アンティークのように育つ「safuji」のやさしい革財布 ~ 霧のかかった本革とミニマムデザインの魅力 ~ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

アンティークのように育つ「safuji」のやさしい革財布 ~ 霧のかかった本革とミニマムデザインの魅力 ~

2020.9.22 TUE

モノづくり探訪記【第五回】
アンティークのように育つ「safuji」のやさしい革財布
~ 霧のかかった本革とミニマムデザインの魅力  ~

知られざる「モノづくり」の世界に迫るモノづくり探訪記。今回は柔らかそうな見た目が印象的な革製品ブランド「safuji」を訪問。アトリエ兼ショップを訪れ、独創的な製品の数々に触れながら、safujiというブランドが大切にしているモノづくりのポリシーを浮き彫りにしてみた。

2020年3月6日
●取材・構成:編集部 ●文:大澤裕司・編集部 ●撮影:下山剛志[ALFA STUDIO]


▷ 温かみのあるsafujiの革財布
safujiの主力製品は長財布、二つ折り財布、ミニ財布などの財布類。まずはその特徴的な外観を見ていただきたい。柔らかそうな革のテクスチャーとひかえめな装飾、クラシカルでありながら、どこか現代的な雰囲気もある。そして本革の重厚な印象を覆す、ふんわりとしたやさしい風合いが目に留まる。
<span style="color: #666699;">「ミニ財布」</span>

「ミニ財布」

<span style="color: #666699;">上から「こさいふL」「こさいふM」「こさいふ」</span>

上から「こさいふL」「こさいふM」「こさいふ」

<span style="color: #666699;">「ミニ長財布」ホックタイプ</span>

「ミニ長財布」ホックタイプ

<span style="color: #666699;">「ミニ長財布」外ボタンタイプ</span>

「ミニ長財布」外ボタンタイプ

safujiのアトリエ兼ショップがある「atelier tempo」には、新品に近いものから、経年変化が進んだものまでさまざまな状態の製品がサンプルとして置かれているが、どれもsafujiならではの独特の空気を纏っている。

新しいものは、まるで和紙のような軽やかな風合いだ。そして経年変化が進んで艶が出てきた製品には、アンティークの木製家具を思わせる深い味わいがある。

持ってみると思ったより小ぶりで、しっくりと手に馴染む。指に触れる装飾パーツがほとんどなく、容易に握り込めるのも一因だろう。
<span style="color: #666699;">持ってみると想像以上にコンパクトで、手の小さい人でも使いやすそうだ </span>

持ってみると想像以上にコンパクトで、手の小さい人でも使いやすそうだ

かばん類も同様で、とてもやさしく温かみのある仕上がりだ。懐かしさを感じさせるテクスチャーに、控えめなパーツ類とステッチが小粋でモダンな印象を与えている。
<span style="color: #666699;">財布以外にもトートバッグやサコッシュなどバッグ類が作られている</span>

財布以外にもトートバッグやサコッシュなどバッグ類が作られている

独特の雰囲気を持つこれらの製品はどのように形作られているのか、safujiブランドを立ち上げた革職人の沢藤さんにデザインや設計のポイントについて聞いてみた。
▷ シンプルだが印象に残る製品はパーツや素材へのこだわりから
safujiの製品を見ていくと、シンプルな見た目ながら印象に残るものばかり。そう感じる理由の一つは、デザインの一部にアクセントを設けていることにある。

まず注目したいのが、「ミニ長財布」や「こさいふL」の留め具に使われている、やや大ぶりで高さのあるホック。ここで使われている金具は金工職人による手作りで、わざと荒削りに仕上げてもらっているもの。よく見るとひとつひとつ形が違うのがわかる。財布全体からみるとごく小さなパーツだが、このようなディティールに沢藤さんのこだわりが詰まっている。
<span style="color: #666699;">金工職人が作る特注のホック。製品のデザインがシンプルなので、小さくても存在感があり印象に残りやすい</span>

金工職人が作る特注のホック。製品のデザインがシンプルなので、小さくても存在感があり印象に残りやすい

「ミニ折り財布」に使われている真鍮ホックは、先ほどとは異なる平面的なものだ。シャツやズボンのポケットから取り出す時に引っかからないようにするために採用したものだが、主張することなく控えめなサイズにもかかわらず、しっかりとした「製品の顔」になっている。

この真鍮ホックを決める時にも、製品とのバランスを考えて一般的なサイズより一回り小さなものへと付け替えたそうだ。
<span style="color: #666699;">平面的な留め具を採用した「ミニ折り財布」</span>

平面的な留め具を採用した「ミニ折り財布」

<span style="color: #666699;">最初に試した真鍮ホック(右)と実際に採用した真鍮ホック(左)。一回り小さくなることでナチュラルな印象に仕上がっていることが分かる</span>

