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作業が捗る!クリエイティブワークが楽になる作業効率化「Tips」

2023.08.31 Thu2023.09.01 Fri

〜ちょっと対応が難しい「クリエイティブ・コモンズ」を分かりやすく徹底解説!〜

クリエイターなら知っておきたい「クリエイティブ・コモンズ」の基礎知識

文・画像:塚本建未

ふと考えると、私たちはWebブラウザや数多くのSaaS系ツールなど無料で提供されるサービスや素材に囲まれてインターネットを利用していることに気づきます。また、ITサービスは、無料でサービスで提供することでシェア率を高め、それに付随する負荷サービスで収益化を狙うというのが一つのセオリーにもなっています。

クリエイターの制作活動も、無料のイラスト、アイコン、ブラシ、フォントなど、多くのフリー素材に支えられています。ちょうど「いつも無料で利用させてもらってばかりだな」と考えていた折に、私のもとにイラストを使わせて欲しいという問い合わせがありました。ポートフォリオ用に習作として作成した過去作について利用料金を尋ねられたのですが、子供のためのスポーツの合同練習イベントに利用したいとの事だったので、私は無償で提供できればと思いました。そこで利用してみたのが、今回紹介するクリエイティブ・コモンズというライセンスです。

インターネット社会では自分の作ったコンテンツが誰かの役に立つことの方がより重要で、直接収益化には結びつかないけれども、自分の存在を周知させることで、結果としてビジネスになるといったアプローチが確実に存在します。

しかし、著作権関連の法律は複雑で、細かなルール決めをクリエイター個人が行うことは困難です。国際的な共通ルールとして作成されたクリエイティブ・コモンズのライセンスであれば、その点安心です。興味を持っている方も多いかと思いますが、本記事ではクリエイティブ・コモンズの概要や、ライセンスの種類、使い方などを詳しく解説します。

クリエイティブ・コモンズとは?

クリエイティブ・コモンズとは
クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)とは、著作物の適正な再利用を促進することを目的として、著作者自らが著作物の再利用を許可するという意思表示を手軽に行えるように様々なレベルのライセンスを策定し普及を図る国際的プロジェクト及びその運営主体である国際的非営利団体の名称です。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下、CCライセンス)は、クリエイティブ・コモンズが策定しているパブリック・ライセンスです。パブリック・ライセンスとは、著作者が著作権やその他の知的財産権を保持したまま、誰でも自由に利用できるように作品を流通させることを許諾するライセンスです。CCライセンスでは、著作者のクレジット表記、非営利利用、改変の許諾などの条件が定められており、これらの条件を満たす限り、誰でも自由に作品の再配布や改変が可能になります。

CCライセンスは、世界中のさまざまな分野で活用されており、写真、音楽、動画、ソフトウェア、教材、データなど、さまざまな種類の作品に適用されています。日本では、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンが、CCライセンスの普及と啓発活動を行っています。

オープンソースという考え方
クリエイティブ・コモンズは、インターネット時代の新しい著作権のあり方を実現しようと米国スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授らによって2002年5月に創設されたプロジェクトです。こうした新しい著作権といった考えの基になったのが、オープンソース・ライセンスという考え方です。

オープンソース・ライセンスとは、ソースコードを無償で公開し、誰でも自由に利用、改変、再配布を許可する考え方で、1980年代に、リチャード・ストールマン氏によって提唱された概念です。オープンソース・ライセンスのソフトウェアは、オープンソース・ソフトウェア(OSS)と呼ばれ、ソフトウェアの開発や普及に大きな影響を与えました。世界中の開発者によって共同で開発・維持されてきた数多くのOSSは、商用ソフトウェアに比べて安価で、自由にカスタマイズできるため、さまざまな分野で活用されて、その品質や機能も常に向上しています。

IT技術の発展は、オープンソース・ライセンスによって支えられてきたとといっても過言ではなく、ソフトウェアに限らず、さまざまな分野に適用されています。CCライセンスとオープンソース・ライセンスは、「著作権の保護を維持しながら著作物の自由な利用を促進する」という共通の目標を持っています。そのため、CCライセンスは、オープンソース・ライセンスの精神を受け継いでいると言えます。

ただ、CCライセンスは、著作物の自由な利用を促進するだけでなく、創造性を促進し新たな価値を生み出すためのツールとしても重要な役割を果たすというコンセプトも含まれるため、オープンソース・ライセンスと比べてより広い範囲の著作物に適用できるように設計されています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの種類

