今回は書籍 『サンドの女 三人屋/原田ひ香』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
手作り感のある文字で人情や温もりを感じさせる
朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナックというふうに、朝昼晩で業態が変わる「三人屋」。三女の就職を機に朝の店を終了し、代わりに次女がお昼時まで売り始めた自家製玉子サンドが大評判になって……。美人三姉妹が営む一風変わった食べもの屋を舞台に、味わい深い人間模様を描いて大ヒットした小説『三人屋』の続編。
表紙カバーでは、前作を踏襲した手作り感のあるタイトルロゴや、三姉妹の存在を意識した三種類の玉子サンドのイラスト、そのおいしそうな玉子サンドを引き立たせる構図などで、三姉妹のドラマをそれとなく予感させるための工夫が凝らされています。
Font.01「オリジナル」
温かみのあるゴシック体を 加工して人情味を強める
メインタイトル「サンドの女」の文字は、前作のイメージに合わせて温もりのあるオールドスタイルのゴシック体「A1ゴシック B」(モリサワ)をベースに新しく作り起こされた。図はその制作工程。
文字を部分的に細めたりカーブを調整したり、輪郭に手書き風の揺らぎを加えたりして、サブタイトルなどの文字と味付けがそろえられています。また、サブタイトルの「三人屋」や著者名の文字は、作品の関連性を意識して前作のものをそのまま踏襲しています。
Font.02「Lucy Normal」
作品の世界観に合わせ手書き風の欧文書体に
著者名の欧文表記は、前作と同じく手書き風の欧文書体「Lucy Normal」(Bay Animation)に。ひとつの町に根ざした食べもの屋さんを舞台にした作品の世界観や、手作り感のあるタイトルロゴなどに合わせ、温もりの感じられる書体が選択されています。
2021.03.25 Thu2021.09.03 Fri