街歩きのお供に、人とは違ったお洒落なバッグが欲しい。そんな人にオススメしたいのが色も形も大きさも自由に選べ、上質な革だからこそ味わえるエイジング(経年変化)の風合いも楽しめるこのバッグ。今回のモノづくり探訪記は、神戸・トアウエストに店を構えるオリジナルバッグブランド「ORZO」のオシャレの秘密に迫ります。
2021年5月10日
●取材・構成:編集部 ●文:石黒直樹 ●撮影:下山剛志[ALFA STUDIO]
オシャレの発信は神戸トアウエストより
「神戸」と聞いて誰もが思い浮かべるのは、洒落た洋館の建ち並ぶ異国情緒あふれる街並み。そんな神戸らしさにあふれる風景と、個性的な洋服や雑貨店、カフェ&レストランが目白押しということで、女子旅スポットとしても注目を浴びている神戸トアウエスト。
その中にあるORZO旗艦店では、一階がバッグ、二階にはバッグとそれに合わせたセレクトファッション、そしてオーダーメイドにも応えられる工房が併設され、日々お洒落なバッグが生み出されているのだ。
曲線カットが作り出すユニークで使いやすいバッグたち
頭の中にある出来上がりのイメージでいきなり革をカットして、組み合わせながら調整して仕上げていく……そんな革作家・平岡学氏による自己流のバッグ作りが、他のブランドとは一線を画すORZOの個性。そんなORZOらしさを象徴しているのが、この「メッセンジャーバッグ」だ。
●メッセンジャーバッグ
当初は大きめのトートバッグのつもりで組み上げてみたところ、折りたたんでみたらメッセンジャーバッグのようなシルエットになったことで路線を変更。通常のメッセンジャーバッグはサイドにハンドルを取り付けているものが多いが、ORZOのメッセンジャーバッグは前面に取り付けるスタイルだ。
こうすることで、背負った時に柔らかなレザーで仕上げられたバッグ本体が身体にフィット。直線はなるべく使わず曲線主体で構成されたシルエットとも相まって、背負った時に身体に溶け込むようなシルエットを生み出す。
ORZOのバッグには「パーツを少なくして軽く仕上げる」というこだわりがあり、このメッセンジャーバッグもバッグ本体は前後の革のみ。フラップ部分は本体自体を折り曲げるので、口の部分がずれながら重なって二重になるというビジュアル的なアクセントも生み出している。そして留め金も軽さと使い勝手を重視したマグネットタイプで、手軽に開閉できるのも魅力の一つだ。
●ヌメ革レザーリュック
メッセンジャーバッグのコンセプトを発展させて、ユニークな構造のリュックに昇華させたのが次のアイテム「ヌメ革レザーリュック」だ。
上部を折り曲げてフラップとして利用するなどメッセンジャーバッグを発展させた構造になっているが、大きな違いはこのフラップ部分。仕事帰りにスポーツジムにも寄るといったハードな使い方も想定した大きめサイズだけに、フラップのホールド力はより強くなければならない。それを機能とデザインの両面から解決したのが、両サイドに取り付けられた留め金付きのベルトだ。
マグネット式の留め具でフラップを閉じた後、両サイドのベルトを後ろに回して繋げることで、口が開かないようにしっかりとホールド。折れ曲がったフラップがネコミミのような可愛らしく柔らかなシルエットになる点もユニークだ。
さらに繋がったベルトがハンドル代わりになって2WAYバッグ的な使い方もできるという、デザインと機能の両面で面白い仕上がりとなっている。
一般的なリュックの場合は小物などを収納する外ポケットが付いているが、パーツを減らして軽くするというのがORZOのコンセプト。このリュックにも外ポケットは付いていない。
その代わり、サイドのジッパーから内部の内ポケットにアクセスできるようになっており、頻繁に取り出す小物類が入れられるようになっている。こういったデザイン性と使い勝手を両立させている点もORZOのバッグの注目ポイントだ。
●トートショルダー2wayバッグ
自然に使い込んでもらえる軽さとシンプルさを持ったバッグを創る…そんなORZOの理想を形にしたのがトートバッグのラインナップだ。大きさやデザインで様々なトートが用意されているが、中でも高い人気を誇るのがトートショルダー2wayバッグ。