ここからはCCライセンスの種類と、その前提となるコモンズ証など基礎知識について解説します。

CCライセンスの基本要素
著作権については、本記事で詳しく説明することは難しいので割愛します。しかし、クリエイティブ・コモンズを理解する上で、「著作権がある状態」と「パブリックドメイン」の関係性については重要な要素ですので、簡単に説明します。

「著作権がある状態」と「パブリックドメイン」(出典:https://creativecommons.jp/

著作権がある状態を示すためには「All rights reserved」と表記したり、Cが丸で囲まれた著作権マークを表示します。あらゆる著作物には著作権があり、現行の法律では著作権者の死後70年まで保護されます。これに対し、著作権が切れた状態、著作権を放棄した状態など、著作権やその他の知的財産権が発生しておらず、誰でも利用できる状態のことをパブリックドメインと呼びます。パブリックドメインは、PDという略語が丸で囲まれたマークで示すことができます。

CCのアイコン
PDのアイコン

この著作権がある状態とパブリックドメインの間に、いくつかの権利の主張を含めたライセンスとして存在するのがCCライセンスです。CCライセンスは、CCが丸で囲まれたマークで表示されます。

CCライセンスには、基本要素となる4つの条件(表示、非営利、改変禁止、継承)があり、この基本要素を組み合わせた6種類のライセンスがあります。以下に、4つの基本要素を説明します。

【表示(BY)】
著作者や作品に関する情報を表記することです。作品を利用する場合、著作者や作品のタイトル、ライセンス情報などを明記する必要があります。BYは英語の「Attribution」の略です。

【非営利(NC)】
営利目的での利用を禁止することです。作品を営利目的で利用することはできません。NCは英語の「Noncommercial」の略です。

【改変禁止(ND)】
作品を改変して利用することを禁止することです。作品を改変して利用することはできません。NDは英語の「No Derivative Works」の略です。

【継承(SA)】
改変された作品にも同じライセンスを適用することです。改変された作品を利用する場合は、改変された作品にも同じライセンスを適用する必要があります。SAは英語の「ShareAlike」の略です。

これらの基本要素は、コモンズ証と言われる以下のマークによって示すことができます。

表示(BY)のアイコン
非営利(NC)のアイコン: ドル、円、ユーロなどのバージョンがある
改変禁止(ND)のアイコン
継承(SA)のアイコン

以下の図のように、全ての権利を主張した「著作権のある状態」から、全ての権利を放棄した「パブリックドメイン」の間に、上記の基本要素を組み合わせることで構成されたいくつかの権利の主張を含む「6種類のライセンス」が存在します。

グラデーションのように配置できるCCライセンス(出典:https://creativecommons.jp/

このように権利の主張の強弱によってグラデーションのように段階的に配置された図をイメージできると、次に解説するCCライセンスの種類を理解しやすくなります。

CCライセンスの種類
4つの基本要素を組み合わせた6つのCCライセンスの種類を確認していきましょう。

1.表示(BY)ライセンス

 表示(BY)ライセンスのアイコン

「CC BY」は、著作者のクレジット表記を義務付ける条件のみの、最も緩やかなライセンスです。作品を再配布する際には、著作者の名前、作品タイトル、作品のURLなどを明記する必要があります。

2.表示ー改変(BY-SA)ライセンス

 表示ー改変(BY-SA)ライセンスのアイコン

「CC BY-SA」は、「CC BY」に加えて、再配布された作品にも同じライセンスを適用することを義務付ける「継承」の条件を追加したライセンスです。作品を改変して再配布する際には、再配布された作品にも同じライセンスを適用する必要があります。

3.表示ー改変禁止(BY-ND)ライセンス

 表示ー改変禁止(BY-ND)ライセンスのアイコン

「CC BY-ND」は、「CC BY」に加えて、作品を改変することを禁止する「改変禁止」の条件を追加したライセンスです。作品を再配布する際には、著作者の名前、作品タイトル、作品のURLなどを明記する必要があります。

4.表示ー非営利(BY-NC)ライセンス

 表示ー非営利(BY-NC)ライセンスのアイコン

「CC BY-NC」は、「CC BY」に加えて、作品を非営利目的に限り利用することを義務付ける「非営利」の条件を追加したライセンスです。作品を商用目的に利用する場合には、ライセンスの許諾を得る必要があります。

5.表示ー非営利ー継承(BY-NC-SA)ライセンス

表示ー非営利ー継承(BY-NC-SA)ライセンスのアイコン

「CC BY-NC-SA」は、「CC BY-NC」に加えて、再配布された作品にも同じライセンスを適用することを義務付ける「継承」の条件を追加したライセンスです。作品を改変して再配布する際には、著作者の名前、作品タイトル、作品のURLなどを明記する必要があります。

