日本のチョコレート文化を昇華させたショコラティエ・土屋公二シェフによる「テオブロマ」。おいしく美しいチョコレートと、かわいい動物を描いたパッケージの魅力に迫ります。画家・樋上公実子さんの描くイラストにキュン!
テオブロマの成り立ち、コンセプトについて
今回は、「テオブロマ」のマネージャー・渋谷真実子さんと、パッケージのイラストを担当する画家の樋上公実子さんにお話しを聞きました。
──「テオブロマ」の名前の由来を教えてください。
渋谷 「本当においしいチョコレートを作りたい」との思いから、ギリシャ語で“神様の食べ物”という意味をもつカカオの木の学名「テオブロマ・カカオ」より命名しました。
ショコラティエでもあるオーナーシェフの土屋が「テオブロマ」を開業したのは1999年。当時、日本にはチョコレート専門店がほとんどありませんでしたので、「博物館のようにいろいろなチョコレートをお客様に提供できる場に」と、出発点でもある本店は「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」と名付けました。
──どんな点にこだわってチョコレートを作っていますか?
渋谷 世界中から厳選したカカオをはじめとする材料を使って、フランスの伝統的な手法で手作りしています。土屋は開業当初から、自分がどんなカカオでチョコレートを作っているのかを知りたいと、海外のカカオ農園を数多く訪問。今でも理想のカカオを探し続けています。
和素材、香辛料、ハーブなども取り入れたさまざまなチョコレートを作っていますが、なかでも「Bean To Bar」は、そうして出会ったカカオの個性をしっかりと味わっていただける自信作のひとつです。
──ターゲットはどのような方たちですか?
渋谷 「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」のある奥渋谷は、センスのいい、おしゃれでハイソな人々がたくさんいるエリア。モノの本質がわかっていて、本当においしいものを求めている方たちが多いんです。そういった方々に気に入っていただける商品作りを心掛けています。
テオブロマのアートワークについて
──パッケージの多くを画家の樋上公実子さんが手掛けていますが、起用のきっかけは?
渋谷 チョコレートのおいしさや美しさはもちろんですが、土屋はパッケージのデザインも重要と考えておりました。樋上公実子さんとの始まりは、樋上さんが描いてくれた「テオブロマ」のケーキの絵がきっかけ。土屋がこの絵をとても気に入って、パッケージのイラストをお願いすることになりました。
──パッケージのイラストはどれも素敵なものばかりですね。イラストはテーマや描く題材を決めてから、樋上さんに依頼するのでしょうか……?土屋シェフの想いを反映したり、双方で話し合ったりして決めているのですか?
渋谷 ある程度は決めることもありますが、テーマや題材のリクエストはほとんどしていません。樋上さんのやりやすいように描いてもらっています。
樋上 そうなんです。本当に好きなように描かせてもらっています。今から17年前に初めて手掛けたふたつの商品、「キャレ テオ」はトイプードル、「キャレ ジュリア」はチンチラ、との指定がありましたが、それ以降はほぼほぼ自由。どういう商品のどんな形のパッケージかは知っておきたいので、商品情報をいただいてから構想を練り、私自身がかわいいと思えるものをシンプルに描いています。
──ほとんどおまかせなんですね。土屋シェフと樋上さんの信頼関係が伝わってきます。
樋上 人気商品の「キャビア」(メイン画像参照)でさえ「チョウザメを描かなくても何でもいいよ」と言われたぐらい寛大。でも、それだけ信頼してくださるのだから、よりよいものにしようと、いっそう気合いが入りました。
結局、「キャビア」はチョウザメを描くことにしたのですが、初めはシリーズ化されると思ってもいなかったんです。1缶目には1匹、2缶目ではカップルを描き、3缶目では男の子が生まれ、4缶目では双子の女の子が誕生。5缶目でチョウザメ一家を描いて、ストーリー仕立ての連作となりました。
──「タブレット・キャレ」のアートワークの多くに、猫やうさぎ、鹿など、動物が登場しているのはなぜですか?
渋谷 タブレットはもともと無地の箱にレザーのリボンを付けて販売していましたが、土屋が「イラストのパッケージがたくさん並んでいたら絶対かわいいはず!」と思い立ったことが始まり。デザインを一新しようと、タブレットの種類と同じ数のイラストを樋上さんに描いていただいたんです。
樋上 そのとき依頼されたイラストは全12種類でした。なぜ動物だったかというと、私が好きだから(笑)。まずはどんな動物を描くかを考え、シェフに了承いただいてから12パターンのイラストを描き上げました。
──「Bean To Bar」のアートワークにも動物が登場していますね。
樋上 「タブレット・キャレ」で描いた動物たちは、フレーバーとの関連性を意識しませんでしたが、「Bean To Bar」は、それぞれのカカオの産地に生息している動物を事前に調べて、土屋シェフと相談してから図案を決めました。
「BeanToBar ペルーピウラ 70%」(ページ最後のギャラリーに詳細を書いています)ではアルパカを描いています。使用するカカオの産地・ペルーにちなんだ動物ということもあるのですが、実は以前訪れた牧場で出会ったアルパカのかわいらしさが忘れられなくて。自分の“好き”もしっかり盛り込んでしまいました。
お菓子ギャラリー
チョウザメを愛らしく描いた初代~5代目までのキャビア缶のミニサイズを詰め合わせた「ミニキャビア 5缶セット」3,140円(税込)。「テオブロマ15周年を記念して作りました。キャビアに見立てた色もフレーバーも異なる5種のチョコレートが楽しめ、缶のフタを開けてもワクワクします」(渋谷さん)
ひと口サイズのタブレット「キャレ ジュリア」870円(税込)は、プレーンのミルクチョコレート。カカオの風味が豊かで、後味のほどよい甘さが魅力。「テオブロマで最初に描いたパッケージのひとつです。イラストのチンチラは、土屋シェフの知人の愛猫がモデルなんですよ」(樋上さん)
「レプティタブレット」3,050円(税込)はビター、ミルク、コーヒー豆入りミルク、オレンジピール入りビター、イチゴ、抹茶の6種がセット。「動物のイラストがかわいいタブレットをミニサイズにして詰め合わせ。いろいろな味がバランスよく楽しめるよう、フレーバーの組み合わせにもこだわりました」(渋谷さん)
ペルー産ホワイトカカオで作った「BeanToBar ペルーピウラ 70%」1,400円(税込)。「土屋が最初に製造したbean to bar で、販売当初からの人気商品です。希少なホワイトカカオを使用していて、フルーツのような酸味をしっかりと感じます。アルパカのパッケージに惹かれて購入してくださる方も多いですね」(同上)
フランワーズ、ピスタチオ、アーモンド、チョコレート、トロピカルフルーツ、塩の6種の口どけなめらかなキャラメルが楽しめる「キャラメルアソート」2,160円(税込)。「なめらかなキャラメルと聞いていたので、小さな動物たちがキャラメルの泉をなめていたらかわいいなぁと、この図案を思い付きました」(樋上さん)
2020.08.07 Fri