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モノづくり探訪記

2021.12.21 Tue

【第二十二回】草木染めのニュアンスカラーが美しい「UZUiRO(ウズイロ)」のあったか小物たち

取材・構成:編集部 撮影:下山剛志[ALFA STUDIO]

寒い季節がやってきました。外出先はもちろん、自宅でも防寒グッズが欠かせない方が多いのでは? そんな人にオススメしたいのが、ふんわりと暖かい草木染め工房「UZUiRO(ウズイロ)」の防寒グッズ。上質な絹やコットンはとろけるような肌触りで、大地の恵みをうけた草木染めの色合いが見るたびに私たちの心を癒してくれます。今回のモノづくり探訪記では、身も心もあたたまる草木染め工房「UZUiRO」のモノづくりをお届けします。

寒い冬を彩る「UZUiRO」の草木染めアイテム

知多木綿、三河織物など、織物産業が盛んな三河地方で、バリエーション豊かな草木染めアイテムを展開するのが、今回ご紹介するアパレルブランド「UZUiRO」さん。藍染(あいぞめ)や茜(あかね)、ヤマモモ、五倍子(ごばいし)、柿渋(かきしぶ)、抹茶といった自然染料を用いて、自社工房内でさまざまな色を作り出すクリエイティブなモノづくりが特徴だ。

UZUiRO工房内の、染色(左上)、媒染(左下)、手書き(右)の様子
※媒染とは染色の後に、金属や石灰を用いて染料を繊維に定着させる工程のこと

そんな UZUiRO さんの染色工房から、今回は寒い冬にピッタリな防寒グッズの数々をご紹介したい。まず注目したいのが、履いたらやみつきになる! という人も多い五本指ソックス。染料にはヤマモモ、茜、インド藍などが使われており、独特のくすみ感とやさしい発色が目を惹く。

●やみつきになる履き心地「シルク5本指ソックス」

左から、チャコール (先染め糸を使用)、カーキ (ヤマモモ染)、グレーピンク (茜染)、イエロー (ヤマモモ染)、茜色 (茜染)、インディゴブルー (藍染/インド藍)

華やかさがありながら、どんなファッションにもなじむ自然な色合いは草木染めならでは。落ち着いた色合いの「グレーピンク」とキュートな「茜色」には、同じ「インド茜」という染料が使われているが、染料を煮出す時間や温度、色を定着させる媒染剤の配合を変えることで、まったく異なる色合いに染まっているのがおもしろい。

五本指ソックスの「グレーピンク」と「茜色」。どちらも同じ「インド茜」という自然染料が使われている

「らしく、心地よく、着るたび好きになる」をテーマに掲げるUZUiROは、着心地の良さにも定評がある。このソックスはシルク100%、紡糸の過程で発生した短い落綿を再度糸にして使っている。繊維の方向がバラバラなので空気をたくさん含み、履いた時にとても柔らかく暖かい。見た目にもボコボコとした独特の風合いで、これが草木染めの素朴な色合いと見事にマッチしている。

<編み方にもこだわりが!>
履き口から足首にかけて徐々に細くなるように編まれているため、フィット感も抜群。どちらかというと薄手の靴下だが、暖かさにも定評があるので、冷え性の人にもオススメである。

履き口はゆったり、足首付近が自然にシェイプされる構造になっており、絶妙なフィット感。写真は藍染めの「インディゴブルー」のもの

●重ね履きしているような温かさ「カカトすべすべ極暖ソックス」

次にご紹介するのは、二重構造であったか。カカトのケアまでしてくれる「カカトすべすべ極暖ソックス」。外側はコットン、内側は肌触りの良いシルクという二重構造で編まれており、かかと部分には特殊保温シートが挟み込まれている。

左から、インディゴブルー (藍染/インド藍)、グレー (五倍子染)、カーキ (ヤマモモ染)、イエロー (ヤマモモ染)、ベージュ(五倍子染)、生成り(染色なし)

異素材の二重構造に加えて、立体的なカカト部分にシートを一体化させるという複雑な作りだが、UZUiROでは、高い縫製技術を持つ地元の「石川メリヤス(昭和32年創業)」の協力を得てこれを実現。新たな草木染めカラーを加えることで見た目にも楽しい商品へと展開している。地元産業や地元の素材をうまく活かすモノづくりもUZUiROの特長だ。

