写真加工やイラスト作成、Webのデザインパーツを作ったり、立体加工や合成でアート作品を作ったり……。いろいろなことができるAdobe Photoshopは、搭載されている機能の数も多く、そのすべてを理解するのは容易ではありません。
しかし、趣味で写真加工を楽しみたい人と、アート作品を作りたい人、プロのレタッチャーを目指す人では自ずと習得すべきポイントも変わってきます。せっかくPhotoshopを学ぶなら「自分のやりたいこと」に最短距離で到達して欲しい。
本記事では、普段からクリエイターの卵たちを指導しているデジタルスクール講師に、タイプ別のオススメ書籍を紹介していただきます。実際に書籍の中身を覗きながら選べるので、本気で学びたい!と思っている方は必見ですよ!
- 初めての1冊に
「世界一わかりやすいPhotoshop 操作とデザインの教科書」 - 基礎習得を重視するなら
「Photoshop よくばり入門」 - 手を動かしながら学びたい人は
「デザインの学校 これからはじめるPhotoshopの本」 - ステップアップしたいなら
「Photoshopレタッチ・加工 アイデア図鑑」 - コレやりたい!がすぐに実現する
「ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン」 - CG作品やビジュアル制作など、作品作りに活かせる
「ノンデザイナーのためのPhotoshop写真加工講座」 - スキル向上と作業効率化に
「基礎から時短ワザで覚えるPhotoshopの教科書」 - デザインのプロを目指すなら
「Photoshopレタッチ[伝わる]写真補正&加工を学ぶ現場の教本」 - 【オススメ書籍情報一覧】
初めての1冊に
「世界一わかりやすいPhotoshop 操作とデザインの教科書」
『世界一わかりやすいPhotoshop 操作とデザインの教科書 [改訂3版]』
難易度 | ★☆☆☆☆(初心者向け) |
ページ数 | 288ページ |
価格 | 2,508円(本体 2,280円+税10%) |
発売日 | 2020年5月23日 |
著者 | 柘植ヒロポン、上原ゼンジ、吉田浩章、角田綾佳 著 |
出版社 | 技術評論社 |
各Lessonごとに練習問題もあり「教科書」としての価値アリ!
何よりも丁寧で充実した機能と操作の解説が印象的な書籍であると感じた。「教科書」と銘打っているだけあり、我々講師が教える定番フローでもある、選択範囲→レイヤー→マスク→フィルターという王道で、基本的な機能を段階的に学べるPhotoshop事始めにはもってこいの一冊だと言える。
また、書籍内のレイアウトも十分な解説文章もありつつ、適時キャプチャも用意された丁寧な構成になっておりまとまっている。
そして、各Lessonごとに用意された章末の練習問題で内容を振り返りながら実践する流れも自然で、スキルの定着に役立ちそうだ。
基本を充実させたことで機能を主軸に解説している関係上、作品作りや制作における利用シーンをイメージするには少し物足りなさも感じてしまう。Lesson終盤になると「xxxをつくる」という流れになるが、ページ数の関係から少々詰め込み感&物足りない感が否めないので、繰り返しになるが、まずは最初の1冊としてオススメしたい。
基礎習得を重視するなら
「Photoshop よくばり入門」
『Photoshop よくばり入門 CC対応 (できるよくばり入門) 』
難易度 | ★☆☆☆☆(初心者向け) |
ページ数 | 272ページ |
価格 | 2,178円(本体 1,980円+税10%) |
発売日 | 2021年10月21日 |
著者 | senatsu 著 |
出版社 | インプレス |
手順型で進む構成と動画のフォローで、丁寧に学べる入門向けの良書
手順を追うことで基本を着実に進められる入門書としてオススメ。近年の学びスタイルでは定番でもある“レクチャー動画”も補助的にうまく取り入れられおり、この本を最後まで読み進めれば、Photoshopの基本ができるようになる!と確かに言えるそんな1冊。
各Lesson毎に仕上がる作例は分かりやすく端的にまとめられており、入門者には程よいボリューム感なのも諦めずに読み終われそうだ。
また、読み進めながら半分をすぎたあたりからは、基本操作を終え具体的な作品づくりをイメージできるようになりモチベーションも保てるだろう。「よくばり入門」とあるタイトル通り、基本を抑え応用に活かすまでの流れがうまくまとめられている。
ただインパクトのある作例が少ないため、より多くの表現を求めるなら次の1冊として事例を中心とした内容のものにステップアップするのも良いだろう。
手を動かしながら学びたい人は
「デザインの学校 これからはじめるPhotoshopの本」
『デザインの学校 これからはじめる Photoshopの本 [2020年最新版] 』
難易度 | ★☆☆☆☆(初心者向け) |
ページ数 | 160ページ |
価格 | 2,178円(本体 1,980円+税10%) |
発売日 | 2020年1月22日 (2022年2月9日) |
著者 | I&D 宮川千春、木俣カイ 著、ロクナナワークショップ 監 |
出版社 | 技術評論社 |
見やすいレイアウト構成&簡潔にまとめられた解説が、初心者にはピッタリ!
