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モノづくり探訪記

2022.03.10 Thu

【第二十五回】アフリカンマホガニーの魅力を探る~木工製品ブランド「LIFE」のレジャーアイテム~

構成・文:編集部 撮影:下山剛志[ALFA STUDIO]

革や木材、鉄、陶磁器など自然の素材を生かした製品には、合成品にはない味わいがある。そして、本物を持つ大人の楽しみも。今回のモノづくり探訪記は、高級木材アフリカンマホガニーを使って、ゲームボードやお菓子入れなどユニークなアイテムを次々と世に送り出す、木工製品ブランド「LIFE」を取材。遊び心あふれるオリジナルグッズづくりに迫ります。

ユーモア満点! お気に入りを持ち歩く「お菓子ケース」 
カロリーメイトケース / ポイフルケース / チョコボールケース

木工製品ブランド「LIFE」が誕生したのは2007年のこと。建築資材の端材を利用したiPodケースや木製アクセサリーが展覧会で評判となり、他にもいろいろな雑貨を作ってみようという形で「LIFE」はスタートした。作家が個人事業主として集まり、その総販売代理店として「LIFE(株式会社sweetD)」が機能するという少し特殊な形態で、職人たちの技術力とこだわり、代表を務める宮野絵梨花社長の飛びぬけた発想力が光るブランドだ。

最初にご紹介する「お菓子ケース」も、ある日、宮野社長がお菓子をたくさん買い込んできたのが始まりだという。ブランド設立からおよそ2年が経った頃、iPodやiPhoneケースのような定番商品も良いけれど、お菓子にもケースを作ったら可愛いよね ―― そんな女性ならではのアイデアのもとに、作家たちが集まり、デザイン設計と試作が進んでいった。

●本物さながらの「カロリーメイトケース」

カロリーメイト 専用木製ケース/4,180 円(税込)

こちらの「カロリーメイト」ケースは、携帯食料のイメージに合わせた無骨な形状と、中身のブロックさながらの装飾が印象的。世界三大銘木・マホガニー材の木目を横向きに使っており、大胆な縞模様が楽しめるのもおもしろい。

カロリーメイトを入れてみると、驚くほどピッタリのサイズで作られている。逆さにしても振って全くずれないが、後ろ側にはくぼみを設けられていて外したい時には簡単に外せるようになっている。

後ろ側には窪みをつけて、箱が出し入れしやすいように

●スマート&オシャレに持ち歩く「ポイフルケース」

ポイフル 専用木製ケース/4,180 円(税込)

1993年発売のロングセラーグミ「ポイフル」のケースは、華奢で可愛らしい「ポイフル」のイメージを踏襲したデザイン。パッケージの透明部分に合わせて、ケースにも窓が設けられている。メーカーに確認したわけではないが、ポイフルの透明窓は、カラフルな中身を見て楽しんだり、残量を確認するために設けられているのだろう。木製ケースでもその機能は一切損なわれていない。なによりも、この窓があることで確実に「ポイフルであること」がわかり、お気に入りを持ち歩くワクワク感が増している。

ケースの厚みは、強度を保てるギリギリの厚さ(2.5mm~3mm)に仕上げられており、装着してもスッキリした印象だ。お菓子ケースの中でも、このポイフルケースが一番薄く作られているのだとか。形状だけでなく、製品イメージに合わせて厚みも変えているとは驚きだ。美しい曲線カットと磨き上げ、赤みの強いマホガニー独特の色合いが気分を盛り上げてくれる製品である。

丁寧に磨き上げられた曲線部分が美しい

●キョロちゃんのくちばしが出てくる「チョコボールケース」

森永チョコボール木製ケース/4,180 円(税込)