染料は、ヤマモモ、五倍子、インド藍など。先ほどの「五本指ソックス」と同じ染料も使われているが、コットンと絹で色の出方が異なるため、よりやさしい色合いのラインナップになっている。使い勝手のよい「グレー」と「ベージュ」はいずれも五倍子という天然染料で染めたもの。表裏を比べてみると、染め方や素材の違いでさまざまな色が表現されているのがわかる。

左から、生成り(染色なし)、ベージュ(五倍子染)、グレー(五倍子染)
つま先は縫い目ができない横編み製法でストレスフリーに。表はふんわりコットン、内側はシルクで肌触りよく。ここでも表(コットン)と裏(絹)で発色が大きく変わっているのが見て取れる。(写真は「ヤマモモ染」

染料を定着させる媒染剤には鉄、銅、アルミ、石灰、貝媒などが使われている。銅で媒染すると黄色に、鉄で媒染するとグレーになりやすいのだとか。自然染料との付き合いは、どこか化学の実験のようで聞けば聞くほど興味が湧いてくる。UZUiROの店舗がある愛知県西尾市では「染め体験」もできるので、興味がある人は自分の手で染めてみるのもよいだろう。

●ボリューム感のある「柄編みレッグウォーマー」

次は寒い冬に重宝する肉厚のレッグウォーマー「柄編みレッグウォーマー」をご紹介したい。こちらも地元の石川メリヤスと試作を繰り返して完成した商品だ。ザックリとした編地からはウールやアクリル製の毛糸を連想するが、素材はコットン100%。手に持ってみるとしっとりとした肌触りが心地よい。毛玉が出来にくいのでお手入れもしやすいのだとか。

従来のものより使用するゴムの数を少なくしているそうだが、コットンの吸い付くような質感と、ゴム編みとメリヤス編みを組み合わせた構造のおかげで程よいフィット感があり、装着しやすいのにストレスのない、まさに「履いているのを忘れてしまうようなつけ心地」に仕上がっている。

上下に長さの異なるゴム編み部分が設けられおり、これはどちらを上にして履いてもOKとのこと。上にしたり下にしたり、伸ばして履いてみたり、クシュッと縮めてみたり、オシャレも楽しめる防寒グッズである。 

上下で長さが違うゴム編み
どちら向きでも装着可能。シルエットが変わるので2つ分のデザインが楽しめる

●和紙から作った「指切れソックス」「インナーソックス」も

夏にはサンダル用の「指切れソックス」、シューズインタイプの「インナーソックス」などもオススメ。こちらには岐阜県美濃地方で生産される「美濃和紙」が原料として使われており、和紙特有の軽さとシャリ感、速乾性の高さが特徴だ。

 暑い夏に快適に履けるのはもちろん、重ね履きすると意外と暖かくて蒸れないので、冬のインナーソックスとしても快適なのだとか。抹茶染めの「グレー」は店主もお気に入りの色合いで、今後別の商品にも生かしていきたいとのこと。

指切れソックスの「グレー」と「ベージュイエロー」。いずれも愛知県西尾市産の抹茶で染められている

地域からステキを発信する「UZUiRO」のモノづくり

UZUiROの魅力は草木染めだけではない。その神髄はさまざまな地元産業を活かした個性的なファッション提案にある。草木染めブランド「UZUiRO」の他にも、アップサイクルをテーマにした「MOTTAiiNA(モッタイイナ)」や、オリジナルの生地づくりから始まる「UZU TEXTiLE(ウズテキスタイル)」という姉妹ブランドがあり、いずれも近隣の工場や職人たちのノウハウを活かした、ここにしかないモノづくりが活かされている。

「MOTTAiiNA(モッタイイナ)」プロジェクトから生まれた「七変化スヌードポンチョ」は、石川メリヤスの工場内で眠っていた、さまざまな色の糸を活かして企画された商品だ。