最初に試した真鍮ホック(右)と実際に採用した真鍮ホック(左)。一回り小さくなることでナチュラルな印象に仕上がっていることが分かる

「オリジナリティーはモノを作る上でのテーマ。製品の『顔』を作るのは重要なことです」と沢藤さん。その思想は留め具だけでなく、縫製にも及ぶ。

safujiの製品は表にほとんど縫い目がないが、わずか数針のステッチを本体の縫製とは異なる糸を使って手縫いで入れている。使っているのは、蝋引きされた太めの糸。そのまま使うと太すぎるので、必要に応じて割いたり、手で捩じりを加えて使っているそうだ。
<span style="color: #666699;">safujiの製品は表にほとんど縫い目がない。わずかな手縫いのステッチが、ホックなどと同じくアクセントの役割を果たしている</span>

safujiの製品は表にほとんど縫い目がない。わずかな手縫いのステッチが、ホックなどと同じくアクセントの役割を果たしている

<span style="color: #666699;">手縫いで使用している蝋引きの糸。必要に応じて割いたり、捩じりを加えて強度を高めて使っている</span>

手縫いで使用している蝋引きの糸。必要に応じて割いたり、捩じりを加えて強度を高めて使っている

本体の縫製にもこだわりが。内縫いでも外縫いでもなく、革を折り込むようにして一部を手縫いで仕上げている。これは内側の収納スペースを確保する目的もあるが、完全な内縫いにすると印象が甘くなりすぎるので、この縫い方にしているのだそう。
<span style="color: #666699;">このように縫うことで、1万円札がすき間なくピッタリ収められるギリギリサイズの財布になり、全体のフォルムにも甘すぎない程よいやわらかさが出る</span>

このように縫うことで、1万円札がすき間なくピッタリ収められるギリギリサイズの財布になり、全体のフォルムにも甘すぎない程よいやわらかさが出る

素材となる本革ももちろん厳選されている。沢藤さんが好むのは鮮やかに染色されたものよりも、くすんだ感じや靄がかかったような独特な風合いの牛革だ。現在使っている革は、イタリア・バダラッシカルロ社の「ナッパネビア(=ミネルバネビア)」や「プエブロ」。ネビアとはイタリア語で「霧」の意味する。
<span style="color: #666699;">safujiの製品に使われている革。バダラッシカルロ社の「プエブロ」。カラーはネイビーである</span>

safujiの製品に使われている革。バダラッシカルロ社の「プエブロ」。カラーはネイビーである

沢藤さんが考える革の魅力とは「一緒に育っていくところ」と「使う人によって変化が異なること」。革は使っていくうち変化していくものなので、どういう風に変化していくのかをイメージしながら選んでいるそうだ。
▷ 小さくても機能を犠牲にしない製品設計
safujiの魅力はアクセントのきいたデザインや、製品を構成する素材・パーツだけではない。「ミニ長財布」「こさいふ」といった名前からも解るように、コンパクトな財布として作られているのだが、その外観からは想像がつかないほど収納力と機能性が高い。考え抜かれて設計されている。

●1万円札がピッタリ収まる「ミニ長財布」
通常の長財布は幅が19センチメートルなのに対し17センチメートルと短いことから名付けられた「ミニ長財布」。1万円札がすき間なくピッタリ収まるサイズ感だ。一覧性にも優れており、開くとすぐに紙幣と小銭がいくらあるかがわかる。
<span style="color: #666699;">「ミニ長財布」の内側。ホックを一つ外して広げるだけで、小銭から紙幣までが一気に見渡せる。理想の厚みを出すための縫製が、財布のサイズをギリギリまで小さくすることにもつながっている</span>

「ミニ長財布」の内側。ホックを一つ外して広げるだけで、小銭から紙幣までが一気に見渡せる。理想の厚みを出すための縫製が、財布のサイズをギリギリまで小さくすることにもつながっている

●紙幣も収納できる「キー付きミニ財布」
沢藤さん曰く、「自称『世界最小の財布』」なのが「キー付きミニ財布」。外観はキーケースにしか見えないが、紙幣、小銭、カード類が収納できるようになっている。2つ折りにした紙幣を、小銭入れの背後から滑り込ませるように入れる収納方法がユニークだ。
<span style="color: #666699;">「キー付きミニ財布」。500円硬貨を並べるといかに小さいかがわかるだろう。下が通常タイプで、上が後述する納富バージョン</span>

「キー付きミニ財布」。500円硬貨を並べるといかに小さいかがわかるだろう。下が通常タイプで、上が後述する納富バージョン

<span style="color: #666699;">紙幣は2つ折りにして小銭入れの背後から滑り込ませるように収納する</span>

紙幣は2つ折りにして小銭入れの背後から滑り込ませるように収納する

●小さいが収納力が高い「こさいふ」
「キー付きミニ財布」より収納力が高く、「ミニ長財布」よりコンパクトなのが「こさいふ」シリーズ。基本サイズの「こさいふ」のほか、最大サイズの「こさいふL」、両者の中間サイズになる「こさいふM」の3タイプがラインナップされている。
<span style="color: #666699;">小さいながら収納力の高い「こさいふ」シリーズ。上から「こさいふL」「こさいふM」「こさいふ」</span>