最後にご紹介するお菓子ケースは、1960年に発売された森永製菓の「チョコボール」のケース。こちらはポッテリしたフォルムの方が可愛らしく見えるという理由で、少し厚めに作られている。試作段階では、ポイフルケースと同じように上から入れる予定だったが、くちばしだけがぴょこんと出てくるデザインがやはりチョコボールらしいだろうということで、最終的には下からはめ込んで、くちばしだけが開く形になった。

くちばし部分の滑らかな曲線加工

くちばしが出てくる天辺は、木材が滑らかに削り取られている。底の部分は開いているのに、底板が付いているのはなぜだろう? と思ってよく見てみると、底板の1辺がわずかにR状に張り出している。ピッタリ嵌まるように作られているので、底板がなくてもズレたり外れたりすることはなさそうだが、より安心して使えるようにという職人のこだわりが感じられる細工だ。

LIFEには、ガムやチョコレート菓子、キャラメル、ロリポップ、カロリーメイトなど約30種類のお菓子ケースがラインナップされているが、どの製品を見ても、デザインの工夫とこだわりが随所に盛り込まれている。
 

底板のわずかな張り出し部分で、チョコ菓子を振りだす時にも安定するように

「手に持った時に“角”を感じるところを残さないの職人のポリシー」と語るのは、契約作家のひとりで、商品企画室室長を務める亀井一夫さん。どの製品も本当に滑らかに磨き上げられており触り心地がよい。これは受注生産でひとつひとつ手作業で仕上げているからこそ出せるクオリティだという。

そして、「僕らの作品はアフリカンマホガニーの美しさに助けられている」とも。次は、LIFEの製品の素材となっているマホガニー材の魅力とともに、もう一つの人気シリーズ「木製ゲームセット」に焦点を当ててみたい。

オトナの遊び心が炸裂する! 木製ゲームセット 
○×ゲームボード / キャロムミニ / 木製のトランプ

マホガニーは、見る角度によって表情が変わる「リボン杢」という木目と、赤みがかった深い色合い、つややかな経年変化が楽しめる高級木材だ。日本では極めて入手が困難なため、LIFEではリベリア共和国(西アフリカ)からこの木材を直接買い付けているという。

アフリカンマホガニーの美しい木目

この貴重なマホガニー材がより広い範囲で楽しめるのが、木製ゲームセットの数々。先ほど紹介した「お菓子ケース」は無垢材を削り出して作られているが、サイズが大きくなると「木材の反り」も考慮しなくてはならない。ゲームボードなどの大きめのアイテムでは、この「反り」を抑制するため、あらかじめ幅25mmにカットした木材を、同じ状態につなぎなおす「幅はぎ」という手法が使われている。

木工用ボンドでは十分な接着強度が出ないため、「シアルアクリルエイト」という水のような接着剤を毛細管現象の原理を使って流し入れていくのだとか。釘を使わず、硬度の高い密着を実現するには、こういった職人の知恵もかかせない。

ゲームボードの裏面を見ると木材が継ぎ合わせてあるのがわかる

「さすがLIFE!」と言いたくなるユニークな製品ラインナップにも注目したい。

● 子どものころの遊びを全力で! 「○×ゲーム」ボード

マルバツゲーム(Tic-Tac-Toe) /9,900 円(税込)

この遊びを知らない人はいないと思う。しかし、専用のゲームセットを持っている人もほぼいないだろう。子供の頃によくやったあの手遊びを、本気の職人技と高級木材で作り上げた「○×ゲームセット」である。

ベースとなる格子模様も、○も、×も、もちろん完璧に磨き上げられている。マホガニー材の濃淡や木目がゲームボードに表情を与え、場違いなほどの高級感に思わず笑ってしまいそうな仕上がりだ。

●世界のゲームに出会える「キャロムミニ」

木製 キャロムミニ(Carrom mini)11,000 円(税込)

「キャロム」は日本ではあまり馴染みがないが、アジアやヨーロッパ諸国では知名度が高く、インドでは貸し出しキャロムが普及しているなど、世界的に楽しまれているゲームである。マホガニー材のゲームボードは美しく、インテリアにもなるので、普段は飾っておいてもいいだろう。