丸みのあるラインで切り出された革パーツ前後2枚を合わせたら基本形は完成という、可能な限りパーツを減らしたシンプルな仕上がりに加え、サイドには好みのショルダーストラップが付けられる金具を備えている。自分好みにカスタマイズできるので日常使いにはピッタリのアイテムだ。
サイズはSとMの2種類が用意されており、SサイズはA4サイズがギリギリ入る大きさ。プライベートだけでなく仕事用のサブバックとしても役に立つ絶妙のサイズ感となっている。常時仕事で使う人にはたくさんの書類が入るMサイズも用意されているが、デザインにこだわりたい人にはミニマムに可愛らしくまとまっているSサイズがオススメだ。
さらにORZOではオーダーメイドで自分だけのバッグを作ることもできる。ネットからのオーダーでは欲しいタイプのバッグを選び、「本体」「本体後面」で各4色、「ハンドル/ショルダーベルト」で5色、「ステッチ」で8色のカラーを選択して、好みの組み合わせで仕上げてもらうことができるのだ。
ホームページ上では選んだ色の組み合わせもプレビュー可能。スタッフからのオススメカラーセットや色を選ぶ際のアドバイスも載っているので、初めての人でも迷うことなくカスタマイズが楽しめるはずだ。
さらに店頭での注文なら、外ポケットやジッパーなどのパーツ追加や、自分の体格や用途に合わせたサイズ調整といったより細かい要望にも答えてくれる。自分だけのこだわりのバッグを作りたい人は、観光がてらお店を訪ねてみてはどうだろうか?
平岡氏のバッグづくりのルーツとは?
「自分の欲しいものは自分で作る」
そう考えた平岡氏が以前に勤めていた会社にあった工業ミシンを使って、誰に師事するわけでもなく独学でレザーバッグを作り始めたのがORZOのルーツだ。ORZOのバッグには平岡氏のお気に入りがいっぱい詰まっている。
使用している革は、昔から皮革産業が盛んな兵庫県姫路市で生産されている「姫路レザー」と、栃木レザー株式会社が生産する「栃木レザー」。この2つにこだわる理由は「自分の国で生まれたモノでバッグを作りたい」という思いに加え、湿気が多い日本では革にカビが生えやすいので、その対策も施された国産レザーがよいという考えからだ。
そしてデザイン的な個性の源となっているのが「曲線主体のデザイン」と「パーツの少なさ」だ。
「直線は自然界には存在しないし、鋭利で冷たいイメージがある。だからうちのバッグは曲線で優しく柔らかなデザインにしているんです」
真っ先に破れてメンテナンスが必要になる裏地も極力使わない。シンプルでありながら曲線を巧みに使ったバッグデザインは、柔らかな革のイメージとベストマッチ。さらに身体に密着するメッセンジャーバッグのような、革と曲線の組み合わせだからこその高い機能性を生み出している。
「ORZO」のこれから
平岡氏は3年前、新たな展開として新ブランド「nil」をスタートした。革オンリーのORZOに対して、nilではメイン素材に薄めの革やポリエステル素材を取り入れ、スポーティー&ユニセックスなラインで展開している。
「くたっとした革を使ったバッグ作りをしてみたい」というところからスタートしたこの新ブランドでは、スポーティー系ではあまり見かけないレザー素材のバッグが豊富にそろっているので、興味のある人はチェックしてみてほしい。
ORZOの方でも、今後はグレー系のオシャレな色の革をオリジナルで作り、さらにバッグだけでなく同じ革を使った靴など、トータルコーディネートも提案したいとのこと。ORZO、nilともに今後の動きが楽しみだ。
「ORZO」
https://orzo-kobe.com/
姫路レザーと栃木レザーの牛革(ヌメ革)を使い、革の質感と経年変化の味わいを楽しめる一枚革のバッグや小物を製作する神戸発のバッグブランド。神戸トアウエストの工房が併設された旗艦店を中心に、関西圏の百貨店などでポップアップストアを展開。イタリア語で「大麦 古代種」を意味するブランド名のように、時が経っても愛され続ける普遍的な存在となるバッグ作りに注力している。
2021.05.10 Mon