小さいながら収納力の高い「こさいふ」シリーズ。上から「こさいふL」「こさいふM」「こさいふ」

●2つ折りで最小サイズの「ミニ折り財布」
小さいだけでなく薄いのが魅力の二つ折り財布。safujiで作っているマネークリップがベースになっている。開くと1万円札がピッタリ収まる17センチメートルで、「ミニ長財布」を2つ折りにしたようなサイズ感だ。カード類を収納するポケットは2つあり数枚ずつを縦に収納できる。
<span style="color: #666699;">小さいだけでなく薄いのが特長の「ミニ折り財布」</span>

小さいだけでなく薄いのが特長の「ミニ折り財布」

沢藤さんによれば、最近は持ち運びに便利な小型財布を求める傾向が強いという。小型化すると使い勝手が落ちるものだが、小さな空間だからこそ、利用シーンや機能性を考えてデザインする。safuji の財布なら、収納量やライフスタイルに合ったものが選べそうだ。
▷ 顧客の声や提案を製品作りに反映する
「一つ一つの製品にストーリーが感じられるものを作っていきたいです。自分が作るとしたらどういうものができるのか?を常に考えています」。モノづくりに対するポリシーを、沢藤さんはこう表現する。

自らの考えやアイデアを突き詰めていくのはもちろんだが、沢藤さんは客や仲間からの意見も積極的に取り入れ、製品開発に反映している。

顧客の声を元に作った代表的な製品が「こさいふM」だ。「こさいふ」シリーズは紙幣を2つ折りにして収納する前提で作っていたが、折らずにそのまましまっている顧客がいたことがヒントになって「こさいふM」を開発した。

紙幣を折らなくてもしまいやすいように幅を少し拡げ、フラップの裏側を縫わずにフリーにして、伸ばした紙幣を挟み込めるようにした。細かい改良だが、同じ「こさいふ」シリーズの中でも使いやすいほうを選べるのは、顧客としてはうれしいだろう。
<span style="color: #666699;">「こさいふ」(左)と「こさいふM」(右)</span>

「こさいふ」(左)と「こさいふM」(右)

コラボレーションモデルを作ることもある。「All About」のガイドで、財布や革小物に造詣が深いライターの納富廉邦さんが「キー付きミニ財布」のユーザーだったことから、納富さんの要望を受けて改良したのが「キー付きミニ財布 納富バージョン」だ。

通常モデルと納富バージョンの違いはベルト。通常モデルはベルトをタテに一巻きしてホックで留めるので、背面に収納するカード類もベルトで固定されるが、カードだけ取り出したい時もベルトを外さなければならない。これに対して納富バージョンは、カード類を簡単に取り出せるようベルトの長さを大幅に短縮。カードポケットを通常モデルより深くして保持力を高め、下からカードを押し出せる窓を設けた。

沢藤さんは、このような利用者の意見を「それまでの自分にはなかった新しい考え方を学べる機会」だと考え、積極的に取り入れている。
<span style="color: #666699;">「キー付きミニ財布」の通常タイプと納富バージョンとの最大の違いは背面にある。通常タイプはカードもベルトでしっかりと固定するのに対して、納富バージョンは取り出しの手軽さを優先させている</span>

「キー付きミニ財布」の通常タイプと納富バージョンとの最大の違いは背面にある。通常タイプはカードもベルトでしっかりと固定するのに対して、納富バージョンは取り出しの手軽さを優先させている

▷ 柔軟な発想で進化していく革製品ブランド「safuji」
職人ならではの多彩なアイデアとモノづくりの確固たるポリシーを持つ一方で、顧客の声や提案も積極的に受け入れる。この柔軟性がsafuji製品に共通する柔らかさに通じているのかもしれない。

「今後はいま作っている製品をブラッシュアップしていきたい」と沢藤さん。今ある製品を、より研ぎ澄ましていくことを志向しているようだ。沢藤さんのインタビューからは、製品と真剣に向き合うモノづくりの奥深さがひしひしと伝わってきた。
safujiの沢藤勉さん

safujiの沢藤勉さん


「safuji」
http://safuji.com/
2010年に革職人の沢藤勉・加奈子さん夫婦が立ち上げた革製品ブランド。東京の三鷹に住居兼工房を構えるほか、2014年に地元のクリエイターと共同で、JR中央線の東小金井駅の高架下にアトリエ兼ショップ「atelier tempo」を開いた。

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