「これからはじめる」のタイトル通り、Photoshopを学びはじめるのに最初に手に取るならオススメできる本。
その理由は3つあり、まず最初に、本のサイズが横に広く見開きながら操作できる「並行作業」に使いやすい形状、これは意外と大切。
次に、大きく配置された図版とポイントに絞った控えめな解説文章が、初心者にありがちな、未知の事柄に対する「先入観だけで感じる難しさ」を「できるかな?」に変えてくれるだろう。
最後に、基本のおさらいをしながら作る2つの作例で全体が締めくくられる構成。全体を通してのボリューム感は少なめだが、無理なく始められる最初の一歩としては、むしろそのボリューム感は好印象だ。
なお、本記事で引用させていただいたのは [2020年最新版] だが、2022年の2月に[2022年最新版]が発売されており、内容のアップデートが図られている。
ステップアップしたいなら
「Photoshopレタッチ・加工 アイデア図鑑」
『Photoshopレタッチ・加工 アイデア図鑑[第2版] 』
難易度 | ★★★☆☆(経験者向け) |
ページ数 | 336ページ |
価格 | 2,695円(本体 2,450円+税10%) |
発売日 | 2020年9月18日 |
著者 | 楠田 諭史 著 |
出版社 | SBクリエイティブ |
まさに図鑑! 作品づくりにPhotoshopを活かすならこの1冊
書店で一度手に持って、その分厚さとボリューム感に驚いた。そして開いたページの作例や素材のクオリティを見て、驚きから期待に変わった。いわゆるガイド本を見るというより、雑誌をみているような感覚が印象的だ。
Photoshopの機能や操作を紹介する初心者向けではなく、Photoshopを使って作品をつくるためのきっかけとなる、そんな1冊になる。
作品づくりを中心に学んでいく構成から、機能解説は充分とは言えず、初めの1冊・初心者向きではない。例えば、レタッチの定番「人物補正」をテーマに「女性を柔らかく魅力的にする」という作例があり、その中でスマートオブジェクトからの各種フィルターといったワークフローを学んでいく流れだが、初心者には設定を追うだけで精一杯になりそう。
初心者向けではないが、Photoshopの基本を身につけた人が次に選ぶなら間違えなくオススメしたい内容である。Chapter7からの「高度なレタッチ・加工の表現」などは作品として見るだけでも楽しめ、またそのワークフローを知ることができ、そしてチャレンジできるのはこの本ならではの魅力だ。
コレやりたい!がすぐに実現する
「ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン」
『ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン』
難易度 | ★★★☆☆(経験者向け) |
ページ数 | 256ページ |
価格 | 2,178円(本体 1,980円+税10%) |
発売日 | 2020年10月1日 |
著者 | トミナガハルキ 著 |
出版社 | インプレス |
50以上の作例から「コレやりたい!」が実践できる
そもそもこの書籍は一から順に進めていくことを目的にしていないだろう。初めのPhotoshopやまずはこの1冊からといった目的には合わない。
作者いわく「Photoshopは料理だ!」との書き出しが示す通り、レシピとしての作例が50以上用意されており、コレってどうやったら実現できるんだろう?と思わせる。反面、作例にもし魅力を感じなければあまりオススメはできないので、作例ページは購入前に確かめておきたい。
初めて向きではないと述べた通り、各レシピでは基本操作に対する丁寧な解説があるとは言えない。ナンバリングされた順番通りに進めることで「ズボラ」に完成させることができるため戸惑うことは少ないが、作例から応用を効かせた使い方を想像するには一定レベルのPhotoshopスキルが求められる。
例えば、レイヤーマスクを活用するレシピ内ではブラシを活用した境界線のマスク効果を狙った手法が学べる構成になっているが、初心者がつまずく定番「アルファチャンネル」の活用をまずは「ズボラ=知識いらず」に始められ、達成感を得られる構成になっているのは魅力である。
CG作品やビジュアル制作など、作品作りに活かせる
「ノンデザイナーのためのPhotoshop写真加工講座」
『ノンデザイナーのためのPhotoshop写真加工講座』
難易度 | ★★★★☆(経験者向け ) |
ページ数 | 208ページ |
価格 | 2,750円(本体 2,500円+税10%) |
発売日 | 2021年1月29日 |
著者 | パパ 著 |
出版社 | 玄光社 |
作者目線の7か条に共感! Photoshopを“活かす”ためのノウハウ本
この本で印象に残ったのは作例だけでなく、作者の制作者としての考えだ。本の導入にある「パパ流 モノ作りの7か条」を読めば、Photoshopを使うことは目的ではなく手段であることにしっかりと気づかせてくれる。
また、Photoshopを使う前の大切な事柄にも触れられており、作者の講座を受けているような印象を持った。
