今回は『兄の終い/村井理子』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
均整の取れた文字を加工してシリアスかつ軽妙に
疎遠にしていた実兄が死去し、その事後処理に翻弄される妹の一部始終を描いたノンフィクション。現代社会における「死」というシリアスなテーマを扱いながらも、翻訳家・エッセイストとして活躍する著者の軽妙な語り口によって、どこか爽快な読後感を味わうことができる。
表紙カバーでは、その作品のシリアスかつ軽妙という相反する特徴が、独特のタッチのイラストやクセのあるタイトル文字などで印象的に表現されている。
Font.01「筑紫ゴシック D」
軽妙なイメージを加工した文字で表現
メインタイトルの文字は、モダンさとクラシックな雰囲気をあわせ持つ端正なゴシック体「筑紫ゴシック D」(フォントワークス)がベースに。シリアスなテーマなのに爽快な読後感という作品の特徴と、それを具現化したイラストのイメージを踏襲し、部分的に動きやアクセントをつけるなどの加工が施されている。
Font.02「筑紫ゴシック D」
タイトルに合わせ端正なゴシック体に
著者名部分は、メインタイトルのベース書体と同じ「筑紫ゴシック D」(フォントワークス)。硬質さと柔らかさをあわせ持つ同書体の書風が、作品のイメージやデザインコンセプトにあっているため選択された。
Font.03「筑紫ゴシック D」
他の文字要素と同じ書体で統一感を
作品名や著者名の欧文は、他の文字要素と同じ「筑紫ゴシック D」(フォントワークス)。作品の世界観やデザインコンセプトにあっているため選択された。イラストのカラーに合わせて文字の色を変え、アクセントをつけるなどの工夫も行われている。
2020.04.23 Thu2021.09.03 Fri