6.表示ー非営利ー改変禁止(BY-NC-ND)ライセンス

表示ー非営利ー改変禁止(BY-NC-ND)ライセンスのアイコン

「CC BY-NC-ND」は、「CC BY-NC」に加えて、作品を改変することを禁止する「改変禁止」の条件を追加したライセンスです。作品を改変して再配布したり、改変した作品を商用目的に利用する場合には、ライセンスの許諾を得る必要があります。
 

【クリエイティブ・コモンズ・ライセンス一覧表】

ライセンス 表示非営利改変継承
CC BY ××
CC BY-SA ×
CC BY-ND ×××
CC BY-NC ×
CC BY-NC-SA 
CC BY-NC-ND ××

※◯☓は「表示してね、非営利だけにしてね、改変OKだよ、継承してね」と考えると表が理解しやすいです。

本記事では割愛しますが、上記の6種類以外にも、楽曲データ用に「サンプリング禁止」といった条件を加えたライセンスも存在します。また、「CC-BY-SA 3.0」などのようにライセンス表記の後に「3.0」「4.0」といった数字が記載される場合がありますが、これはライセンスのバージョンです。CCライセンスも社会の変化に合わせてバージョンアップしているのです。

パブリックドメインツール
クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス以外にパブリック・ドメイン・ツールも管理しています。パブリック・ドメイン・ツールとは、著作権の保護期間が切れた著作物や、著作者が著作権を放棄した著作物であることを示すためのツールです。クリエイティブ・コモンズから以下のようなアイコンが提供されています。

1.CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)

 CC0のアイコン

CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)は、著作者や著作権の権利者、または著作権に類する権利(データベース権も含む)を保有する人によって、一つ、または複数の国々で、著作権の保護下にある著作物に付与されます。

ある著作物にCC0が付与されると、法的な意味において、その著作物の著作権やそれに類するさまざまな権利は国境を超えて放棄されることになります。著作物は、方法・目的にかかわらず、誰もがどんな形であっても使用できる状態になります。

2.PDM(パブリック・ドメイン・マーク

 PDMのアイコン

PDM(パブリック・ドメイン・マーク)は、著作権の保護下にない著作物を示すためのマークです。PDMはCC0と違い、著作物の権利のあり方を変更することはありません。PDMは誰でも付与することができます。ある作品が世界中のどの地域においても著作権によらないことを示すために使用されます。

これらのパブリック・ドメイン・ツールは、著作物がパブリック・ドメインであることを示すだけでなく、クリエイティブコモンズ・ライセンスの著作物とパブリック・ドメインの作品を区別するためにも役立ちます。

著作権も含めたより専門的な解説は、東京大学が運営しているオンライン授業・Web会議ポータルサイト「utelecon」にある「パブリック・ドメイン、クリエイティブ・コモンズとは?」というページやWikipediaの「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」の項なども参照してみましょう。

クリエイティブ・コモンズの使い方

CCライセンスは、著作者が自分の作品に自由に付与できるライセンスです。関係団体等への手続き等は特に発生しません。後述するライセンスの種類を選択し、作品にライセンスを表示させることでクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使用できます。ライセンスの表示には、以下の方法があります。

1.CCライセンスのアイコンを表示する
前章で解説したコモンズ証が組み合わさったCCライセンスのアイコンを表示することで、CCライセンスを付与できます。

【アイコンのダウンロード】
アイコンは、クリエイティブ・コモンズの公式サイトからダウンロードできます。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンにもダウンロードページがありますが、リンク切れがあるので、本部の公式サイトからダウンロードしたほうが確実です。
アイコンのダウンロードページ
アイコンのダウンロードページ(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)

2.CCライセンスのテキストを表示する
「CC BY-NC」や「表示ー非営利ー改変禁止」といったように、CCライセンスの種類をテキストで表示させることでも、CCライセンスを付与できます。

3.CCライセンスを選択する際に表示されるHTMLコードを表示する

Wikipediaで画像をダウンロードする際に表示されるCCライセンスのHTMLコード

Wikipediaに使われている画像など、CCライセンスを選択する際に表示されるHTMLコードを表示させることでも、CCライセンスを付与できます。

クリエイティブ・コモンズを活用するメリット

クリエイティブ・コモンズを活用するメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

1.作品の流通を促進する
CCライセンスの作品は、著作権者の許諾を得ずに自由に利用できます。著作者であるクリエイター自身が手軽にライセンスを付与できるため、作品の共有が容易になり、自分の作品をより多くの人に利用してもらい、広く普及させることができます。

