたキリ、漠然とデカイことをやると粋がるリョウ、受験に失敗して地元で浪人暮らしのタツオ、できちゃった婚をしたコウタとマリコ、大学に進学したユウキら、高校を卒業した7人の若者たちの人生模様を描いた青春群像劇のポスター。大人への階段を上り始めた彼らの未熟さや希望、成熟していく途中で知る現実や挫折などが、みずみずしいメインビジュアルやアンバランスさを感じさせるタイトルロゴなどで見事にビジュアル化されている。
Font.01「はんなり明朝」「JTCウインM1」
成熟途上の若者の内面を加工した文字で表現
メインタイトルのロゴは、複数の書体を組み合わせたうえで加工したもの。漢字とひらがなの「の」は「はんなり明朝」(Typing Art)、ひらがなの「り」は「JTCウインM1」(エヌアイシィ)がベースに。文字を大きく加工してアンバランスさを持たせることで、作中の若者たちの「青春・若さ・未熟」や、成熟していく途中で知る「現実・大人・挫折」などが表現されている。
Font.02「A1明朝」
タイトルロゴに合わせやわらかな印象の書体に
キャッチコピー部分の文字は、優美なフォルムと画線の交差部分にある墨だまりが印象的なオールドスタイルの明朝体「A1明朝」(モリサワ)。メインタイトルの文字の雰囲気に合わせ、やわらかく温かみのある書体が選択されている。
Font.03「A1明朝」
キャッチコピーと同書体で全体に統一感を持たせる
キャストクレジット部分の文字は、キャッチコピーと同じオールドスタイルの明朝体「A1明朝」(モリサワ)。書体を揃えることで統一感を持たせ、作品の世界観をより印象的に伝えるのが狙い。
2019.09.13 Fri2021.09.03 Fri