ゲームボードのラインやコマの模様はレーザー刻印。インクを使わず木材の色だけで仕上げているのが大人っぽくて素敵だ。もちろん友達が集まったら、みんなで初めてのキャロムを試してみても。「キャロム」は2人~4人でプレイする、手弾きビリヤードのようなゲームである。

●製造難易度MAXの「木製のトランプ」 

木製のトランプ 7,480 円~24,200 円(税込)

木製トランプはLIFEの中でも最も手のかかるアイテムの一つ。完璧な磨き上げが職人のプライドというのは、お菓子ケースの項目でも書いたが、それは1セット55枚(52枚+ジョーカー2枚+予備1枚)のトランプでも変わらない。

LIFEの「木製のトランプ」は1mm~1.1mmの厚さで作られているのだが、初めからこの厚さにカットしているわけではない。まず40cmくらいの長さの板を2.5㎜にスライスする。それをワイドサンダーで削って、磨きながら1.1mmの厚みまで落としているのだ。トランプのサイズにカットをしたら、さらに2000番手のやすりを使って手磨き。表面を丁寧に整えるとともに、カットした小口部分も綺麗に丸めていく。  
※2000番手のやすりは貴金属などを磨くのに使われるもの。木工製品では240番手くらいが一般的

丁寧に仕上げたトランプカードにレーザーで刻印を入れたら、割れにくくする硬化剤を加え、最後にバフをかけてようやく完成となる。

木製のトランプは、Miniサイズ(幅40mm×長さ60mm)/7,480 円、Lサイズ(幅50mm×長さ75mm)/11,000~13,200 円、 Bridgeサイズ(幅56mm×長さ88mm)/22,000~24,200 円(税込)の3サイズ

この「木製のトランプ」は、価格の問題もあって、もう少し妥協したクオリティで販売をスタートしたらしい。ところが、どうしても職人気質が出てしまって工程が増えていき、今では完全に赤字商品なのだとか。購入者にとっては、全55枚のバラエティに富んだ木目が楽しめるお得な製品だ。

新製品「スピーカースタンド ROCA」とLIFEのこれから

ユニークな発想と職人技が光るLIFEの製品群だが、設計力も並大抵ではない。最後に、昨年末クラウドファンディングに挑戦したスピーカースタンドを紹介して締めとしたい。亀井さんが、音響学と、ギターやバイオリンの構造を学んで作り上げた最新作である。

『デジタル音が楽器の様な音色になる不思議なスピーカースタンド 』
「Makuake」プロジェクト
https://www.makuake.com/project/roca_speaker/
「LIFE」正規販売ページ
http://www.sweetd-life.com/products/list203.html

アフリカンマホガニーはもともと、ギターのネックにも使われる音楽と相性の良い木材。そのアフリカンマホガニーを使って、内部構造による反響や、物体固有の共振までを計算して作ったのがこの製品である。

低音域、中音域、高音域それぞれが美しく響くように穴の位置が最適化されており、底面にはスタビライザーを3つ足で装着して、振動の伝達による音質変化の対策もするなど、もはや木工製品の枠におさまらない技巧が詰まった作品だ。

令和3年度Web公募美術展において「工芸部門 特選」を受賞しており、美しい造形にも定評がある。デジタル音源をまるで生演奏のようなアナログにろ過する――という意味を込めて、製品名は「ROCA」。

契約作家たちの手によって、LIFEは今も進化し続けている。次はどんな驚くような製品がでてくるのか、楽しみなブランドである。

「LIFE」(株式会社sweetD)
SDGsの考えに基づき、端材のリサイクルから始まった木工製品ブランド。アフリカンマホガニーをはじめとする「素材」にこだわり、作品は全てハンドメイドで製作されている。 「LIFE」オンラインショップ:http://www.sweetd-life.com/
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