コンパクトウォレットにこだわりはありますか? サイズ感? 機能性? それとも高級感やデザインでしょうか。今回ご紹介するのは、そのすべてを叶えてくれるミニ財布。企業のプロダクトデザイナーとして数々のヒット作を生み出してきた黒田憲司さんが立ち上げた革製品ブランド「STUDIUM(ストゥディウム)」より、素材にも構造にもこだわった本格派コンパクトウォレットをご紹介します。
プロダクトデザイナー 黒田さんこだわりのミニ財布とは
黒田さんが革製品ブランド「STUDIUM」を立ち上げたのは2019年のこと。それまで文具やカバンのデザインを数多く手がけ、グッドデザイン賞も何度か受賞していたが、数々のプロダクトを世に送り出しながらも、「もっと自由にモノづくりがしたい、自分の想いをダイレクトに伝えたい」という思いは募っていた。
特にミニマムな空間にたくさんの要素を詰め込んだ「コンパクトウォレット」はおもしろい。休みの日に手縫いで試作を繰り返していた黒田さんが、自身のブランドで挑戦したのは、もちろんコンパクトウォレットだった。中でもmicro wallet「bleed(ブリード)」は、革からオリジナルで開発し、スマートで素早い支払いを考え抜いた黒田さんこだわりの製品である。
●一瞬で開くタテ持ちコンパクトウォレット「bleed(ブリード)」
「bleed」は一枚革で作られたシンプルなコンパクトウォレットだ。特筆すべきは一覧性の高さで、開いてタテ持ちするだけで、一瞬でカード、コイン、紙幣にアクセスできる状況が整う。“ミニマム”だけを追求していくと、小銭入れはお財布の外側に――という結論に至りがちだ。実際、世の中にはそのようなコンパクトウォレットが数多く存在するが、「bleed」は中央に3室に分かれた大きめのコインポケットを配置している。
財布本体を持ち替えることなく、小銭と紙幣を同時に取り出せなければ使いにくい。コンパクトウォレットといえども「使い易さ」は絶対条件というのが黒田さんの考え方。3室あるコインポケットは、小銭入れとしてだけでなく、1室をカード入れにしたり、レシート入れにしたり、フレキシブルな使い方ができるのも魅力である。
カードポケットは決して多くはないが、重ねて入れても出し入れしやすいように開口部が曲線状に処理されている。内張りがなくヌメ革のみで作られているので、本格的な革製品が好きな人にもオススメのアイテムだ。
そしてなんといっても、「STUDIUM」オリジナルのブリードレザー。この革を作っているのはタンナーの聖地として知られる兵庫県姫路市を中心とする、播磨の職人たち。アンティーク風の濃淡は、職人が一つ一つバレンを使って手作業で仕上げている。
巨大なタイコと呼ばれる機械で染料やオイルをしっかりとしみ込ませた後、一段階濃い染料を用いてクルクルと色を重ねていく。模様をつけるのではなく、欲しいのはアンティーク感。濃淡が強すぎると不自然に見えてしまうので加減が難しい。最後の手染め工程は4人の決まった職人が担当しているそうだ。
<ブリードレザーの製造工程>
●個別アクセスがしやすいL字ウォレット「Liscio(リスシオ)」
いつもはキャッシュレスだが、ときどき小銭をつかう――そんな人にオススメしたいのがL字ファスナータイプの「Liscio」だ。キャッスレス化が進むにつれて支払いは楽になっているように思われるが、考えてみると「支払いの手段」はどんどん増えている。現金支払いに加えて、端末にかざすタイプの「ICカード」、カードリーダーに通す「クレジットカード」や「ポイントカード」「会員カード」などなど。レジ前で急な対応を求められることも多い。
この「Liscio」は、クイックアクセスに加えて「モノの指定席」という概念を取り入れたコンパクトウォレットである。フレキシブルな使い方ができる「bleed」とは異なり、コインやカードの収納場所が明確に決まっており、それぞれに最短でアクセスできるように作られている。
二つ折りの財布を開いてタテ持ちすると、紙幣とコインに同時にアクセスできるのは「bleed」と同じ。しかし、財布本体を開かなくてもカードが取り出せるポケットや、コインケースのみ開く方法など、決済手段に合わせた開閉ができるようになっているのである。