もちろんPhotoshopの基本操作に触れる場面もあるが、作品づくりを主体としているため仕上がる作例は個性的なものが多く好みが別れる。各作例に入る前の作者の導入解説は制作者ならではの視点で書かれており、読み応えがありこの本の魅力になっている。
一例をあげると「なじませる」というレタッチの基本でありキモである考えなどはキャプチャを交えながら解説されている点がわかりやすい。
基本的な操作や機能にページを割くというよりは、考え方や作品作りにおけるアドバイスが充実しており、CG作品やビジュアル制作を目指す初学者に向いている。
スキル向上と作業効率化に
「基礎から時短ワザで覚えるPhotoshopの教科書」
『基礎から時短ワザで覚えるPhotoshopの教科書』
難易度 | ★★☆☆☆(経験者向け) |
ページ数 | 288ページ |
価格 | 2,750円(本体 2,500円+税10%) |
発売日 | 2021年8月31日 |
著者 | 広田 正康 著 |
出版社 | 技術評論社 |
Photoshopレベルを初心者から引き上げるための逆引き系な良書
基本の使い方に慣れてくると次に重要なのは「作業の効率化」。効率化=時短ワザはレベルアップには欠かせないことから、そのポイントを逆引き的に覚えていけるハウツー本として読んでおきたい内容だ。
教える立場にある私も知らなかった時短ワザもあり、Photoshopを使う人なら誰にでも役立つワザが必ず1つは見つけられる。
また意外と大事なのが「操作」だけでなく「設定」関係の時短ワザで、この点にも解説が及んでおり、解説する範囲の幅広さもある。
さらにはクラウドドキュメントといった新しいファイル管理などにも触れており、定番から新しいワザまでスキルの向上と更新に役立つ1冊になるだろう。
デザインのプロを目指すなら
「Photoshopレタッチ[伝わる]写真補正&加工を学ぶ現場の教本」
『Photoshopレタッチ[伝わる]写真補正&加工を学ぶ現場の教本』
難易度 | ★★★★★(経験者向け) |
ページ数 | 256ページ |
価格 | 2,750円(本体 2,500円+税10%) |
発売日 | 2020年3月17日 |
著者 | 大谷 キミト 著 |
出版社 | エムディエヌコーポレーション |
レタッチの目的=写真で伝えるための現場教本! デザイナー1年生に!
Photoshop本と聞くと使い方ガイドブックと思ってしまうが、この本は現場を意識した「クライアントからの依頼に基づいてレタッチをする」という制作にとって当然のワークフローを明確に意識づけできる、そんな構成がまず印象的で魅力になっていると感じた。
本の導入にある「レタッチの目的」は、ぜひグラフィックデザインって何?と気になっている人全員に読んでほしい。
またクライアントワークによくある「おまかせ」という名の丸投げを、制作者目線での考察を交えながら解説しフローにつなげていくという流れも自然で、意味や理由を理解しながら技術習得できるのは素晴らしい。
さらには、これまた制作者にとっては当然な「地味な作業でクオリティを高めるレタッチ」にも突っ込んだ解説が行われており、著者の惜しみない技術レクチャーが内容の実用性を高めている。
【オススメ書籍情報一覧】
難易度 | ページ数 | 価格(税込) | 発売日 | |
世界一わかりやすいPhotoshop 操作とデザインの教科書 [改訂3版] | ||||
★☆☆☆☆ | 288P | 2,508円 | 2020/05/23 | |
Photoshop よくばり入門 CC対応 (できるよくばり入門) | ||||
★☆☆☆☆ | 272P | 2,178円 | 2021/10/21 | |
デザインの学校 これからはじめる Photoshopの本 | ||||
★☆☆☆☆ | 160P | 2,178円 | 2020/1/22(2022/2/9) | |
Photoshopレタッチ・加工 アイデア図鑑 | ||||
★★★☆☆ | 336P | 2,695円 | 2020/9/18 | |
ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン | ||||
★★★☆☆ | 256P | 2,178円 | 2020/10/1 | |
ノンデザイナーのためのPhotoshop写真加工講座 | ||||
★★★★☆ | 208P | 2,750円 | 2021/1/29 | |
基礎から時短ワザで覚えるPhotoshopの教科書 | ||||
★★☆☆☆ | 288P | 2,750円 | 2021/8/31 | |
Photoshopレタッチ[伝わる]写真補正&加工を学ぶ現場の教本 | ||||
★★★★★ | 256P | 2,750円 | 2020/3/17 |
紹介してくれた人
- イクシマ ヨシロー(2+10)
- デジタルハリウッド講師
- デジタルハリウッド大阪(本校・studio大阪梅田・studioなんば)にて、グラフィックデザイン、UI/UX 、Webフロントエンドなどの講座を担当。LPI-Japan主催のセミナー「HTML5感。HTML5の最新動向と明日から使いたくなるHTML5のあれこれ」では、デザイン目線で考えるHTML周辺技術を発信する。
2022.05.20 Fri