2.新たな価値を生み出す
CCライセンスの作品は、誰でも自由に利用して、改変や再利用できます。異なるクリエイター同士がコラボレーションして、新たな価値を生み出すことにも貢献します。また、作品の再利用が増えることで、知識や情報の流通が促進され、社会全体への貢献にも繋がります。

3.創造性を促進する
CCライセンスの作品は、著作権の制約を気にすることなく、自由に利用できます。クリエイターは、著作権の範囲内で他者の作品を自由に自身の作品に利用できるため、コンテンツの創造性がより高まります。

クリエイティブ・コモンズをコンテンツ制作に活用する方法

クリエイティブ・コモンズをデザイン分野などのクリエイティブワークに活用する方法は、以下のとおりです。

1.素材の提供・利用に役立てる
CCライセンスを使えば、クリエイターは自分の素材を自由に公開して、他のクリエイターに利用してもらい新たな制作物に活かしてもらうことができます。また、他の著作者が提供しているCCライセンスの素材を自身の作品に組み込むことで、写真、イラスト、フォント、音楽、動画など、さまざまなコンテンツ制作に活用できます。

こうした素材提供の成功事例は数多くあります。例えば、CCライセンスの使用されている代表的な作品の一つに、クリプトン・フューチャー・メディア社が提供する人気キャラクター「初音ミク」があります。「初音ミク」はCC-BY-NCでライセンスが付与されています。さまざまなコンテンツに「初音ミク」が登場しているのは周知のとおりです。

人気キャラクター「初音ミク」もCCライセンスで管理されている


また、フリーのインターネット百科事典であるWikipediaのコンテンツ(テキスト以外の画像、動画、音声などを含む)は、CCライセンスのCC-BY-SA 3.0でライセンスが付与されています。これにより、誰でもWikipediaのコンテンツを自由に利用して再利用できます。

Wikipediaに掲載されている画像素材もCCライセンスが付与されている

さらに、多くのフリー素材提供サービスが、クリエイティブ・コモンズで運用されています。代表的なサービスがAdobeが提供するクリエイティブ素材のマーケットプレイスであるAdobe Stockです。他にも、Pixabay、Unsplashといった画像素材提供サービス、Jamendo、Free Music Archive、CCMixterといった楽曲素材提供サービスなどでクリエイティブ・コモンズが使われています。

CCライセンスを用いることで、制作した素材を著作権を保持しながら流通しやすくできるので、大変便利です。

2.他の作品からアイデアを得る
CCライセンスの作品は、著作権の制約を気にすることなく自由に利用できるため、他のクリエイターの作品を参考にして新しいトレンドや表現方法を知ることができ、自分のアイデアや創造性を思う存分発揮できます。

3.コラボレーションに役立てる
CCライセンスは、著作権者である他のクリエイターの許可を得ずに、自由にコラボレーションができます。他のクリエイターと共同で作品を制作したり、他のクリエイターの作品を自分の作品に組み込むといったことが簡単になるので、一人の力ではなかなか生み出せないような新たな表現を生み出せます。

4.広告やプロモーションに役立てる
広告やプロモーションに、CCライセンスの素材を活用する例もあります。例えば、写真やイラスト、動画など、さまざまなCCライセンスの素材を活用して、印象的な広告やプロモーションを制作できます。また、自分の素材を自由に公開することで、他のクリエイターに利用してもらい、作品の流通を促進できます。

5.教育や研究に役立てる
教育や研究に、CCライセンスの素材を活用する例もあります。学校の教材や、学習教材、ワークショップの素材などとして、CCライセンスの作品(写真、イラスト、動画など)が活用されています。

情報処理学会(IPSJ)がクリエイティブコモンズ・ライセンスで提供する公開教材


例えば、情報処理学会は高等学校「情報I」に関する教材を、CCライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)にて無償で公開しています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使用する際の注意点

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使用する際の注意点は、以下のとおりです。

1.ライセンスの種類を正しく選択する
ライセンスの種類によって作品の利用条件が異なるので、どのように自分の作品の利用を許諾したいかをよく考えて、適切なライセンスを適用する必要があります。

2.ライセンスの表示を正しく行う
CCライセンスを使用する場合は、作品にライセンス表示を正しく行う必要があります。ライセンス表示は、作品を公開しているWebサイトや、作品のファイルをダウンロードできるWebページに、ライセンスの種類とURLを記載することや、ライセンスのアイコンを表示することで行います。

3.ライセンスの条件を遵守する
CCライセンスは、ライセンスの条件を遵守しないと、著作権侵害に問われる可能性があるので注意が必要です。ライセンスの条件については、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのWebサイトで確認しておきましょう。