コインポケットのファスナーには、品質に定評のあるYKKファスナー。二つ折りを留める金具にはイタリアPRYM社製の高級プリムホックが使われており、パチンと気持ちの良い音を立てて嵌まる。こういった細かいパーツ選びも使い易さに直結する重要なポイントだ。
このL字ファスナータイプは、さまざまな革の種類が用意されているのも魅力の一つで、イタリア、テンペスティー社の高級レザー「エルバマット」や、革本来の質感が楽しめるヌメ革タイプ。さらに今年から正式販売を開始することとなった「マルゴー」革を採用したタイプなど、さまざまな色や質感からお気に入りの一品を選ぶことができる。
新発想! 手ぶらで出かけられるお財布「micro pocket」
次にご紹介するのは、一風変わったショルダー型ウォレット「micro pocket」。財布としての機能に加えて、一緒に持ち歩くことが多いスマートフォンや、マスク、消毒液なども収納できるオールインタイプの財布である。ショルダー型以外にも、ウエストポーチやクラッチバックに変型し、まさに拡張ポケットとして使える製品だ。
この製品の設計ポイントはバーティカル(縦型)レイアウト。内部にはお金やカード類、文房具、外ポケットにはスマホやICカードが収納できるようになっているが、すべての開口部が「上」に統一されており、肩掛けしたまま片手で物が取り出せるようになっている。手ぶら派の男性や、小さなお子様のいる人にも便利な設計だ。
カバンというほど大きくもなく、手ぶらで出かける感覚のサイズ感がちょうどいい。使われている素材はプルアップレザーとナイロン。革とナイロンのコンビは製品全体を軽量化するとともに、ポイント使いしたレザーが引き立って、見た目にもお洒落な仕上がりになっている。
クラファン挑戦中!の新製品「スタンドアップウォレット」
最後に、いまクラウドファンディングに挑戦中の新作ウォレットを紹介したい。製品名は「スタンドアップウォレット/ブリード」。本体を開くと、まるで飛び出す絵本のように開いてカードが立ち、この状態でお札やコインケースにもアクセスできるというスピード決済に特化した長財布である。
長財布としては小さめに作られているので、コンパクトウォレットを使いたいけれど、二つ折りタイプだとカードが入りきらないという人はこのタイプが最適だろう。大きめのスマホ程度のサイズ感だが、たくさんのお札と小銭が約20枚、カード類は最大23枚、さらに通帳も入れられる大容量ウォレットだ。
この「スタンドアップウォレット/ブリード」は、1月23日まで「Makuake」にてクラウドファンディングを実施しているので、気になる人はチェックしてみて欲しい。
Makuakeプロジェクト
『ガバっとひらいてカードが立つ!』スリムコンパクト長財布
https://www.makuake.com/project/studium2/
正式販売は2022年4月頃になる見込み。評判が良ければ革のバリエーションも増やしていくとのことなので、こちらも楽しみにしたい。
使って分かる「コンパクトウォレット」の実力
ここまで紹介してきた製品は、素材も形状もサイズもさまざまだが、どれも黒田さんが使う人の事を考えて設計したもの。必要最小限なコンパクトウォレットだからこそ、すべてのパートにスマートにアクセスできなければ意味がない。“コンパクト”なだけではない、使い勝手の良さが、コンパクトウォレットの本当の実力といってよいだろう。
そして、使う側も。自分自身のお財布の使い方や、本当に必要なものを見極め、自分に合ったコンパクトウォレットを選ぶことが重要なのではないだろうか。本記事と黒田さんの設計思想が、2022年のあなたのお財布選びの参考になれば幸いである。
- 「STUDIUM」(アルチザンファクトリー)
- プロダクトデザイナーの黒田憲司さんが2019年に立ち上げた革製品ブランド。素材を生かした機能的なモノづくりが特徴で、特にコンパクトウォレットの使い易さには定評がある。 https://artisanfactory.jp/
2022.01.17 Mon