●大胆な配色の「七変化スヌードポンチョ」

七変化スヌードポンチョの「ブラウンカーキ」
※こちらは草木染めの商品ではありません。

この大胆なツートンカラーは、デザイン性もさることながら、少量の余り糸を無駄なく活かせるようにと考えて作られたもの。片方の色がなくなれば、また他の糸と出会って新しい商品になっていく。スタッフが糸の残量とにらめっこをしながら配色を考えているのだという。

糸の在庫状況によって、今後どんな色の組み合わせが登場するかわからない。今の配色は今しか手に入らない――そんな特別感もこの商品の魅力である。

●粋な和柄が首元を彩る「コットンネックウォーマー」

外側には「三河織物」、内側にはふんわりとした「知多木綿3重ガーゼ」を使ったネックウォーマー。染色にはインド藍を使ったインディゴブルーのものと、京都産柿渋を使ったグレーのものがあり、シックにまとまった粋なオシャレが楽しめる。

和をイメージさせるひし形模様が印象的なこの「三河織物」は、廃業した機屋さんから譲り受けたもの。生地がなくなり次第販売終了になってしまうそうだ。 

内側の三重ガーゼも京都産の柿渋で染められた優しい色合い

他にもたくさんの企画商品があり、そのほとんどが、近隣の工場や職人とタッグを組んで作り上げたものだ。素材となる「糸」や「織り方」にまでこだわり、企画から構成までを一貫して行うUZUiROのモノづくりには、同じ地域だからこそ生まれる一体感とチームワークが欠かせない。

草木染めを最後まで楽しむ「染め重ねサービス」とは

自然染料を用いた「草木染め」のブランドであるUZUiROには、もう一つ重要なサービスがある。草木染めの商品を購入したお客様に無料で「染め重ねサービス」を提供しているのだ。草木染めは、染料を一番大きな鍋で煮出しても、一度に染められるのはTシャツ10枚程度という、たいへん手間のかかる染め方だ。

それでもこのサービスを提供し続ける理由を店主のATCHさんに聞いてみると「草木染めをやる上では絶対に必要なサービスだから」という答えが返ってきた。

「草木染めの商品はクラシックカーを楽しむようなもの」というATCHさん。天然染料を使う草木染めは、化学染料と比べると色持ちが悪く、染め上がりの色も安定しない。しかし、そういった変化こそが草木染めの魅力であり、メンテナンスも含めて楽しんで欲しいのだという。ある程度経年変化を楽しんだ後は、染め直して新しい色に ―― それがUZUiROの考え方であり、この「染め重ねサービス」を提供し続ける理由なのだ。

洋服、カバン、小物から防寒グッズまで様々な草木染め商品を展開し、チームで取り組むUZUiROには、常に草木染めを回せるサイクルがある。日々たくさんの商品を染めているからこそ、このサービスも可能になるのである。

なお、染め重ねの色は濃い目の「ブルー」と「グレー」に限定されている。ベースのカラーによって仕上がりが変わってくるので、最初の色との組み合わせも併せて楽しみたい。

染め重ね無料サービス
https://uzu-japan.com/read/feature/p12514/

「UZUiRO」のこれから

UZUiROでは近年、機械で草木染めができる体制も整えつつあり、より安定した染色が可能になってきたという。小回りが効きつつ、ある程度の中量生産ができるのがUZUiROの強み。自社ブランドはもちろん、今後はさまざまなブランドとのコラボや、作家さんのお手伝いをしていきたいとのこと。次はどんな素材・技術・デザインと出会うのだろうか。これから誕生するであろう新製品にも注目して見ていきたい。

「UZUiRO」店内の様子(愛知県西尾市)


「UZUiRO」(株式会社 渦japan)   
愛知県西尾市にある草木染めアパレルブランド。素材、デザイン、縫製、染色までを一貫して行う企画&製作が特長で、地元企業と協力してオリジナリティのあるファッション提案を行っている。草木染めブランド「UZUiRO」のほか、アップサイクルをテーマにした「MOTTAiiNA」や、オリジナルの生地づくりから始まる「UZU TEXTiLE」などの姉妹ブランドを持つ。
「UZUiRO」オンラインショップ:https://uzu-japan.com/


 

 

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