4.ライセンスを付与するタイミングに気をつける
CCライセンスは後から付与することも可能ですが、作品をネット公開した時点で他者に不正利用されるリスクが伴います。CCライセンスを厳密に運用していくには、ライセンスの表示は必ず作品を公開する前に行うようにしましょう。

5.他の著作権に注意する
作品に他の著作権が含まれている場合、その著作権の条件も遵守する必要があります。例えば、CCライセンスとして提供する作品に他のフリー素材を使用している場合は、フリー素材の利用規約も遵守する必要があるので注意しましょう。

クリエイティブ・コモンズ以外のパブリック・ライセンス

イラスト、写真、デザインといったコンテンツ制作とも相性の良いクリエイティブ・コモンズですが、ソフトウェア開発などクリエイティブワークの種類によっては、他のパブリック・ライセンス(主にオープンソース・ライセンス)のほうが使い勝手が良い場合もあります。代表的なパブリック・ライセンスを以下に紹介します。

GNU General Public License (GPL)
GNU General Public License (GPL)は、フリーソフトウェア財団 (Free Software Foundation)が作成したコピーレフト型ライセンスと呼ばれる最も厳しいライセンスの一つです。フリーソフトウェア運動の中心的なライセンスであり、WordPress、Linux、Apacheなどの多くのオープンソース・ソフトウェアに採用されています。

GNU Lesser General Public License (LGPL)
GNU Lesser General Public License(LGPL)は、GNU General Public License(GPL)の派生ライセンスです。ライブラリなどのソフトウェアに採用されることが多いライセンスです。

Apache License 2.0
Apache License 2.0は、Apacheソフトウェア財団が作成したオープンソースライセンスです。Apacheソフトウェア財団が開発する多くのオープンソース・ソフトウェアに採用されています。

BSD License
BSD Licenseは、Berkeley Software Distribution(BSD) の開発者によって作成されたオープンソース・ライセンスです。FreeBSDやOpenBSDなどの多くのオープンソース・ソフトウェアに採用されています。

MIT License
MIT Licenseは、Massachusetts Institute of Technology(MIT)によって作成されたオープンソース・ライセンスです。RubyやPythonなどの多くのオープンソース・ソフトウェアに採用されています。

【代表的なパブリックライセンス】
名称    条件    特徴    
GNU General Public License (GPL) 著作権表示、再配布、改変、再使用 改変された作品も同じライセンスとする。
GNU Lesser General Public License (LGPL) 著作権表示、再配布、再使用 ライブラリとして使用する場合、改変された作品も同じライセンスとする。
Apache License 2.0 著作権表示、再配布、再使用、派生物の作成 改変された作品に別のライセンスを適用することもできる。
BSD License 著作権表示、再配布、再使用、派生物の作成 改変された作品に別のライセンスを適用することもできる。
MIT License 著作権表示 改変された作品に別のライセンスを適用することもできる。

オープンソース・ライセンス等の利用方法については『著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本』(株式会社ボーンデジタル)をはじめとして、いくつか専門の良書が刊行されていますので、それらも参照してみましょう。

まとめ

著作権は独占して著作権料を得るためだけのものではありません。より重要なのは、著作権を自分のコントロール下にあるようにすることです。著作権を保護しつつ作品の利用を許諾することで「作品の価値を高めた」「セルフブランディングに成功した」といった事例は枚挙に暇がありません。

日本の著作権団体の多くは、著作物の利用に制限をかける・著作権利用料を徴収するという点ばかり囚われているように思います。一方で、パブリック・ライセンスにすることでインターネットミーム化し大成功した海外のクリエイターが数多く存在します。

日本でもスタジオジブリが全作品の場面写真を無償で提供することで「ジブリ大喜利」といったインターネットミームが流行し、ジブリへのエンゲージメントや企業価値を高めるのに貢献しています。しかし、クリエイター個人が、スタジオジブリのように「常識の範囲でご自由にお使いください」といった手法で作品を提供するにはリスクが大きいのも確かです。そこで役立つのがCCライセンスです。

CCライセンスは、クリエイティブワークをより豊かにするための有効なツールです。また、その種類や条件を理解し適切に活用することで、より多くの人に自分の作品を届けるための有効な手段になりますので、本記事を参考にしてクリエイティブワークに取り入れてみてください。

著者プロフィール

塚本 建未
ライター・編集者・イラストレーター
フリーランスのライター・編集者・イラストレーター。高校はデザイン科を卒業し、大学は、文学部とスポーツ科学部の2つの学部を卒業。フィットネス・トレーニング関連の専門誌で編集者・ライターとしてキャリアを積む。メインの活動の場をWebメディアに移行してからは、ITツール紹介やWebマーケティング分野などを得意領域として活動を続けている。
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